第百四十二話 思いもよらない展開
「私はその……」
「あなた、今日は何の日だが分かってるの?直希さんの大事なご本の出版記念パーティーなのよ。そこで皆様に二人の婚約を発表するのに何でドレスを着てないの!?」
「お、お言葉ですが、そんなお話し私は聞いておりません」
「当たり前じゃない。これは私からのプレゼントですもの。あなた方、二人に任せておいたら、いつまで経っても先に進みそうにないから今日この時にと準備を進めておいたのよ。なのに!」
「そんな勝手なお話はないと思います。直希先生もご存知ではないじゃないんですか?」
「直希さんはね。口では困りますよと言ってたけれど、本当は嬉しそうだったわ」
「そんな馬鹿な話……私は琥原くんが好きなんです!そんなお話無理です!」
「あなた自分で何を仰ってるか分かってらっしゃるの?直希さんとなら、お仕事に追われたり暮らしに困ったりしないで一生毎日楽しく暮らせるのよ?何が無理なお話なの?」
「生活に困ったとしても私が一緒にいたいのは琥原くんなんです」
その時、いきなり薫子は思いっきり裕子に頬を叩かれて、気が遠くなりそうになった。
「ちょっと来なさい!」
ふらつく薫子が引きずられる様に連れて行かれたのは象牙色のメルセデス・ベンツ 280TE。
裕子はその後部座席のドアを開けると嫌がる薫子をもう一度平手打ちをしたかと思ったら押し込んだ。
そんな裕子と薫子のやり取りの数分前。
パーティー会場を避けながら二階の廊下を通り抜け自室に戻ろうとする祐希に声を掛けた女性がいた。
振り向くと、そこにいたのは上品なフォーマルウェアに身を包んだ月子だった。




