幼馴染とコンビニ
「コンビニ行こ」
優樹菜の家のインターホンを押すと、そう返事が返ってきた。
すぐにドアが開き、上下スウェット姿の優樹菜が出てくる。
「お金ある?」
「ちょっとな」
肩を並べ、家のすぐ下の通りにあるコンビニに歩き出す。
「バイトしなきゃだね」
「いいんだっけ?うちの高校」
「いいんじゃない?それに最悪遠いしバレないでしょ」
「それもそうか」
「一緒に働こうよ」
「そりゃそうだ」
「態度やば」
「優樹菜がいないと何もできないのだ」
「やば」
コンビニの自動ドアを通る。店員さん以外は誰もいない。
「経営大丈夫かな」
「俺たちが要かもしれん。これからも沢山貢ごう」
「そうしよう。じゃあ私これ」
優樹菜がカップアイスを俺の持つカゴに入れる。
「じゃあ俺も」
「家にポテチあったっけ?」
「自分の家のことくらい分かっとけよ」
「あるのないのどっち」
「ない」
アイスもう一個とコンソメ味の大容量ポテチをカゴに入れ、レジに進む。
「そういえば歩きでコンビニ行った時アイス買うのってよく無いらしいぞ」
「えなんで?」
「近くに家があるってバレるらしい」
「なるほど...たしかに」
「そんなん買う前にバレてるけどね」
「え?」
店内には誰もいない。店員以外。
レジの店員がこっちを向く。
「よお」
「あ!美香姉!」
「びっくりしたぁ」
ただ1人レジに立っていたのは、俺たちの家のこれまた近くに住み、幼い頃から何かと世話になっている岸和田美香だった。そりゃ住所がバレているわけだ。
「美香姉ここでバイト始めたんだ!」
「まあね」
「美香姉今年から大学生?はやいねえ」
「こっちのセリフだよ..2人がもう高校生だなんて..」
「あ泣かないで!」
「早く会計してもらえませんか」
俺がそう言うと、美香姉がこっちをキッと睨む。
「相変わらず生意気なやつめ。だから彼女ができないんだよ」
「なっ!」
「ていうか何が俺達がこの店の要だよ。いつもアイスとポテチしか買わないくせにさ」
「..なんで知ってるの」
「いやよく一緒になるだろ。そしてお前らいつも一緒にいるよな」
「まあ幼馴染なんで」
「いいなぁ〜幼馴染」
「美香姉も幼馴染みたいなもんじゃん!」
そんな会話をしながら、アイスとポテチを詰めてくれたレジ袋を受け取る。
「じゃあまたね」
「おう」
俺も手を振り、美香姉が振り返す。
「やっぱ昔馴染みはいいですなぁ」
家への道を歩きながら、優樹菜が言う。
「そうですねぇ」
「あ、でも今日音のところにいた人達、貴斗君と沙良ちゃん。良い人そうだったね」
「だったね。なんかエモい2人だった」
「なんかね。相性よさそーな感じ」
冷たい雰囲気があるけど、お互いだけはその中にある暖かさを理解しているような。
..ちょっと理解者面しすぎか
「考えてみたら音も相性良さそうだけどね」
「そうか?」
「理解者ポジというか、理解者面ポジというか、ファンというか」
...何も言えない。こいつは本当に俺のことを理解しているのだろう。嬉しいような、悲しいような。
「なになに。黙って私の目見ちゃって」
「ごめん」
「音はさ、あの2人とご飯とか食べる感じ?」
優樹菜が、もう目の前に見えてきた家を見ながら言う。
「あそうか、、もう席とか自由なのか」
「そだよ」
「どうなんだろう..まだ全然喋れてないし、、てかそもそもあの2人の中に部外者が入るのは..」
「うわ早速理解者面。これから知っていけばいいんだよ。自分から声掛けなって」
「まあ...やってみようかな」
「うん!」
優樹菜が笑う。本当に、全部筒抜けなんだな。俺が自分で隠した誘ってみたいという本音も、全部見抜いてしまう。
こいつの知らない俺を、作ってみたい。それを、また知ってほしい。
そんな風に思った。
もう喋らないとか、そういう対抗意識じゃなく。高校生になって、高校生の自分として、高校生の優樹菜と喋りたい。優樹菜の新しい部分を、俺も知っていきたい。
「あ、でも」
優樹菜が立ち止まって俺を見る。
「やっぱ私と食べよ?」
「え、なんでだよ。いい感じに背中押してくれたと思ったら」
「いや、音が高校初っ端から他の誰かと弁当食べるのなんか癪だなぁって。陰キャのくせに」
「ひどくないか?てか優樹菜は別の女子たちと食べろよ」
「そうしようと思ってたけど、やめた。音と食べる」
「いやいや..2人でか?」
「そ。」
「あんなに背中押してくれたのに?」
俺はまじまじと優樹菜を見つめる。
「...分かったってば。..混ぜてよ。音とあの2人が食べてるとこに」
「そんなに俺と食べたいんだな」
「うっさいな。てかまず、ちゃんと誘えるのかよ陰キャ」
「なんだと」
この幼馴染は、こういうところがある。
俺のことは全部分かっていて、上手くいくように背中も押してくれる。なのに、良いところで俺を自分に引き戻すんだ。
「..可愛いよな。おまえ」
「は!?きも!!」
言い争っている間に、俺たちは優樹菜の家に到着した。




