第百五十一話 雨に降られて……==加筆・修正あり
都内に入った頃、雲行きが怪しくなって来た。
新宿に差し掛かったところで、どしゃ降りになってしまい、祐希は一度バイクを路肩に止めると後ろを向き薫子に言う。
「これ以上バイクの運転は危ないから、俺んち、もうすぐなんで一旦雨宿りに寄ってもいいかな?」
薫子は目に入る雨粒に目を細めながらもコクコクと頷いた。
しばらくすると通りの先に、主要都市に展開している自らを都市型ホテルと呼ぶ、高級ホテルとビジネスホテルの中間的な存在であるプレミアムビジネスホテルが見えて来た。
祐希のバイクは、十五階建てのホテルの地下駐車場に直接入ると、決まった駐車場所があるらしく場内をゆっくりと運転する。
そして決められていると思われる場所の手前で一旦停止をし、祐希は薫子だけ降ろすと、小型のエレベーター前に白枠で仕切られたバイク専用スペースに停めてエンジンを切った。
「新宿に住んでるって言ってたけど、まさかホテルに住んでるの?」
祐希が薫子のヘルメットを外す時に聞いて来た。
「ん、今は早く濡れた服をどうにかしないと。説明は後でいいかな?そのジャケットも脱いだ方がいいよ」
「あ、うん。分かった」
二人は同時にジャケットを脱ぐと少し間を空けて、水を切る様に振り合った。
小型のエレベーターの前には上下ボタンではなく鍵穴があった。
その鍵穴にバイクキーやら数個の鍵のついたキーホルダーから祐希は一つ選び出すと差し込む。
エレベーターのドアが開いた。
最上階の15階まで上下ボタンはあるも表示がない。
再びドアが開いた時、そこにまたドアがある。
そこでまた祐希は鍵を差し込んでドアを開けた。
「入って」
「うん……」
祐希に優しく背中を押されて中に入ると、先に広がる廊下とフラットにはなっているが玄関前だけ一メートル四方くらいタイル張りになっている。
入ってすぐの左横の壁には片側には鎌倉の家と同じ様に、ハンガーが数個かけられる様にフックがあった。
逆側には四つ折れ式の扉があり、祐希がその扉を開くと、手前に傘立て、奥には縦並びにシューズボックス、その並びにはコート類をかける高さの違うパイプが二本前後についていた。
祐希はそこからハンガーを二本取り出した。
「ジャケットの中は濡れてない?あぁ、ジーパンはびしょびしょだよね。靴はどう?」
祐希は二人のジャケットをこの前と同じ様にハンガーにかけると逆側のフックに並べて干す様に掛け、その後、薫子に一気にまくしたてる。
「俺は自分の着替えを取らせてもらったら、ランドリールームに行くから、君はここを自由に使って。右側の手前バスルームと洗面所で奥がトイレ、洗面所の棚にバスタオルとかも置いてあるんで」
その後、そそくさとブーツを脱いで靴下を脱ぐと奥の部屋に入って行ってしまった。
置き去りにされた薫子はその場に立ちすくむ。
戻って来た祐希は
「とりあえずタオル使って」
真新しいタオルを差し出す。
「じゃ、ここの鍵をフックに掛けて行くから俺が出たら中から鍵閉めて、あっ、あの右の先の階段を上がったところがキッチンだから適当に飲み物とかも飲んでね。用事があったらフロントに連絡くれたら戻ってくるから」
「あ、それと乾かさないといけない服でホテルの人が触ってもいいものは、ランドリー袋に入れて、外ドアに掛けておいて。俺が取りに来て特急仕上げ頼んどくから」
鍵を服を掛けるフックに掛けると部屋から出ようとする祐希に薫子が言った。
「行かないで」
背中でその声を聞いた祐希は振り返らないまま
「ダメだよ、また熱でも出したら大変だから」
ドアに手を掛けた。
「そばにいて、お願い。話を聞いて欲しいの」




