第百三十五話 そんなことまでする?①
桜に会って、ようやく本当に目が覚めた薫子。
『自分を許せないところばかりだけど……私は琥原くんが好き。この気持ちは変わらない。ペンダントを取り返そうなんてしなくてもいい。もう直希先生とは会わない。琥原くんとは話しさえ出来れば……でも、あんなに避けられてるのに、どうしたら……』
どんな手立てがあるのか、さっぱりわからないまま、自宅に着くと自分で鍵を開けて家に入った。
「ただいま」
「ちょっとカコ!!」
月子が興奮して玄関に飛び出て来た。
『あ、もう七時過ぎてた……遅くなるって連絡も入れていなかった』日曜日だけは出来る限り家族で揃って六時に夕飯は三枝家の暗黙のルールだ。
「連絡もしないで遅くなって、ごめんなさい」
薫子は月子に謝るも
「それはまた後で!とにかく早くリビングに来なさい」
と言い捨てて、そそくさと行ってしまった。
豊が、何だか疲れ切った雰囲気のピーちゃんを抱いたままリビングのソファに座って、ぼんやりテーブルの上を眺めている。
薫子はリビングに入ってテーブルの上を見た時、
驚きを隠せなかった。
「これは?」
「これは?って分かってるんだよね?」
豊が聞き直す。
テーブルの上に置かれたもの、それは……。
大きさ三十センチほどのパンダのぬいぐるみに
桜木亭のパンダ焼きの袋、そして梅園の多分餡蜜の詰め合わせが入ってると思われる手提げ袋。
「何で?……」
「こっちが聞きたいよ!まったく、カコは琥原くんと付き合ってるんじゃないの?」
豊が珍しく声を荒げた。
いつもとは逆に月子の方が豊の隣に座ると穏やかに話し出した。
「六時前にね、稲垣さんって人から電話あって、薫子さんはお帰りですか?って」
今まで両親が仕事でいない時間にしか電話がなかった為に、両親には直希と出かけていることは話したことがなかった。
ただ赤坂の夜の電話は別だったが……。
「まだ帰っておりませんがって話したら、実は近くまで来ておりまして、どうしてもお渡ししたいものがありますと言うから、薫子がいなくても宜しければって……むしろご両親様にもお伝えしたい事がありますって」
胸騒ぎがする薫子。




