第百五十七話 公園のお砂場①
添い寝しながら祐希は、ずっと薫子の身体をさすっている。
薫子は心地がいいのか安堵の表情でされるがままでいた。
祐希は思いついた様に薫子に言った。
「そうだ。そう言えば、幼稚園の年中くらいの時の思い出ってある?」
「え?年中さん……四歳頃だよね?私が建物愛が芽生えた頃かな」
「どう言うきっかけで建物が作りたいって思ったの?」
いつも不思議に思っていた。
どうしてお家を建てたいと思ったのだろう?
上野に家族で行く前に薫子の中には何かがあったはずなのに、思い出しかけてはモヤがかかってしまう。
「思い出せないの」
「え?」
「何か大切なことだったはずなのに、思い出せないの。母からも、この前初めて"どうして思い出せないかな?"みたいに言われたんだけど」
「そうなんだ。大切なことなのに……?って、俺も木元達から何で覚えてないかな?とか、運命ってあるなら信じたいって言われたりしたんだよね」
「運命?それって何に関わること?」
「え?えーと……カコちゃんに関わることらしいんだけど……俺、覚えてなくて、あいつらに言われるまでもなく、本当のところカコちゃんとは初めて会ったって気はしなかった。でも、覚えてないんだ」
祐希が
「今日、お互いに思い出しっこしようか?」
「え?どうやって?」
「幼稚園に行ってた頃の事、何でもいいから思い出してみようよ」
薫子が頷いた。
祐希はちょうど三歳で稲垣家で裕子に面倒をみられる様になり、今の大学の附属幼稚園に年少クラスに途中入園をした。
女の子に間違われた祐希は全園児の注目の的。
当初は、男の子達がこぞってチヤホヤするも男の子だと分かって、次は女の子達が大騒ぎと、そんな小さい時のトラウマが今の祐希の根源かもしれない。
同じリス組に木元・香山・草壁もおり、ついでに聖奈もマリもいた。
園バスの行き帰りも一緒だった。
薫子は横浜から吉祥寺に転居したのは、四月の年中の最初からだったが、ほとんどの友達は年少からの持ち上がりだったので、なかなか友達が出来ないでいた。
「そう言えば母が毎日お迎えに来てくれて、他の子達はお友達のお家にお帰りに寄って遊んで行くのに、私だけ誰ともまだお約束出来なくて、真っ直ぐ帰ってたっけ」
「そうなの?幼稚園くらいの時からカコちゃん可愛かったと思うから、あちこちからお呼ばれで大変だったかと思ってた」
「横浜のお友達が忘れられなくて」
「そうか」
「でも、そう言えば……最初に誰か一人だけ仲良くなれた子がいたっけ」
薫子は、ぼんやり考える。
『髪の毛がクルクルの男の子。外人さん?金髪じゃないけど、かなりの薄茶色、瞳の色は……!?え?まさか?あり得ない……』
その時、急に頭の中に名前が浮かんだ。
「ゆうくん」
「え?何で俺の子どもの頃の呼び名知ってんの?」
「ゆうくんなの?」
「……え?」
「私、カラスのカーコだよ」
祐希もその時、急に思い出が押し出される様に次から次へと映像の様に思い浮かぶ。
「カーコ?」
「そう」
「カラスのカーコ」
「そうだよ、お砂場で遊んだカーコだよ」




