第十三話 家族割引?!
数分後、二人は"109"のあの店に戻っていた。
「わあーお帰りなさい!彼氏さん彼女さん!やっぱり戻って来ると思ってましたよ!」
先ほどの店員が声を掛けると、頭を掻きながら祐希が言う。
「まさか、こんな日が来るとは思わず……只今戻りました」
「ワタシは戻って来るって思ってましたけどぉ、彼氏さんは告白前に先に品物買い来たから勝率100%なのかと思えば、ハンサムななりして、かなりの小心者ですもんね?この後先問題どう思います?彼女さん!」
いきなり声をかけられた薫子は慌てて、ちょっと考えて
「あの気遣いが出来て優しい方なんです」
と思わず答えた。
すると店員は笑いながら
「言っちゃおうかなー」
「え?何を!?」
祐希が聞くや否や
「さっきご来店の際には彼氏さん玉砕したら返品に速攻来るんで宜しくお願いしますって言って会計したんですよぉ」
祐希の顔はみるみるうちに真っ赤になったが、まだその後も店員が続ける
「でも、もし彼女さんも同じ気持ちだったら、自分も"彼女がいますペンダント"はしたいかなと思うんだけどって、でも男性物のトップとかチェーンとかになると、うちの商品はシルバー使った手作り品なんで、ちょっとお高くなっちゃうんすよね」
「まさか、それでチェーンだけ先に?」
薫子は祐希に尋ねると、
「ほら、まあお友達って言われたら返品するんだしって思ってたから」
と言い訳する。
そこにすかさず店員が突っ込むと
「彼女さんに負担かけたくないって言ってたじゃないですかぁ、この際だから内緒事はやめましょ!と言う訳で、彼氏さんは彼女さんが仰る通りの気遣いが出来る方ですよ!」
とにんまり。
「琥原さん……有難うございます。」
どう言えばいいか分からず薫子はお礼を言うと、祐希は
「あとは店員さんと話して、俺あっちにいるから」店内から出て行ってしまい先程薫子が立ってた辺りで、恥ずかしそうにそっぽを向いてる。
「相当の恥ずかしがり屋さんか自尊心が高いか……どっちかですね」
「どちらにしてもとっても優しいです」
薫子がはにかみながら返すと
「あら、ご馳走様!いずれにしても凄くお似合いのカップルさんですよ!美男美女で羨ましいです」
「え!あちらの方は確かに美男子で私なんかには、もったいないほどですけど、私はそんな……」
「なんて謙虚な……可愛すぎですよ彼女さん!自分の良さを分かってない?だってスッピンでしょ?」
「スッピン?」
何ですか?それ?と言う顔の薫子に
「素顔ってことです」
と店員。
「あ、そうです。」
薫子が頬を染めながら言うと
「やはり!原石でこのお肌の綺麗さに加えての可愛らしさじゃ、知り合ってまだ8日って聞いたんですけど、彼氏さんが焦る訳ですよね!しかも気持ちも良い子と来たもんだ」
と言われ、真面目にも薫子は
「正確には7日目です……」
と言うと店員がものすごく楽しそうに大笑いした。
「男性の方がつけるのはチャームだけが流行ってまして、こちらが彼女さんとのペアになる女王冠になりまーす」
商品をベロア布のトレイに載せて差し出した。
「これも浮き彫りがアイビーなんですね…素敵。」
「無料で頭文字とか裏に入れられるんすけど、どうします?」
「え?そんなことまでして頂けるんですか?」
「名前全部はさすがに無理ですけど、入れば何文字でも頑張りますよ」
店員に言われた薫子は考えて
「例えば王冠にはローマ字で彼の名前と私の頭文字の間に"to"を入れて、女王冠の方には逆に、私の名前とあの方の頭文字の間に"to"をお願いしたり出来ますか?」
「お安いご用!」
「一応、あの方にも確認はしてきますが、その前にお会計させて下さい。」
薫子が言うと店員さんが考えるような顔をして
「なんか、可愛いお二人だし本日二度目のご来店なんで三割引きしちゃいます……ただしこれは家族割引価格なんでワタシの妹ということで!」
と笑いながら言う。
「そんな困ります!"ツツミ"さんにご迷惑をお掛けしたら大変ですから是非定価でお願いします!」
「あれ、ワタシ名乗りました?」
「先に頂いた商品の保証書にお名前が……それと入館証ですかね」
店員さんの首から下がってるカードケースをチラッと薫子が見ると
「彼氏さんに負けないほど心配性で尚且つ真面目なお嬢さんですね」
と店員のツツミさんは急に態度を改めて
「では正規のお値段で頂戴致します。本当に素敵なお二人を対応出来て私も嬉しく存じます、実は私この店の店長で制作にも携わっておりますが、今時の商品を売るのにちょっとギャルキャラ作りしてました。」
「え?そうだったんですか……」
「お二人を見てたら、ちょっと微笑ましくて私も制作の方の初心に戻りたい気持ちに今なってます、思い出させて頂き有難うございます。」
「いえ、あのせっかくのお申し出をお断りしたのに、そんなご挨拶を頂き返って恐縮です。」
どうやら、薫子と祐希に関わると多少の影響を受ける人がいるらしい。
そして会計後、薫子は祐希に駆け寄りチャームに頭文字を入れてもらっていいかどうか聞きに行く。
嫌がる訳がないが、それぞれの名前を胸に付けると言うのは内緒だ。
店内に戻るとツツミさんにメモ紙にそれぞれに彫ってもらうローマ字を書いて渡した。
「お時間ちょっと頂戴しますね」
とツツミさんに言われ、機械彫りではあったが見ていたいのを我慢して邪魔をしない様にと薫子は祐希のところに駆け戻ると
「楽しみですね」
「そうだね」
とぎこちない雰囲気ながらも、お互い何だかフワフワした気分でいた。
しばらくしてツツミさんに呼ばれ店内に戻る。
そしてそれぞれお互いの品物の確認をお願いされ手渡されると、先に祐希が
「わ!何これ!マジかぁ、すげえ感動した!俺の胸には三枝さんがいて」
と言いながら、薫子のチャームを覗き込むと
「三枝さんの首には俺がいる!頭文字だけじゃないなんて、さすが俺の三枝さん」
と嬉しそうに笑う顔を見て薫子は
「私も嬉しいです。」
と微笑んだのを見てツツミさんが
「もう惚気かーい」
とつっこんで笑った。
帰りがけにツツミさんは祐希に耳打ちする様に
「蔦の花言葉は永遠の愛ですよ」
というとニコリと笑う。
聞かされた方の祐希は今日何度目か分からないほどの真っ赤な顔でぺこりと挨拶をした。
その後ツツミは館内放送の音楽に負けないほどのとびきり大きな声で
「ご来店有難うございましたー!」
二人の背中を声で押した。
「はあー!ホントいい子達やったわー」
独り言を呟いたツツミの背後から歳の頃は三十代半ばか?スーツ姿の会社員というよりはホスト?の様ななりの背の高い男性が声をかけてきた。




