第百四十三話 幸せの形は?==加筆・修正あり
「ちょっと!琥原くん!やっと見つけた!薫子と話ししてくれたかしら?」
「ご無沙汰してます」
「挨拶はいいから、話をしたかどうか聞いてんの」
「え、と、先程、少しだけ」
「それで?」
「それで?」
「どうなったの?仲直りした?」
「薫子さんには幸せになって貰いたいんです」
「はあ?だから?」
「兄の方が薫子さんを幸せに出来ますから」
「そう言ったの?薫子に?」
「まあ……その、はい」
「変わらないね」
「はい?」
「幼稚園児の時と一緒じゃない」
「何のことですか?」
月子は、もしや祐希も覚えてない?と思いながらも
「それはさておき、薫子の幸せはあなたが決められるのかしら?」
「え?」
「誰が決めるのよ?」
「誰が?それは薫子さんが……」
「薫子はあなたの事を好きって言いに来たんじゃなかったの?」
「あ……はい」
「じゃあ、あなたは?」
「俺は……薫子さんの……」
「好きな人と一緒にいられる事が幸せなんじゃないの?美味しいもん食べたり、笑ったり、泣いたり、怒ったり、そんな毎日が幸せってもんじゃないの?薫子は琥原くんと一緒にいたいんだよ!」
「……」
「こんなこと親がいう事じゃないけどね。でも薫子、今、心も身体もガタガタで心配なのよ」
「そうなんですか!?」
「あの子、ずっと薬を飲んでも貧血治らないし、精神的に参ってて食も細くなって、親がついててお恥ずかしながら、ついこの間まで栄養失調だったのよ!」
「えっ!?薫子さんがですか?」
授業が終わる度、祐希は先に席は外すものの、必ず薫子がどこに移動するのかは確かめてはいた。
また文学部の女子から絡まれたりさせない為だ。
ところが、ここ最近の昼休みに限っては薫子の方が、いつの間にか雲隠れしたかのように姿をくらまし、街中で"疾走のシンデレラ"と話しかけて来た男子学生達に絡まれていた時には、本当に偶然見かけた事で助け出すことが出来たのだ。
祐希は薫子が食事を取れない精神状態とは考えてもいなかった。
そして月子も少し申し訳なさそうに続ける。
「もう大人だからと思って好きにさせてた私達親の責任もあると思う。だけど一番の原因は琥原くんだからね。目も合わせてくれないって」
祐希は俯き加減に呟く。
「俺は……間違ってるんですか?」
「あなたにはきちんと薫子の気持ちと向き合って欲しかったわ」
祐希は厳しい批判と言うよりは親心を聞かされた様な気がした。




