第百六十七話 Christmasはまだだけど
インターフォンが鳴る。
「あ、祐くんかも!ユウちゃん出て!」
月子がご馳走作りに追われてキッチンから叫ぶも、リビングのソファでピーちゃんとうたた寝している豊は気づかない。
「んっ!もう!カコ!行って来て」
「え?無理だよ!ケーキのクリーム絞ってんのに」
月子はやれやれと言う風に木戸の開錠をしながらインターフォンに向かって話す。
「祐くん?」
「あ、はい」
「ごめんね!玄関まで上がって来て」
「はい!」
月子が玄関を開けると祐希が大きなサーモンピンクの薔薇の花束と立派な紙袋を下げて直立不動で立っていた。
「いらっしゃい!寒かったでしょ!入って」
祐希は月子に誘われ、中に入る。
「上がって」
月子からスリッパを出しながら言われるも祐希はそのままお辞儀をすると
「こんばんは。あのお先にご両親様にご挨拶をさせて下さい」
「え?あ、じゃ、ちょっと待って。ユウちゃん!ユウちゃん!」
リビングに向かって豊に声を掛ける。
やっと目が覚めたのか豊が頭を掻きながら玄関にやって来た。
「おっ!祐くん、待ってたよ!」
本当に嬉しそうだ。
足元でピーちゃんも可愛い尻尾をフリフリしてる。
祐希は薫子の両親に一礼して
「この度はこれからお父様がお仕事が佳境を迎えられ、なかなかご家族水入らずのお夕飯が取れないかもしれないという時に、お誘いを頂きまして本当に有難うございます。僕がお邪魔して良いものかとは思いましたが、特別な日とお聞きしましたので、お言葉に甘えさせて頂く事にさせて頂きました」
月子は笑いながら、
「いやだわー。ユウちゃんがどうしても一緒にご飯食べたいって煩く言って」
「いや、だってさぁ、ご飯は皆んなで食べた方が美味しいでしょ?ねぇ祐くん?」
「はい!もちろんです!」
「返事がいい!さあ、じゃ上がって」
今度は豊が言うも祐希は
「これをお母様に」
薔薇の花束を差し出され月子が驚く。
「お誕生日おめでとうございます」
「あらやだ。カコが話したの?」
月子の後ろからバカラの大きな花瓶を持って出て来た薫子が
「特別な日に四十三本のソニアだよ」
と笑う。
今日十二月七日は月子の誕生日だ。
「え?年齢の本数!?もう恥ずかしい。それも話しちゃった訳ね」
「あの、でも重ねられたご年齢はダイヤモンドのカラットと同じだけの輝きと重みと言うそうです」
祐希が俯き加減ではあるものの真面目な顔で呟く様に言いながら花束を差し出す。
すると月子が受け取りながら
「うわっ!ハンサム発言!照れちゃう!」
隣で苦笑いしてる豊の肩をバンバン叩いた。
薫子がそこで口を挟む。
「祐くん、ソニアの花言葉はなんだっけ?」
今度は月子の顔をまっすぐに見ながら祐希がはっきりと言う。
「感謝、です!」
「あらまあ….…そう、有難う」
月子の目が潤む。
薫子がそこで
「はいはい!お母さん花束は私が預かって水切りして綺麗に活けるから、七面鳥仕上げて下さーい」
月子を回れ右させて廊下に消えて行った。
その後、月子が薫子に嬉しそうに呟いた。
「それで今年は玄関には花じゃなくて小さなツリーでいいかって言ったのね?」
「ご想像にお任せします♪」
薫子は月子が祐希から贈られるであろう薔薇にこの後、玄関を彩って貰おうと思っての事だった。




