第百八話 直希の詮索?
「三枝さん、大丈夫かね?」
薫子は高見沢教授の話を聞きながら、口にサンドイッチを入れるのを忘れたまま、いつの間にか目からは涙がボロボロ出ていたらしい。
「この話を……多分、琥原くんは私にしようとしてくれたのに……私、もっと話せる気持ちになってからでいいよって言ってしまって……」
「で、ケンカしちゃったのかな?」
「いえ、違います……」
「そうか……僕達にも分かるほどに君達の様子がおかしい。そんな時に丁度いい機会を与えてしまったのかもしれないな」
薫子が泣き止むのを待ったかの様に高見沢教授が薫子に聞いた。
「直希君は稲垣光希にそっくりなんだが、君、直希君を見てどうだった?」
「え?助教授ですか?」
「うん」
「え……と」
「ハンサムとか、素敵とか思わなかったのかい?」
「あっ、そうですね。物腰が柔らかくて穏やかにお話をされる方だとは思いました」
「それだけ?」
「えっと、はい」
「君は琥原君にしか反応しないのかな?」
「それはどう言う意味でしょうか?」
「普通の女性は、まずは彼の容姿に惹かれる。そして肩書き、若くして助教授ということ。またあの稲垣光希の息子であり、母親の裕子さんのバックには財閥が控えている。彼は所謂御曹司なんだよ。仕事なんかしなくても多分一生優雅に暮らせるほどのね。興味は湧いたかね?」
薫子はまだ涙が乾いていなかった潤んだ目のまま
「建物にしか興味がない女子大生なもので、その凄さが分かりません。すみません」
「まあ、そうだろうね」
高見沢教授は笑うも、急に固い表情になって話を続けた。
「ただ今回のこの一年生の特別講義については、私の憶測に過ぎないが、直希君は元々、君の事を探ろうとして作った機会だと思えるんだ」
「先程の講義がですか?」




