第百四十四話 誘拐?
祐希が月子に言葉の意味を反芻しながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた時
「あっ!!」
大声を上げた。
月子も驚いた様に祐希の見開かれた視線の先を見る。
「あらやだ!カコが!」
そこに豊がやって来て
「もう月ちゃん探したよぉ。あっ、琥原くん見つけたんだね」
「ちょっとカコが攫われた!」
「えっー?誰に!」
直希が息を切らしながら走り込んで来て叫んだ。
「祐希!母さんが薫子さんを車で……」
「お宅のお母様が薫子を攫ったんですか?」
豊が憮然とした態度で切り返した。
「すみません、緊急事態なので先に弟と話させて頂きます。母さんが急にまたヒステリックを起こして薫子さんを車に乗せて行ってしまって……多分、あそこだと思う。わかるな?」
直希に問われて頷く祐希。
「お客様もお揃いだから、僕はここの収拾をしないとならない。お前がバイクで後を追って薫子さんを連れ戻してくれないか?」
「うちの子は誘拐されたんじゃないのかしら?」
「おいおい月ちゃん物騒なこと言うなよ」
「いいえ、こちらのお宅の方は何だか変わってらっしゃると思うの。薫子は私達の娘なのに私達にご相談もないまま、今日直希さんとの婚約発表するからおいで下さいましって、たった今、薫子を連れ去ったお母様からほんの一時間前にお電話でお知らせ頂いたくらいですもの」
「母がそんな事を!?」
直希が驚く。
「聞いてなかったんですか?お客様の中にはご存じの方もいましたけど……」
祐希も驚きを隠せない顔で言う。
直希は考え込んでいる様な表情をしながら
「とにかく早く追いかけてくれ!本当なら僕が…」
と、言いかけた、その時月子が上から目線で言い放った。
「いいえ!お姫様を守るのは騎士の役目!王子様じゃないのよ!」
そして祐希に焚き付ける。
「さあ、早く琥原くん!薫子を奪還して来てちょうだい!!頼んだわよ!」
「あ、はい!!」
その時すかさず豊が付け加える。
「家に遊びに来る約束も忘れないでよ!」
「はい!」
祐希はガレージに抜ける階段を駆け降りて行った。




