目線
「起きて。学校一緒いこ」
L◯NEの通知音で目が覚める。
「ごめんちょっと待って」
そう返信し、カバンを持って下の階に降りる。
「優樹菜ちゃん来たよ〜」
母の呑気な声。その声通り、一階のリビングには既にL◯NEの送り主である優樹菜が居た。呑気にうちのペットである猫(名をもたという)とじゃれている。
「あいつと違ってかわいいねぇ〜もたは」
「ふん」
猫と遊びながら俺の愚痴を言う優樹菜を無視し、朝食をすませる。
「あ、もう行かなきゃみたい。またね〜もた」
ニャ。と満足気な返事をするもた。
「もた今日も早く帰るからな。」
何も言わずそーですかという目をこちらへ向け、もたはソファで寝転がる母の方へ歩いて行った。
「私の方が懐かれてんのはどういうことなの」
「...俺高校上手くやってけるかな」
「朝から陰気くさいなあ」
「優樹菜が朝から元気すぎんだよ」
「そりゃテンションあがるでしょ。今日から高校生活本番がスタートするんだから」
「うぅん..」
「まぁさ、一緒にいてあげるから」
「ありがと..」
「行ってらっしゃーい」
母の言葉と同時に、俺たち家のドアを開いた。
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教室に入ると、既に十数人のクラスメイトが来ていた。数人は談笑し、残りは誰に話しかけようかとソワソワしている感じだ。
「音も誰に話しかけようかなってソワソワしなさい」
「おまえやっぱ心読めるよな」
「なんのこと?」
「てかさ、優樹菜がいるから危機感が持てないんだよな」
優樹菜がムッとした表情をする。言いすぎてしまった。
「じゃあ、ソワソワさせてあげる」
優樹菜はカバンを机に置くと、教室の真ん中で話していた女子2人の方へ向かっていった。優樹菜に気づいた2人は、嬉しそうにおはよーと言って優樹菜を迎え入れた。昨日連絡先を交換したからだろう。
「1人か..」
ゆっくりと椅子を引き、腰掛ける。確かに、非常にソワソワしてきた。
誰かに話しかけなければ...
そんな義務は勿論ないのだが、優樹菜と2人でいるのに慣れてしまっているせいかどうも落ち着かない。いや単純にぼっちに見られたくないだけかもしれない。
我ながら弱いな、と項垂れていると、肩を叩かれる。
「よ。」
顔を上げると、先日連絡先を唯一交換しようと言ってくれた2人組、貴斗君と沙良さんが立っていた。
「あ、おはよ。貴斗君沙良さん」
「呼び捨てでいいよ」
「私も沙良でいい」
「そう?ありがとう。俺も音でいいよ。」
「おっけー」
2人は俺の机に手を置き、顔だけを出すように座り込んだ。その状態のまま2人で何やら世間話を始めてしまった。
なんか距離の詰め方不思議だなこの人達..
いやこれが普通なのか?友達がほぼいないので残念ながら分からない。
ていうか、今がチャンスじゃないか?
「あ、あのさ」
2人が話すのをやめ俺を見る。俺のシミュレーションより明らかに2人の距離が近いので一瞬内容が飛びかけるが、何とか絞り出す。
「今日、昼一緒に食べない?」
2人が顔を見合わせる。
「いいよ」
「ていうかそのつもりだった」
「まじ?ありがと!」
良かった。やったぞ。誘ったぞ優樹菜。
そう思い優樹菜の方を向くと、既に優樹菜はこっちを見ていた。周りの女子達に相槌をうちながら、確実に俺の方を見つめている。しかも少し淀んだ目で。
そうだ思い出した。俺達が食べることになったら優樹菜も一緒に食べたいと昨日言っていたのだ。
「そういえば昨日一緒にいた優樹菜も食べたいって言ってたんだけど、いい?」
2人が目を見合わせる。
「勿論。」
2人の声がハモり、なぜか2人が睨み合う。
「よかった」
優樹菜の方を再び向き、ぐっと親指を立てる。
優樹菜は相変わらず淀んだ目で俺を見ていたが、一回だけ頷いた後、女子達の方を向いた。
「なんか自分であげたけど後からやっぱり取り戻したくなることってない?」
優樹菜の声に、分かる〜という声が聞こえる。変な話してるな、と思う。まぁ分かるっちゃ分かるけど。




