第百五十四話 本当の真実?
第百五十三話が短いお話だったので、もう一話追加で投稿致します。
どうぞお楽しみください♪
「はぁ……」
祐希はランドリールームで、二人分のジーパンの乾燥待ちをしている。
おもむろに頬をつねる。
「いたっ!夢じゃない……」
さっきまで腕の中に薫子がいたと思うと、自然と安堵と嬉しさで笑みが込み上げてくる。
『それにしても可愛い寝顔……疲れてるのに無理させちゃったよな。ジーパン乾いたら家に送らないと』
廊下を通りかかったスーツ姿の女性がランドリールームを覗き込むと祐希に声をかねて来た。
「あれ、祐希」
「あ、木元さん。いつもお世話になってます。ハワイの件ではご主人にもご面倒をおかけして……」
「やだなぁ、オバちゃんでいいよ」
「いや、それはさすがに……」
「それにハワイの方はさ、開業始発メンバーに祐希がいてくれて本当助かったって旦那も感心してたよ。達也もお世話になって、こちらこそ有難うね」
ここは赤坂の高級ホテルの系列ホテルで、グループを全体を取り仕切る社長は、この女性の夫で稲垣光希の親友木元の父親。
そして彼女は、この都市型ホテル系を取り仕切る総支配人だ。
たまに抜き打ち視察で系列ホテルを巡回している。
「そう言えば裕子さん大丈夫なの?」
「あ、今日はおいで頂いていたんでしたよね?開始前に失礼があって……」
祐希が適当に答えると
「まさかね……裕子さんが更年期なんてね」
「え?」
「直希さんにいい人出来たって勘違いしちゃったんだって?」
「あぁ、そうみたいですね」
祐希は話を合わせる。
「私達は、そのまま出版記念のパーティー料理を振る舞って貰って手土産頂いて帰っただけだから、ご馳走様って感じだけど。ご重鎮方はちょっと怒ってたかもね。裕子さん、お相手の方にも内緒で勝手に婚約式を予定してたんですってね。その後、裕子さんが直希さんに勘違いさせたことに、むしろ激怒して出て行っちゃって直希さんも探しに行ったまま、結局戻らなかったから、尚更、裕子さんのご両親は体面がどうとか言ってイライラなさってたわ」
祐希は直希のこれからのことを危惧してしまう。
『そうだ。兄さんは今頃どうしているんだろう?』
「表向きはここまで」
「え?」
「大変だったね。結局また例のヒステリー起こしちゃったんでしょ?あの後、聖奈ちゃんから聞いたよ。あの時も大変だったよね?祐希が小学生の頃、勝手に弓道習った時もさ。怒鳴り込んで大騒ぎになった事、思い出しちゃった」
「あれは俺がサッカーをサボってた上に、月謝とかの事も知らなくて……」
「でもさ、祐希がやりたくて始めたって言ってんのに、相手の師範の方を悪者に仕立てそうになっちゃったりしてさ。一時期、あの辺ではちょっとした事件だったわよ」
「お騒がせしてすみませんでした」
「そうだった祐希に話があったわ……でも、ここからは誰にも話してないオバちゃんの独り言だから!!」
「え?」
「独り言に反応しない!」
祐希は口を閉じた。
「直希さんのお相手って勘違いされたのって、達也から聞いたんだけど祐希の彼女だったんだよね?十月の初めの頃、赤坂の直希さんの部屋で、私、実は彼女の面倒みたんだよ」
『あの赤坂の夜って話かよ……』と祐希は少しむかつき始めるが……。
「直希さんの悪口は言いたくないけど、彼女のこと本当はお持ち帰りするつもりだったんだと思う。食事の時にわざと一杯盛ったんだよ」
『やっぱり!そうだったんだ』
「多分彼女、免疫なくて少しで気を失っちゃうほど酔っ払っちゃって部屋でこれ」
吐く真似をした。
「その日、たまたま全体支店長会議があってね。私、赤坂にいたんだよね。そしたら直希さんの方から主人に連絡入って、口の固い、具合の悪い女性の介護のできるメイドを寄越して欲しいって連絡があって、私が行く事になったの。主人が面白そうだから、お前行って来いって言うからメガネかけて変装して」
『面白そうって、木元の親父さんっぽいけど』
笑いながら木元の母の話はまだ続く。
「酔った後の吐瀉物って臭いがあるから、しばらく部屋が使えないことも分かってて、部屋に行ったら直希さんベッドに腰掛けて眠ってる彼女の髪を撫でながら、"隣が空いてたら部屋替えして、こちらの部屋の清掃代と使用できるまでの部屋代、全部請求して下さい"って、こっちも見ないで言うの」
『髪を撫でながら……』どんどんムカムカする。
「隣の部屋がチャージできた時、直希さんは執筆中の資料とか自分あらかた運びながら、"彼女の着替えが終わったらぼくが運ぶので呼んで下さい"って言って出てった」
『運んだ……もう一発殴れば良かった』祐希の鼻息が荒くなったのに気づく木元の母は
「ここからが本題。その後、結局のところ直希さんに私だってバレちゃって……そしたら後々、もし今日の事を公言しないとならない機会が来た時には、彼女に指一本触れてないって証人になってもらえますか?って言われてね。え?って思ったけど、その今回の出版物の原稿の校正とか編集とかに追われてた時期だったみたいで本当に寝る間もなかったらしくて一時間置きくらいにコーヒーオーダー受けて、その度に私が持って行って、これで証明になりますよね?って。本当はお持ち帰りしようとしたくせに、真面目なの?って笑ったわ」
『そんなことを?なんで?わざわざ……』
「それってさ、彼女のこと本気になったけど……結局、祐希からは奪えないって分かってたから、祐希と彼女の事を考えての事なんじゃない?」
ここでオバちゃんはニコリ。
「まあ、どう思うかは祐希次第だと思うけどね。
あぁ、ジーパンもういいんじゃない?」
「あ!有難うございます」
「聖奈ちゃんも達也も言ってたけど、彼女ちゃん、すごくいい子なんだってね。まあ色々あったとは思うけど、いい子みつけたじゃん。これからも達也達と彼女ちゃんも一緒に仲良くしてやって。本当に頼んだよ!話せて良かったわ。じゃまたね!」
「はい、失礼します」
『兄さん……何なんだよ……』
ジーパンを持って、部屋に戻った。




