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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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第百四十九話 直希の想いと祐希の気持ち==加筆・修正あり


取り乱した薫子を見つめている兄弟二人。


祐希は薫子を抱きしめて直希を睨みつけてた。


直希はその二人の寄り添う姿を見せられて悲しげな表情だったが、独り言の様に上を向いて言った。


「今まで騙していて申し訳なかった。薫子さん、赤坂のあの日、僕達には何もなかったんだよ。そう装っただけ」


「え?」


薫子が直希の声に弱々しく反応した瞬間、祐希が直希の横っ面を殴り飛ばした。


「Trigger-happyは、どうやら健在の様だな」

左頬を撫でながら苦笑いする直希に

「右手で殴られただけでも有り難く思え!」

肩で息をしながら祐希が言い捨てた。


「祐希の優しさにもつけ込んで……そんな戯言とこれで薫子さんを引き止め様としただけだ。ほら」


直希は祐希に向かってポケットから出した薫子のネックレスを投げたのを、祐希は片手でキャッチした。


「そろそろ限界だな……思いの(ほか)ナイフを強く握りしめ過ぎたらしい。これは自分で何とかするのは無理そうだ……救急車を呼ぶほどの事ではないが自分では運転出来そうもないし、母も無理だからタクシーを呼ぶよ」


それを聞いた祐希も薫子も、お互いに視線を交わし合うと先程の騙し討ちのことよりも直希の左手の傷が心配そうな表情になる。


それもそのはず直希の利き手はが左手だからだ。

設計士は繊細な線を描き出す事の最大の道具でもある。


「兄さん、病院に行くなら俺が運転する」

祐希が言うも直希は

「いや、薫子さんとお前は東京に戻りなさい」

「でも!」


「母さんがこんな状態の時に、お前達がここに居たら、また何を騒がれるか分からない。父親のせいで母さんは家族に戻れると勘違いさせられて、こんな事を今度はしでかしたんだ。お互い、またある事ない事を取り沙汰されるのは、もうこりごりのはずだろう?分かるな?」


直希に(さと)されて祐希は不服そうだったが頷いた。


「さあ、早く行きなさい。僕も病院に急ぎたい」

直希にそう急かされた時、薫子が言う。


「せめて止血させて下さい!琥原くん、救急箱は?」

「ここに住んでる訳じゃないから置いてない……」

「そう……」


「薫子さん?」

薫子はある事を思いつくと、驚いて呼びかけた直希を無視して裕子に近づく。

そしてまだ泣き続けていた彼女に話しかけた。


「裕子さん、直希さんのお怪我を何とかしたいので、スカーフをお借り出来ますか?」


裕子は黒いラメ入りのシックな身体のラインに沿ったロングドレスを着ていたが、その首元には煌びやで大ぶりな金のネックレスと黒地に真っ赤な薔薇のモチーフの(シルク)の長いスカーフをゆったりと一巻きして左右に垂らしていた。


薫子に話しかけられた裕子は

「何とかして下さるの?直希さんを助けて下さるの?」

「お役には立つと思います」

「使って!こんなもので役に立つなら使って!」

と薫子にすがった。


薫子は長さ二メートルほどのスカーフを受け取ると、まずはその一方だけの端から三十センチのところで返し折りをし、その輪から十センチほどのところに結び目を繋がる様に三個ほど作った。


「直希さん、そのハンカチは清潔なものですか?」

「クリーニングから戻ったものを今朝ビニールから出してポケットに入れたものではあるけど……」

「では、そのまま使わせて頂きます」


そう言うと薫子は直希に手のひらを開かせて、当ててあったポケットチーフの上から裕子のスカーフの結び目を傷口に当たる様に乗せた。


そして長く余っている方のスカーフを輪にかけると強く引くとぐるぐると巻き、短く残してあったスカーフの端と傷口の方側で固めに結びつけた。


「ちょっと強めに結んであります。これで傷口自体も少しの間は開かないと思います」

「有難う。痛みも少し引いた気がする」


その時の直希は薫子を見ずに呟いた。

「本当に赤坂の夜は君のことが愛おしくなって、ただそれだけだった。あの(あと)も少し気持ちが入りかけて……怖い思いをさせて、すまなかった」


薫子は一瞬、"あの跡"に反応して、胸を押さえるも、そんな直希に向かって、こう言いながらお辞儀をした。


「私の方こそ、はっきりせずに申し訳ございませんでした」


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