第百四十五話 豊の本当の職業は?
三枝夫妻の帰り道の会話。
「ねぇ、ユウちゃん」
「何?」
「あのさ、もしかしたら今回のことってユウちゃんの仕事の事も関係してないかしら?」
「え?何それ?」
「あの財閥出の奥様が薫子に執着した理由」
「僕の仕事が?何で?」
「薫子にはさ、女の子が建築に進む道が厳しいと思ったから、お金がないなんて嘘までついて、わざと厳しく育てたけど……あんなに世間知らずに育つとも思わなかったから」
「まあ、そうだね。箱入りにし過ぎたかもね」
「そろそろ本当のことを話さないと、もしかしたら逆に自分の立場が理解出来ないのもおかしい話になるかもしれないし……」
「うーん」
「私なんてさ、料理教室の他に、これでもちょいちょいテレビに出させて貰ってるし……ユウちゃんのことは銀行員だとは思ってるはずだけど、親の仕事自体がどれだけの収入になるのか?考えたりもしないで"お金がない"って言ったこと疑ってないし」
「確かになぁ。何にせよ、人の言葉を鵜呑みにしちゃう子だからな」
「だからさ、そろそろ本当のこと話そうよ。ユウちゃんは、大蔵省に勤めていて銀行局の総務課長だっだって」
「それ、大きな意味で銀行員で良くない?」
「もうユウちゃんが、そんなだからカコもオトボケなんじゃない!次期、大臣官房審議官候補って言われてるくせに。だからこそあの奥様に息子の嫁にって薫子は狙われた気がする」
「それ僕の肩書きのせい?」
「本当、普段の下駄履きのオッサンのユウちゃんからは想像出来ないほどのユウちゃんの肩書きのせい」
「まあ普通に考えたら……あり得るかぁ」
「まだ一官僚だから、まあそこそこまだ普通の人っぽいけど、もしも大臣官房審議官になっちゃったらテレビにも顔出しあるかもだし、送り迎えが来ちゃうかもしれないし……」
「月ちゃん、そんなに僕のこと出世しちゃうと思ってたんだ!へぇー何だか照れちゃうなぁ」
「ユウちゃん……真面目な話なんだからね。あとさ、琥原くんとカコの幼稚園の時のことなんだけど」
「ん?何?」
「カコだけじゃなくて、琥原くんも覚えてないみたいなんだよね」
「え?そうなの?」
「いくら何でもさ、四歳の時のこと二人とも覚えてないってあるかな?まあカコは別としてもさ」
「不思議な事もあるもんだね」
「幼稚園の頃、数ヶ月とは言っても、あんなに仲良しだったのに……」
月子はため息をついた。




