再起動はいつも力技で3
扉を潜るとそこには一軒家が立つ空間があった。起伏のない芝生の生えた地面とそこに立つ一軒家に目が奪われる。
「これはすごいな」
割と大きめの一軒家に驚いていると頭の上からリンゴさんがやる気のない声で説明してくれる。
「マスターの記憶にある家の情報を伝えておきましたので」
ふて寝しますと言いながら寝息を立て始める。
ダンジョンコアくんがフヨフヨと飛んできたのでお礼と共に撫でてあげる。びっくりマークや照れ表現などコア表面に浮かべながら飛び回る姿に癒される。
玄関を開けて中に入る。久しぶりに靴を脱いで、そのままダンジョンコアくんに案内してもらって風呂場へと進む。
流石に洗濯機はなかったが、洗濯物も風呂場で洗えばいいかと背嚢の中から洗濯物を取り出し今きている服も洗えるものは全部風呂場へと持ち込む。
ダンジョンコアくんがふて寝しているリンゴさんを専用の就寝スペースへと連れて行ってくれた。
大量の洗濯物と共に風呂場に入った私は驚いた。一軒家には似つかわしくない大きな風呂場が広がっていたのだ。とりあえず洗濯物を適当なところに置き、シャワーで頭から体までしっかりと汚れを落とす。定期的に洗浄の魔術で綺麗にしてはいるが、湯船に入る前の礼儀であろう。
「っっふう」
割と熱めのお湯が張られていた湯船に体を沈めていく。この瞬間は何事にも変え難い。
あぁぁぁぁ体がほぐれるぅぅぅとエヘエヘとだらしない顔をしながら浴槽に溶ける勢いで馴染んでいく。
しばらく湯船に体を沈めていると、洗い場の方でジュニアが何かしている。
「ジュニアどうしたの?」
頭の上に畳んだ手拭いを乗せた古式ゆかしい温泉スタイルをしつつ、浴槽の縁に顔だけ乗せてジュニアに話しかける。
洗濯物でもしてあげようと思ってな、と想話が送られてくると同時にかなり大きく膨らんだジュニアが床に置いている洗濯物をその体の中に取り込む。
「え、汚いのに悪いよ」
旅の仲間にそんなことさせられないと思い制止しようとしたが、ジュニアがいいからのんびり浸かってろと食い気味に想話してくる。
「正直助かるよありがとううぅぅ」
湯船に癒されている私は温かいお湯の誘いに勝つこともできずに寝湯のようになっている場所まで泳いで行きそこで意識を手放した。
ケイト、ケイト。
真っ白い空間の中で幾何学模様が球体になったような不思議な物体に呼びかけられる。
あぁ神様お久しぶりです。
君の豪運には驚かされるばかりだよ。
まさかあの場所に辿り着くなんてさ。
行きたくて行ったわけじゃなかったんですよ。
そりゃそうだろう。行きたくて行けるような場所でもないしねそもそも。
ですよねぇ。何であんな場所に出現していたんですか。
それがねぇ、わからなくてねぇ。
先ほどから会話しているのか、念話しているのか存在が一つなのか複数なのか、夢なのか現実なのかと全てが曖昧になっている。
とりあえず今後どうしていくつもりだい?
そうですねぇ。鯨を探します。
あぁなるほどそうするのか君は。君らしいと言えば君らしいねぇ。
それは褒められているんでしょうかねぇ。
ちょっと混ざりすぎて喋り方が似てきてるからそろそろ僕は帰るねぇ。
はーい気をつけてお帰りくださいねぇ。
寝湯があまりにも気持ちよくてしばらく寝ていたようだった。その横でジュニアがまた厄介なものと交信しよってと呆れていた。
「ひょっとして綺麗にしてくれた?」
身体が異常に調子がいい。
年齢相応にいろんなところが傷んでいたし、汚れていたからな。体の中も外も綺麗にできるところは綺麗にしたぞと想話してくる。
「本当に感謝だわ」
すこぶる体調が良くなった私は湯船から上がると風の魔術で体を乾かし、着るものまで全て洗濯したことに気づき仕方なく全裸でリビングまで向かうのであった。槍くん、出てきても着れないから。君武器だから。




