第百六話 身勝手な話②
取り残された光希と裕子。
「一度座らないか?」
光希がまずは自分がソファに腰を下ろした。
裕子も渋々、テーブルを挟んで光希から離れたソファに座って俯いている。
「迷惑は承知しているし、これ以上ない程の異常な申し出だと言う事も分かっているが、俺には子育ては無理なんだ。慰謝料も養育費ももちろん提示額通り支払う。ただ離婚はしないで欲しい。頼む」
「……何年も放っておいて離婚協議中ですのに、いきなり子連れで戻って来たかと思えば、その子を育てて欲しいですって……何様ですの?」
「本当に済まない。貴女にも直希にも辛い思いをさせたのは分かっているが……」
『それでも俺は瑠璃子しか愛せなかった』
「私に他にお慕いしている方がいらしたら、どうなさるおつもり?」
裕子が問う。
「そうなのか?……それなら子供は二人とも俺が引き取ろう。貴女はまだまだ若いし、これからその人と新しい人生をやり直したらいい」
「今、ご自分が子育ては無理と仰った口で!何を言い出すかと思えば、どう子育てされるおつもりなんですか?!」
「自分では出来ない……家政婦でも雇うさ」
「なんて身勝手な……それでは親の愛を知らずに育ってしまいます」
「そう言うた貴女に育てられたから直希がまっすぐで、いい子だ……裕子さん貴女のお陰だと思うからこそ頼みたかったんだが……貴女にも貴女の人生があるからな。無理言って悪かった」
光希は立ち上がる。
「悪かったな。もうここへは来ない……祐希は何とかする。ここのうちの鍵は置いて行く」
テーブルに家の鍵を置きリビングから出て行こうとした時、裕子が徐ろに言った。




