第百二十五話 緑が好きな理由
本日、故あって(詳細は活動報告をご覧ください)お昼頃の投稿が出来なかったので、近いお時間ですが、続けて投稿させて頂きます!
どうぞお楽しみ下さい♪
上野に到着。
直希が車を停めたのは上野駅から少し遠い駐車場だったが、そこから歩きで上野動物園に向かう。
今日はどこの建物にも寄らない薫子。
動物園までの上野公園をブラブラと歩く二人。
直希は自分のポケットに右手を入れていたが、その左隣を歩く薫子は少し距離を保つ。
直希がその距離を近づけ、その左手が薫子に触れそうになる度に彼女は同じだけ意識して離れるを繰り返していた。
それを誤魔化す様に薫子が今日の服装について、ここまで何故被ったのか?も気になっていて話しかけた。
「直希さん。今日のそのセーター、ブルックスブラザーズの濃い緑色ですよね?」
薫子が言うと
「え?よく分かったね」
「父がブルックスブラザーズのクルーネックのセーターが好きで何色か持ってまして、多分そのうちのお気に入りと同じ色かと」
「そう、お父上と同じ趣味とは嬉しいね。この色は落ち着く」
「緑色がお好きなんですね」
「そうだね、弟が五月生まれでね。だからなのか眩しい春の色の明るい緑も暗めのこんな緑色も好きなんだ。薫子さんも好きなんじゃないのかな?」
祐希の生まれた春の色だから好きなのか?と聞かれた様で薫子は胸が締め付けられるも素知らぬふりで問い返す。
「え?どうしてですか?」
「君の名前からも新緑をイメージするんだが、違うかい?」
「よく勘違いされるんですが、私九月生まれなんです」
「九月?」
「はい、本当は十月が出産予定日だったらしいんですけど、切迫早産で九月に生まれてしまって、両親がまだ名前を思いついていなかったみたいで……」
「それなのに、何故薫子さんになったの?」
「父が母を慌てて車で病院に連れて行く途中、信号で停まる度、どこのお庭先からも金木犀の香りが薫っていて、母も父も気持ちが和らいだそうです」
「それで薫子さん」
「そうか、金木犀か……優しい香りの花だね」
「香り高い花ですが、すぐ散ってしまいますから……何だか自分の名前の由来はいつも話しにくいんです」
「ご両親が感じたままの、その時の場面を切り取ったかの様な表現豊かな名前だと僕は思うけどね」
「そうですか?」
「あぁ、優しい香りがする君らしい季節の花だと思う……夏の暑さが過ぎて少し朝晩が涼しくなって来た頃の春とは違う緑も優しい色味に変わって行く、そんな情景が浮かぶような……」
薫子は少しはにかんで
「高層の鬼なのに、吟遊詩人みたいなことも仰るんですね」
直希をフランス語派生の英語でからかってみたが、
「ほう、僕の子猫ちゃんは博学だな。僕はミンストレル、吟遊詩人か」
直希は嬉しそうに逆に薫子をフランス語で子猫扱いして笑った。




