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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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第百六十八話 ハンサムのやることは


「やられたなぁ!月ちゃん僕と同じくらい祐くんのファンになっちゃったよぉ」


「あ、いえ、勿体無いお言葉を有難うございます」


「もう上がるよね?」

「いえ、もう少しお付き合いお願いします」

また祐希は頭を下げた。


「え?何?何?」

「三枝さんご夫妻は、僕の出自をご存知ですよね?」

「んーまあ、元々ご近所だしね」


「それでも本当に薫子さんとのお付き合いには問題ないのでしょうか?」


一瞬、豊は言葉を呑むと

「とにかく上がって、暖かいところで話そうよ」

「あ、はい」


リビングの大きなテーブルを挟んで、豊が上座の三人掛けソファに祐希に誘うも、遠慮し豊に上座を譲り、祐希は手前の一人用のソファを選んだ。


祐希は隣に手提げの紙袋を置くと、浅く腰をソファに下ろすと両手を膝に置き、また話を続ける。


「先にお話をさせて頂くのも、どうかとは思いましたが、これだけは今の自分の気持ちを隠せないので、お伝えさせて下さい」


ピーちゃんを抱っこしたまま豊が聞く。

「その話長い?」

「え?」

「月ちゃんはさ、お料理の先生だから温かい料理は温かいうちに食べ始めないと(うるさ)いんだよねぇ」

拍子抜けした祐希が戸惑うと豊が笑いながら続けた。


「まあ、とにかく君達のお付き合いにとやかく言うつもりはないよ」

「本当ですか?!有難うございます」

「うん。それで?何かまだあるんでしょ?」

「はい」


祐希は本当の職種を知って以来、温厚なイメージだけだった豊への印象がかなり変わっていた。

恐れは感じないが、祐希の発する言葉を官僚ながらの思索の上、考察もされている様に思えたからだ。


「まだ先のお話にはなりますが、大学を卒業し、実務経験を積んだ後、必ず、僕は一級建築士になります。そして、その暁には薫子さんとの結婚をお許し下さい」

祐希はそう言って頭を下げた。


すると

「えー、そんな先?もう(うち)の子になっちゃえば良くない?」

真面目な顔で豊が言う。


祐希は一瞬、何を言われたのか分からず

「え?それは……?」

頭を上げて聞き返した。


「もうさ、家族になろうよ」


「え?」


「あ、ちょっと祐くん!」

「はい……」

「なんで泣いてんの?」


「え?」

祐希は思わず自分の頬を撫でる様に触る。

『俺、泣いてる?』


「……胸が熱くて」


その時丁度、薫子が食事の支度が整った事を告げにリビングにやって来た。


「あ!何で祐くんが泣いてんの!?」


豊の方を怒る様に見た薫子に祐希が言う。


「カコちゃん、お父さんのおかげなんだ」

「え?」

「すごく嬉しいんだよ。今」


薫子と豊は目を合わせた。

すると豊が薫子に言う。

「ハンサムは泣いてもカッコいいね」

「うん」


祐希は慌てて豊に頭を下げた。

「いえ、すみません!泣いたりして」

「いいんだよ。祐くん、ちょっとこっちにおいで」

「え?」


豊は抱っこしてたピーちゃんを薫子に託すと、祐希に向かって手を広げて待ち受けている。

それを見た薫子が

「こらっ!パパったらドサクサに紛れて祐くんの事抱きしめようしてる!」

「は?」

祐希が笑った。


「バレたか!残念」

「全く油断も隙もない。何考えてるんだか!それよか、祐くん、パパにお土産渡した?」


「あ、そうだった……あの、これハワイのお土産です。本当はもっと早くお渡したかったのですが、ブランデー※1がお好きと聞いていたので」


その為に用意したと思われる立派な手提げ袋から出したのは、深みのある赤茶ボルドー・バーガンディ色の箱。格調高く光輝く金色の半人半馬(ゴールドケンタウロス)のシンボルマークが大きく金色で印刷されていた。


「しかもレミーマルタンXO※2じゃないかっ!ハンサムのやることは、やっぱり違う!」


豊は大興奮だった。 




※1ブランデーは主に果実酒(主に白ワイン、他にもリンゴやさくらんぼなど)の蒸留酒。


ちなみにレミーマルタンXOはコニャック。

コニャックとはフランスのコニャック地方という限られた地域で、決められた種類のブドウ(主にユニ・ブランという品種)だけを使い、伝統的な銅製のポットで二回蒸留するなど、フランスの法律の非常に厳しい基準をすべてクリアしたものだけが名乗れる称号。


※2 高級コニャックの一銘柄

正面から見ると綺麗な円形で、中央から外側に向かって太陽の光が放射状に広がっているような、デコボコとした彫刻のある平べったい特徴的な丸型のボトルに入っている。


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