第百二十四話 本当の恋人同士の様に
日曜日。
直希はいつも車で送り迎えをしてくれる。
しかしながら薫子の家の近くでは人目が気になるのでは?と気遣い、迎えはいつも東京女子大のあたりを待ち合わせ場所にしてくれていた。
待ち合わせ時間に薫子が出向くと見慣れない車が止まっている。
ブリティッシュ・レーシング・グリーン色の英国産車だ。
その車にもたれた長身の男性。
水色のシャツの襟がクルーネックの濃い緑色のセーターから少し見えている。
足元は多分濃いめの茶系のショートブーツ。
ジーンズのポケットに両手を入れて空を見上げていた。
『え?直希先生?』
髪の感じが違う。
いつもは緩やかなウェーブのかかった髪をムースで後ろに流しているが、今日は前髪がおろしている様に見える。
直希はふいに視線を下すと
「おはよう薫子さん」
笑顔を向けた。
『うわっ、同じクルーネックだ!被った!しかも絶対まさかのブルックスブラザーズだ』
薫子は今日の服装をしくじったと思った。
まるで本当の恋人同士の様なペアルックにしか見えない。
薫子は、ブルックスブラザーズのオックスフォード・ピンクと言われるクルーネックのセーターに白のボタンダウン、細身のジーンズを薄茶色のウェスタンブーツにインしている。
肩からブーツに合わせた色のショルダーバッグをかけていた。
「おはようございます」
薫子はおずおずと直希のそばに歩み寄る。
「どうした?何?」
「いつもと雰囲気が……お車も違いますし」
「あぁ、髪かな?オフの時は、いつもこんなだよ。
固めるのは仕事の時だけ。車は今日の気分でね」
『……やっぱり兄弟なんだなぁ、前髪が下りてるだけなのに似てる』
祐希を想うたびに胸が痛む。
「さあ、乗って」
直希が助手席に誘うも薫子が言う。
「このお車はスモークガラスではないですよね?」
「また、それかい?僕がいいって言ってるんだから、生真面目に考えなくていいんだよ」
「それでもテレビにも出てらっしゃる方ですから」
「今日は、あれもあるし!この髪型であれをかけてる時にはバレたことがないから」
直希は運転席の前のボードに置いてあるレイバンのサングラス黒のウェイファーラー※を親指で指差した。
『確かに別人に見えるけど……食事の時にはどうするつもりかな?』
薫子は助手席からチラッと直希を盗み見た。
すると、その視線を敏感に察知して
「何?直希さんカッコいいとか思った?」
「違います」
「即答?」
直希は楽しそうに笑った。
※メン・イン・ブラックでお馴染みのフチも真っ黒なサングラス




