第百三十七話 そんなことまで言う?
薫子は初めて豊に怒鳴られた。
「どう言う事なんだ!?」
「そのままの話だよ」
「プロポーズもかっ!?」
「え?ちょっと待って、何それ?」
「プロポーズしたって言って帰ったぞ!」
そこに月子が口を挟んだ。
「ユウちゃん、落ち着いてよ。薫子がオッケーした訳じゃなくて、あちら様がそうは話したけど回答待ちですって言ってたじゃない。カコ、そうだよね?」
「ワタシだって個人的に会ってるのはおかしい事だと思ってるよ。でも建築についての講義を聞いてるみたいにしか思ってなかったのに、今日いきなりそんな話されて、プロポーズなんて寝耳に水だし!迷惑だし!今は覚えることが沢山あり過ぎて、そんな事考えてるヒマなんてないのに……びっくりしてたところに、あちらのお母様にお会いしちゃったから怖くなって逃げたんだよ」
それを聞いて豊が少し表情を和らげると
「本当か?」
「本当だよ」
豊は薫子に甘いが、その分信用もしている。
「そうか分かった。で、あの人が結局見られなかったからってお前にパンダだとさ」
『パパは何だかんだ言って私に甘い』と薫子も思いながらパンダのぬいぐるみは持ち上げた。
『重い』
直希の愛の重さの様な気がして寒気がした。
更に『焼き鳥にクリーム餡蜜にパンダ焼き?何だろう、この違和感。梅園は両親にって言うのは分かるけど……やっぱり桜さんの言ってたことは当たってるかも』と思った薫子だった。
遅めの夕餉の食卓を家族で囲みながら
「そう言えばさ、ピーちゃんがあの人にずっと唸り続けてさ。ケージに入れたんだけど、それでも吠え続けちゃって」
すっかりいつものオトボケに戻った豊が驚いた様に薫子に話す。
「そうなの?ピーちゃんが?」
それを聞いて更に怖さが増した薫子だった。




