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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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第十四話 ツツミさんとオーナー


「いつから家族割引できたん?」


「わっ!ビックリしたーおどかさんといてよ!社長、今日来る日じゃないでしょ?」

「今日の夜な、大学時代の同窓会が都内であんねん、で、友達(ダチ)と先に会うんで少し早めに来たんや」


二人は経営者と雇われ店長と言った関係だろうか、元々は関西人らしく、お互い関西弁で話が続く。


「接客中に邪魔したら悪うと思て隣の店の裏で小さくなってパイプ椅子に座っとったら割引の話が出たからよ」

「そっか、隣も社長の店ですもんね…つか、いつもはちゃんと定価商売しとりますからね!」

「じゃ、何でそんな話になったん?」

「もう面倒くさい人やな」

「お前がいくら売れっ子製作者兼店長でも、経営者としては稼いで貰わんと、ここの賃料幾らだか知っとるん?」


ツツミは渋々謝る。

「すんませんでした!でもあの二人今まで来たカップルの中でもダントツ一位のええ子達で、彼氏はハンサムなのに真面目だし、彼女さんは可愛くて素直で天使(エンジェル)みたいな子やったんですよ」

「そいで割引しとうなったん?」

「大阪で働いてた時は中学生(ちゅうぼう)でも値引きして!とかいう子もおったし、こっちに来たらイベント中だから値引きしますとかいうと必ず普通の子らは"やったー!"とか"ラッキー"とか言うのが当たり前なのに、社長も聞いとったなら分かるでしょ、欲がないんですわ」

「ツツミさんにご迷惑かかったらってやつ?でもイベント中でもないし、勝手にツツミが言い出したことだからやろ」

「それでもやっぱり答え方が天使(エンジェル)で、しかもアイビーを選んでくれて」


(つた)柄か」

「ハートとかスペードとか星とかに比べると地味らしくて、なかなかハケなかった柄で、でも一番手間暇かかっとるんで、その分思い入れも強くて……あのお二人さんが最初で最後のお客様にします」

「一組しか作らんかったんか?」

(つた)は絡まるでしょ、その感じと葉の雰囲気出すのに試行錯誤したんです」

「そんな大変なら、何で(つた)選んだん?」

「花言葉が永遠(とわ)の愛だからですよ」

「へー洒落(しゃれ)てんな」

「でしょ、でもその細工の良さを見ても選んでくれるお客さんはいらはりませんでした」


「ふうん」

「ふうんって、だいたい何ですか?最近東京来すぎ違いますか?てか原宿店は放置って聞いてますけど09(まるきゅう)ばっか来ないで下さいよ」

「分からんか?」

「分かりませんよ、社長はホントにそんな派手なスーツに黒ワイシャツに臙脂色(えんじいろ)のネクタイなんてして、建物ん中でサングラスなんてしてはるから、ヤクザが※見ヶ〆料(みかじめりょう)でも回収に来たと思われて客足遠のいてしまいますやん」


先程から店を覗いた高校生くらいの子達はコソコソと逃げて行くのを何度となくツツミは目にしていた。『明らかに社長のせいやん』


社長のナカイは普段は本拠地の大阪にいる。

整った顔立ちで背が高くがたいもいいが、その服装の趣味が、派手でどうしてもヤクザ(そっち)系に見えてしまう雰囲気の男だった。


「もう営業妨害ですよ〜早うお友達に会いに行って下さい」

とツツミ。

「俺はさ、お前さんに会いに来たくて来てんで」

「はあ!?冗談は顔だけにして下さい」

「本気やで、分からんか?月に三回以上は来とんのに……はあ情けな」

「何に本気か知りませんけど、私は今仕事に夢中ですんで、またにして下さい!あ、またお客さん帰ってもうた!早よ、もう行って下さいよ!」

ナカイの背中をどついた。


「分かったって、でもまた来週来るからな!」

「今度来る時は手ぶらで来んで手土産くらい持って来て下さいね!じゃ!お疲れしたー」

「おお、分かった!なんか持ってくれば来ていいんか!……よしよし……あ、そうだ」

「まだ何か?」

「そういやさっきの学生カップルな、男子の方チラ見たやけど、これから会う友達(ダチ)の弟にそっくりやってん」

「え?」

「名前メモに書いたったよな?」

「知ってどうするんですか?」

「あいつ弟を溺愛しとったから彼女出来たらしいでって伝えたろかぁと思ってよ」

「余計なお世話じゃないんですか?」

「いやいや、ゴミ箱にまだあるやろ」

「やめて下さいよ」

ツツミの静止を振り解いてゴミ箱からメモを見つけ出す。


「ビンゴ!やっぱりな祐希(Yu-ki)やった。Kaorukoか、どんな"女の子"か知らんけど教えたったろ」

楽し気に笑うナカイ。


「あの二人に何かあったら社長とはもう口もききませんからね!弟を溺愛してる人にそんな話したら絶対何かしら起きちゃうじゃないですか!!」

いつになく真面目に怒り出したツツミに気押され

「分かった分かった、()わん()わん」

とナカイは約束した。



"09"を後にした祐希と薫子の二人。

渋谷の雑踏は先程より激しくなっていた。


祐希はそこで薫子に

「あの、はぐれたら困るから手を繋いでもいい?」

と聞くと、耳まで真っ赤になった薫子が

「あの!ハードル高過ぎま…」

と言いかけた時には既に祐希は右手で薫子の左手を取ると駅の方に向かって歩き出していた。


歩きながら祐希が薫子に話しかける。

「今日の帰りお(うち)まで……帰宅経路は分からない、けど近いところまで送っていい?」


『あー!忘れてた…どうしよう……そんな風に言われるなんて考えてもみなかったから』と慌てる薫子。


「ダメかな?」

寂しそうな顔の祐希を見て『言い出しにくい』と思う薫子。ずっと、お互い汗ばむ手を握りしめながら黙って歩く。


"忠犬ハチ公"のところまで来たところで祐希が立ち止まると


「俺達お昼もまだだし良かったら、どこかでご飯でもどうかな?渋谷が落ちつかないなら別の場所でもいいし……どうしてもまだ一緒にいたいし……まあこれが本音で、だから帰りはまた少し遅くなるから送らせて欲しいんだ、もう二時近いし、あまり遅くなるとご家族も心配すると思うから先に電車の時間とか考えておきたいんだけど渋谷乗り換えなんだよね?ここから何線に乗るの?東横線?」


薫子に聞くも首を振る。

「山手線?」

これもまた首を振る薫子。

「銀座線?」

しょげた顔でまた首を振る薫子に、

「え?まさか井の頭線なの?」

「……はい」

「あ!改札出る時、まさか清算した?」

「……はい」

「途中駅だったのか!ごめん、通り過ぎてまで付き合わせちゃったんだね……それで最寄駅はどこなの?」

祐希に謝られるも

「その……」

まだ言いにくい様子の薫子。

「うん、送って行くから俺は定期だし遠慮なく言って」

優しく言われて

「ごめんなさい……吉祥寺です」


その答えに祐希は慌てる。

「え?一駅とか乗る感じだった??」

「いえ、終点の吉祥寺駅です」



※ 暴力団などの反社会的勢力が、縄張り内の飲食店や商店などに対し「用心棒代」や「場所代」という名目で要求する金銭のこと


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