011・村の変化
「ユアン、ちょっといいかしら?」
その日、僕は院長先生に呼び止められた。
(?)
なんだろう?
それから院長先生の部屋に連れていかれて、こんな話をされた。
「実はね、ユアンたちがたくさんの魔物の素材を売ったことで、村長さんから『どうやって集めたのか?』って、その方法を聞かれているの」
そうなの?
僕はびっくりだ。
詳しい話を聞かされると、今回、『ホーンラビットの素材』だけじゃなく『レッドウルフの素材』まで売ったことで行商人に驚かれたんだって。
それを見ていた村人が他の人にも話して、やがて村長さんの耳にも入ったみたい。
ホーンラビットは村の男の人なら、がんばれば何とかなる魔物らしい。
だけど、レッドウルフは専門の冒険者に頼まなければいけないほど強くて、危険な魔物なんだそうだ。
その素材を子供が持ってきた。
それも、たくさんの『ホーンラビットの素材』と一緒に。
(そっかぁ)
そう言われたら、村長さんが不思議に思うのも当然だよね。
院長先生は、
「だからね、ユアンの右腕の力については隠したまま、でも、ユアンが魔物を倒せるほどに強いことは正直に話そうと思っているの」
って言った。
そうしないと、村中から不信感が募る。
僕らや院長先生が、村の中で孤立してしまうかもしれないんだって。
……それはヤダな。
ただ話したとしても、
「人と違う右腕をしたユアンは、もしかしたら、色々と言われてしまうかもしれないわ」
「…………」
院長先生は、とても悩んでいる様子だった。
でも、
(そうしなかったら、きっとアイネたちも色々言われちゃうんだよね?)
それぐらいはわかる。
だから僕は「わかりました」って頷いた。
院長先生は「ごめんなさい」って謝りながら、そんな僕のことをギュッて抱きしめてくれた。
◇◇◇◇◇◇◇
その日から、僕を見る村の人の目が少し変わった。
村を歩く時、出会った人とは「こんにちは」って、いつものように元気に挨拶をする。
村の人も笑って挨拶を返してくれる。
だけど、少し離れると、ヒソヒソと話す小さな声が聞こえてくるんだ。
聞こえてくる声には「呪われた子……」とか「薄気味悪い……」とか、そんな単語があったりする。
「…………」
ちょっと胸の中が苦しい。
でも、そんな時は、
ギュッ
そばにいるアイネやみんなが何かを伝えるように、僕の手を強く握ってくれるんだ。
(……うん)
それが温かくて、僕は笑った。
アイネたちも笑ってくれた。
そうして僕らは、今日もいつものように森へと出かけていったんだ。
…………。
今回の狩りでは、ホーンラビットを3体、レッドウルフを2体、倒せた。
解体して、素材も集める。
その時、
「これからは『ホーンラビットの素材』とお肉は、村の人にも配るようにしよっか?」
とアイネが言い出した。
僕らはびっくり。
アイネが言うには『ホーンラビットの素材』は、もう自分たちで使う分には必要ないし、お肉に関しても、すでに充分な蓄えもできているから大丈夫だろうって。
本来なら、売ってお金にするけれど、
「自分たちの利益にするより、村へ還元した方がいいんじゃないかって思ったの」
「…………」
それって、僕のためだよね?
だから、僕は返事に困っちゃった。
でも、みんなは笑って、
「いいんじゃないか?」
「賛成」
「アイネが言うなら間違いないよ」
「そうしようぜ」
何の迷いもなく、そう言ってた。
思わず、みんなの顔を見てしまう。
そんな僕へと、みんなは笑顔で大きく頷いてくれたんだ。
(…………)
僕は、ちょっとだけ泣いてしまった。
アイネたちは驚き、すぐに僕のことを抱きしめて、「大丈夫だよ」って励ましてくれたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
院長先生にも相談したら、
「それはいい考えね」
って、僕らのことを優しい眼差しで見つめながら、頷いてくれた。
村長さんにも話を通してくれて、村の人にどう『魔物の素材』やお肉を分配するかは、村長さんの責任でやってもらえることになった。
…………。
それから2週間が経った。
僕らの狩った『魔物の素材』とお肉の分配は、その間に4回、行われた。
やっぱり、そのせいなのかな?
回数を重ねるごとに、村の人たちからの怖い視線は、だんだんと少なくなっていったんだ。
それどころか最近は、
「お、ユアン。また森か?」
「気をつけてな」
「がんばれよ」
狩りに向かう時に、そんな声をかけられるようにもなったんだ。
凄い変化。
アイネは、
「……わかってたけど、ちょっと現金よね」
って、呆れてた。
でも、僕は素直に嬉しかった。
応援されて、期待されるのは心が温かくなって、やる気が出てくるんだ。
そんな僕に、
「まぁ、ユアンがいいならいいけど」
って、アイネは苦笑してた。
そんな僕ら2人に、みんなも笑ってた。
そんな感じで、今日も僕らは村を出て、いつものように森へと向かったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
あれから、また2週間。
秋も深まってきた頃、僕らはようやく8人分の『レッドウルフの毛皮』を集め終わって、次からはそれも村へと分配しようかと話していた。
そんなある日、
「ユアン」
「はい?」
廊下で、院長先生に呼び止められた。
院長先生は、少し迷った顔をしていて、僕を呼び止めたのに何も喋り出さない。
(?)
僕は首をかしげる。
やがて彼女は息を吐き、僕を見る。
そして、
「実はね、ユアン。昨日、村長さんから『ユアンに、他の冒険者と一緒にゴブリン退治に行って欲しい』って頼まれたの」
って言われた。
……ゴブリン?




