第百五十五話 二人の初めて
祐希は乾いたジーパンを持って部屋に戻る。
ドアを開けた瞬間、毛布を肩から掛けてまるでポンチョの様に腕を出し胸元を押さえた薫子が泣きながら廊下に立っている姿が目に入った。
「琥原くん!側にいるって約束したのに……」
「あ、ごめん。ランドリーにジーパン乾かしに行ってたんだ」
祐希は慌ててサンダルを脱いで、ジーパンを廊下に置くと駆け寄って薫子を抱きしめた。
「色々ありすぎて疲れてるだろうなと思って……起こさなかった」
「また……いなくなっちゃったのかと思った……」
「ごめん。もう嫌がられても側にいる。絶対離れない」
「……絶対、嫌がらないよ……」
薫子は泣き笑いしながら、次の瞬間、祐希の身体をあちこち見ながら
「琥原くん、やっぱり私を庇ってくれた時どこかケガしたんじゃない?痛いとこない?」
と聞く。
「え?俺はどこもケガしてないよ。それよりカコちゃんの頬の方が痛々しいよ」
薫子の左頬を撫でた。
「痛くないよ。琥原くんがキスしてくれたから治ったもん……」
「カコちゃん」
裕子にスケールで叩かれて赤くなっていり頬をより上気させて、恥ずかしそうに言う薫子が祐希は更に愛しく思う。
「え?でも……ちょっと来て」
薫子に手を引かれ部屋の奥に入る。
ワンルームの祐希の部屋は左側は途中まで白い壁だが途中からドアのないベッドルームとの仕切り兼明かり取りの為に白木の折りたたみ式のルーバーが縦に数メートル窓際の手前まで続いていた。
そしてベッドルームに祐希を連れて行くと
「あの、ほら、あそこ……」
薫子が大きめのベッドの真ん中あたりを指差した。
「え?あれ?」
「うん。私はケガしてないから、琥原くんがやっぱりケガしてたんじゃないかと思って」
「あのね。多分これ、また?って言われるかもなんだけど」
「え?何?」
「あの……初めての」
「初めての?」
「……しるし……」
「……!」
薫子は遅ればせながらも気づいて顔から火が出て、
"どうしよう!?"と言う顔をして俯く。
「あのさ、一回、玄関から外に一緒に出てくれないかな?」
恥ずかしそうに俯いたままの薫子に話しかける祐希。
「どうして?」
「この階は俺以外誰も使えないところだから、外に出ても誰にも会わないから」
「でも、私こんな格好だし……」
毛布しか掛けていない薫子の様子に祐希もドキドキはしてる。
「でも、今二人でしたいことがあるんだ」
「二人で?」
「うん」
「分かった」
二人で揃って玄関ドアから外に出る。
一旦外からドアを閉めて、また開ける祐希。
「この後どうするの?」
「こうする!」
祐希は薫子をお姫様抱っこして、部屋に入ると後ろ足でドアを蹴り閉めて、廊下を移動しながらこう話し始めた。
「欧米に伝わるCarry・over・the・thresholdって言う伝統的な儀式なんだ。」
「え?」
「本来は結婚式の後、新居に入居する時にするもんなんだけど、敷居には悪霊や魔物が住んでるって言い伝えがあって新婦を守る為とか、敷居につまづかない様にって例えで人生につまづかないとか言われてるけど、最近ではこれから二人で新しい人生をスタートする。一生妻を守っていくという新郎の決意表明……」
「それって」
「先に俺たち結ばれたけど……これはカコちゃんに対する俺の気持ち」
「琥原くん……嬉しい」
薫子はお姫様抱っこされたまま祐希の首にギュッとしがみつき直す。
「二人でもっと沢山思い出を積み重ねて行きたい」
「うん」
そして今日何度目なのか分からないほどの近さで、またお互いを見つめ合った。
今回の祐希、まあいつもの通りヤキモチ丸出しでしたね!!直希にお姫様抱っこ先にやられたから、やり返した感満載です(笑)
"あの跡"については薫子は祐希に何か話しちゃうんですかね?皆さんなら、どうしたらいいと思いますか?
話す?話さない?バレる?
さて、どれかなー!?




