第百六十六話 伝えたかった祐希の本当の気持ち
「兄さん!」
祐希が直希に声をかけると、少し前の方にいた直希と裕子が戻ってきた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
心配そうな顔をする直希に祐希は
「あの、手は本当にもういいんですか?」
「あぁ、ちょっと跡は残ってはいるがね。心配する様な事はないよ」
「良かった……あの時は助けて下さって有難うございました。それでも、正直、薫子さんを傷つけた貴方達をまだ許す気にはなれません」
直希も裕子も顔を見合わせて悲しそうな顔をするも、そのまま祐希は続けた。
「ただ、僕が今こうしていられるのは、お二人のお陰だと言うことも分かっています。こんな僕を育てて下さって有難うございました……」
一礼した祐希は頭を上げると
「では、お気をつけて。お戻りをお待ちしています。兄さん……お母さん」
と言い捨てて振り返ると歩き始めた。
裕子の瞳にみるみる間に涙が溢れる。
「祐くん!ごめんなさい!……ありがとう……」
直希がハンカチを差し出すと裕子は黙って受け取り後から後から流れ出る涙を拭いながら、二人はゆっくりと搭乗口に向かって行った。
祐希は振り返らず、そのまま薫子のところに戻ると何も言わずに彼女を抱きしめた。
ところは成田空港。
周囲の人々は美男子と美少女の二人の様子を見て、二度見をしたり「ドラマの撮影?」「何かあった?」などドギマギしている。
当の二人は周囲の様子は目に入らない様だ。
「さすが私の大好きな祐くん」
多分泣いてると思われる祐希の身体を薫子はギュッとする。
しばらく二人は別れを惜しむ恋人同士の様に抱きしめ合ったままだった。




