第百三話 隠していた本当の気持ち
当日搬送先の病院。
光希は『この最後の一年にやらかしやがって』と思いながらも瑠璃子らしいと考えながら、寝かされている部屋に向かう。
扉を開けると瑠璃子が寝ているベッドだけが使われている二人部屋だった。
「あ、先生」
瑠璃子は目覚めていた。
頭に包帯を巻き、鼻には大きな絆創膏が付いている。
「先生じゃねぇよ。本当、癖の悪い酔っぱらいが、特待生って立場をわきまえろ」
「論破したくなるんです……どうしても光希先生の理論を貶されると頭に来ちゃって……」
「俺のか?」
「はい」
「そんな事で怪我なんかすんなよ。お前が特待生だって事を一緒に飲んでた学生全員が心配して申し合わせた様に、たまたま誰かの振り上げた腕に、お前さんがぶつかって、倒れ込んだ先にテーブルがあったって事故って事にしたんだからな。その気持ちと自分の身体も大事にしろよ」
「……ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
「迷惑とは思ってねぇけど、心配はした」
「心配ですか?!」
今まで横になっていた瑠璃子が飛び起きる。
「あっ、痛っ!」
頭を押さえる。
「おいおい、頭打っての入院なんだから無理すんなって、横になれ」
光希が近寄って瑠璃子が横になるのを手伝おうとした時、いきなり彼女は光希の胸にしがみつき
「先生、私を女として見て下さい!先生の事を考えるだけで胸が苦しくて溺れそうなんです!」
驚きを隠せない光希だったが、冷静を装って返答をする。
「俺は妻帯者だ」
「家に帰ってないじゃないですか」
「子供だっている」
「人を好きになるのに関係ありますか?」
瑠璃子は上目遣いで光希を見つめた。
「倫理の問題だがな……」
光希は
『先にお前に溺れたのは俺の方だよ』
瑠璃子を抱き寄せた。




