再起動はいつも力技で1
どうしてこうなった。
目の前にはいつ現れたのであろうか、一階層にて佐藤さんが発見した荘厳な槍が現れていた。ダンジョン産の道具や武具を装備して呪われるとかは聞いたことはあるが、触れてもいないのに呪われるとか聞いたことがない。何もしていないのにストーカーされると言うのは厄介極まりないんだが。
「マスターなんですかこれ」
俺の後頭部から覗き込む形でリンゴさんが槍を見ている。リンゴさんがわからないものが私にわかるとでも?
「さっき一階層で佐藤さんが見つけた」
そう説明すると、肩のミニ佐藤さんがウンウンと頷く。
槍は仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしますか?
「リンゴさん元の場所に返してきなさい」
そう言うとリンゴさんがカッとひかり、槍は一瞬にして消えた。特に指示もせずに意思疎通が完璧にこなせたリンゴ産とハイタッチでもしようかと振り向く。
「私が連れてきたんじゃなひいいいいい」
喋りかけたリンゴさんの方を振り向いていた私の真後ろに気配がする。それと同時にリンゴさんが叫びながらダッシュで私から遠ざかっていく。ダンジョンコアくんも表面に汗マークを示しながらリンゴに追随するのは芸が細かくて先生大好きです。
「オーケーオーケー、槍さん話をしようじゃないか」
送り返した槍が帰ってきた事を把握した俺はそう言いながら振り向く。目と鼻の先に槍がいた。近い。
「マスター、その槍を解析しようとしてもこちらでは何の情報も把握できません!」
解析に長けたリンゴさんから悲鳴のような叫び声が聞こえる。あいつ遠くに逃げすぎじゃないか。
しかしリンゴさんで無理なら俺にも無理だな。
仕方ないなーと意を決して槍の本体に触ってみる。
「ぐわあああああああああ」
槍を掴んだ瞬間に叫びながら体をガタガタ震わせながら叫び苦しむふりをする。我ながら迫真の演技だ。
「演技ですよね」
冷静に俺の状況をモニターしているリンゴさんに冷たく突っ込まれる。
「バレたか」
ワハハと手に持った槍を軽く振り回しながらてへぺろする。
重たいのは重たいのだが、重量バランスが中々に手に馴染む。有体に言えば使いやすい。
「結局何なんですかこれ?」
問題ないと判断したのか近寄ってきて槍の周りをふよふよと飛び回るリンゴさん。
「意思表示強めだったから触れたら喋ったりするのかなと思ったけど何もないね」
はてぇ?と俺も頭を傾げる。
「意思があるように見えるので知性宿す物、もしくは英霊遺物とかかと思ったのですが」
リンゴさんがそう言いながら、度々光を照射しては何もわかりませんと凹んでいた。
「まぁとりあえず強そうな槍ゲットだぜー」
と高々と掲げたら光って体の中に吸収された。
「・・・出ろ」
そう言葉にすると槍が一瞬にして手の中に現れる。
「収納」
そう念じ声をかけると再び体に吸収された。
「やはり知性宿す物では?」
リンゴさんが呆れたようにそう言った。
そんなこんなで槍の一件がひと段落したので封印の巫女の元へと向かう。ダンジョンコアくんが巫女の再起動に成功したのか正座して待っていた。
「初めましてご主人様、私封印のダンジョンの管理作業神霊でございます」
深々とお辞儀をしながら以前とは人格レベルで違う穏やかな様子を見せる。
再インストールを頑張ったであろうダンジョンコアくんが私やりましたよ!とでも言うように、リンゴさんの周りを褒めて褒めてと飛び回っている姿は姉にまとわりつく弟のようで微笑ましい。
「封印の巫女と呼べばいいかな?」
リンゴが出現させた机と椅子にそれぞれ腰掛けながら情報のすり合わせが始まる。
まさかこの話し合いの場があのような結果になるなどとは思っても見なかったのである。
あと槍さん、呼んでもないのに出てこないように。




