012・冒険者との対面
ゴブリンっていうのは、僕ぐらいの背丈の人型の魔物のことだ。
レッドウルフより弱いけど、でも、頭も良くて道具も使って、しかも群れを作るから、ある意味ではレッドウルフより厄介な魔物なんだって。
で、
(そのゴブリンを、僕が退治するの?)
僕はキョトンとなってしまった。
それから、院長先生のお話。
「実は、村の近くの街道でゴブリンに襲われたって旅人がいたそうなの」
街道は多くの人が通る。
この村に来てくれる行商人さんも、その1人だ。
で、そのゴブリンの話を聞いた行商人さんは、安全のため、ゴブリンが退治されるまでこの村に来るのを延期する……って連絡してきたんだそうだ。
(ええ……!?)
それは困る。
僕らの集めた『魔物の素材』が買ってもらえない。
それだけじゃなくて、村の人たちだって生活必需品が買えなくなるし、みんなの暮らしが成り立たなくなってしまうよ。
もちろん、村長さんも同じように考えた。
そして、
「村の共同金を出して、冒険者を雇うことにしたの」
だって。
ゴブリンの目撃情報から、ゴブリンが生息しているのは、村の近くの森だと推測された。
僕らがよく行く、あの森だ。
ただ、あの森は広いから、冒険者の人たちを案内する『案内人』が必要なんだって。
「…………」
そこまで聞いて、僕もわかった。
つまり、僕は『案内人』に選ばれたんだ。
あの森には、村の人たちも採取や狩猟で入っているけれど、森の深い場所まで行くのは僕らぐらいだ。
そして『案内人』といっても、危険は伴う。
…………。
村で一番強いのは、きっと僕だ。
子供だけど、レッドウルフだってやっつけられるのは、みんなが知っている。
だから僕が選ばれた。
(そっかぁ)
少し遠い目になってしまった。
院長先生は、なんだか申し訳なさそうな顔をしていて、
「できる、ユアン?」
って聞かれた。
多分、『嫌だ』って言ったら、院長先生はそれを許してくれて、村長さんたちから僕を庇ってくれると思った。
でも、きっと村での立場が難しくなってしまうよね。
それがわかったから、僕は、
「はい、やります」
って答えた。
院長先生は申し訳なさそうな、でも安心したような顔だった。
そんな彼女に、
「でも、1つ問題があって」
「え、問題?」
「うん。森については、僕よりもアイネの方がずっと詳しくて、僕1人だと案内できないかもしれないです」
って教えたんだ。
院長先生は「そうなの?」と驚いた顔だ。
アイネは、とっても頭がいいんだ。
森で魔物を探す時も、アイネの言う通りにすると、すぐに見つかる。だから僕は、いつでも彼女に従うばかりなんだ。
院長先生は少し考えて、
「わかりました。アイネにも相談してみますね」
「うん」
僕は頷いた。
でも、きっと大丈夫だろうなって思った。
そして案の定、
「やります! 将来、冒険者になるための勉強になると思うから!」
アイネは喜んで引き受けた。
(……ほらね)
そうして僕とアイネの2人は、ゴブリン退治の『案内人』をすることになった。
◇◇◇◇◇◇◇
それから4日後、僕らは村長さんのお宅をお邪魔した。
今日は、ゴブリン退治の日。
村長さんの雇った『冒険者』に会うために、村長さんの家にやって来たんだ。
その道中、
「ドキドキするね」
アイネは、顔を赤くして胸を押さえていた。
そんな僕とアイネは、レッドウルフの毛皮から作った『炎皮のローブ』を羽織り、腰ベルトには『ホーンナイフ』も装備していた。
またアイネは、『木の盾』も背負っている。
ちょっと冒険者っぽい格好だよね。
ちなみに僕は、初対面の人なので、一応、長袖の服に手袋をして『白い木の右腕』を隠していた。
…………。
そんな訳で、村長さんの家で冒険者さんとご対面。
そこにいたのは、男の人が1人と女の人が2人の3人組パーティーだった。
男の人は、20代ぐらいの背の高い人。
金属鎧を身につけていて、腰には長剣を提げているから、きっと剣士なのかな?
名前は、アイザックさん。
ちなみに人間。
女の人の1人は、20代ぐらいの獣人さん。
軽そうな皮鎧に、短剣と弓を装備していて、とても身軽そうな雰囲気だった。
名前は、リュシアさん。
ピンとした耳と、細くて長い尻尾がちょっと可愛い。
もう1人の女の人は、エルフさんだった。
だから、見た目は20代だけど、本当の年齢はわからない。
膝まで届くようなローブに、魔法石の填まった杖を握っていたから、きっと魔法使いなんだと思った。
名前は、シューレイクリプトルさん。
長いので、他の2人からは『シュレ』って呼ばれてた。
…………。
で、そんなアイザックさん、リュシアさん、シュレさんに、僕とアイネの2人が『案内人』として紹介された。
すると3人は驚いて、
「はぁ!? おいおい、この子らはまだ子供じゃないか!? 俺たちは子守りをしに来たんじゃないぞ!」
アイザックさんが怒っていた。
リュシアさんは、アイザックさんを宥めながらも、気持ち的には彼と同じみたいで、そんな表情をしていた。
シュレさんは1人、無言、無表情。
「…………」
「…………」
3人の反応に、僕とアイネは顔を見合わせてしまう。
村長さんと院長先生が、僕ら2人が森に一番詳しくて、村で一番強いのだと説明してくれたけど、アイザックさんは納得してくれなかった。
というか、信じてないって感じかな?
リュシアさんが「まぁまぁ」と宥めながら、僕らを見る。
獣人らしい釣り目。
ちょっと綺麗。
「2人とも、本当に森の案内できるの?」
「うん」
「できます!」
僕は頷き、アイネは大きな声で返事をした。
リュシアさんは、そんな僕らを見つめる。
と、彼女の視線が、ふと僕らの着ている『炎皮のローブ』に向けられた。
「……これ」
小さく呟く。
ちょっと驚いた顔をして、それから少し考え込む。
そして、
「わかったわ。それじゃあ、ユアンとアイネだっけ? 2人ともよろしくね」
と笑った。
僕とアイネは「はい」と声を揃える。
アイザックさんは「リュシア!?」と愕然とした顔をしていたけど、それは華麗に無視されていた。
「…………」
シュレさんは何も言わない。
ただ、ふと気づいたら、彼女の視線が僕の方を向いていた。
正確には、
(……僕の右腕?)
を見ているみたいだった。
……なんで?
僕は首をかしげ、そしたら彼女は、ヒョイと視線を外してしまった。
(…………)
ま、いいか。
ふと見たら、隣のアイネは『案内人』として認められたことが嬉しかったみたいで、小さな手を胸の前でキュッ……と握り締めていた。
それから僕を見て、
「がんばろうね、ユアン!」
「うん」
やる気に満ちた彼女に、僕は笑った。
そうして僕とアイネは『案内人』として、3人の冒険者と一緒に村を出発したんだ。
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実は現在、インターネットの機器が壊れ、パソコンからのネット接続ができなくなっています。かろうじてスマホは繋がるのですが、操作に慣れないため、感想などの返信は後日にさせてくださいね。
申し訳ありませんが、どうかご了承のほどよろしくお願い申し上げます。




