010・狩りの日々
3日ぶりに森へとやって来た。
院長先生は許可してくれたけれど、見送りの時は「気をつけるんですよ」って、少し心配そうな顔をしてた。
(うん、約束は守ります)
そう思いながら歩いていく。
3日前と違うのは、もう1つあって、それはアイネたちが『ホーンナイフ』という短剣を3本、持っていることだ。
ホーンナイフ。
それは『ホーンラビットの角』を加工して作られたナイフなんだって。
この3日間の内に、アイネが村の鍛冶屋さんに頼んで、作ってもらったそうなんだ。
お金は『ホーンラビットの毛皮』を売って、用意したって。
アイネは、
「いつまでも、ユアン1人に戦わせるつもりじゃないもの」
って言ってた。
アイネの行動力って、凄いよね……。
でも危険だから、なるべく前に出ないで欲しいってお願いしておいた。そうじゃないと、僕1人でみんなを守れないかもしれないから。
アイネは、
「わかってる。防具が揃うまでは、大人しくしてるわ」
「…………」
本当に約束だよ?
少し不安になりながら、僕ら7人は、また森の深い場所まで歩いたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「えい」
僕は『白い木の右腕』を伸ばして、近くの高い木の枝を掴んだ。
メキッ
そのまま腕を縮めると、軽い僕の身体は空中に浮かんで、枝の上まで辿り着いた。
(よいしょ)
枝に跨って、ロープを縛る。
しっかり縛ったら、残ったロープを地面へと垂らして、
「みんなも登ってきて」
そう声をかけた。
アイネたちは頷いて、ロープにいくつも作られた結び目を使って、1人1人、枝の上まで登ってきたんだ。
実はこれ、アイネの考え。
魔物を探す時は、上からの方が見つけ易いし、僕が戦う時に邪魔にならないようにって、木の枝を利用することにしたんだ。
(確かに眺めいいよね)
少なくとも、魔物に急に襲われることはなさそうだよ。
…………。
しばらくしたら、ホーンラビットがやって来た。
1匹だけ。
僕らの匂いが残っていたのか、地面に鼻を押しつけて、フンフンと鳴らしている。
僕は、アイネたちと顔を見合わせ、頷いた。
(やっ)
僕は枝から飛び降りた。
メキメキッ
空中で『白い小剣』を生やして、まだ気づいていないホーンラビットの真上から、落下の勢いも合わせて殴りかかる。
バキィン
角の生えた頭が潰れた。
反動で、僕の着地の衝撃も柔らかになる。
「ふぅ」
ホーンラビットをやっつけた。
アイネたちも木の枝からロープで降りてきて、
「やったね、ユアン」
「うん」
僕らは笑い合った。
それからアイネたちは手際よく『ホーンナイフ』を使って、ホーンラビットを解体した。
「わ? よく切れる」
って喜んでた。
それが終わったら、また木の枝の上へ。
…………。
15分ほどすると、今度は、4匹のホーンラビットがやって来た。
(やっ)
さっきと同じように僕は落下する。
バキィン
1体の頭が潰れて、残った3体のホーンラビットは驚いた様子だった。
「えいっ」
ヒュッ バキッ ボキィッ
その隙に『白い小剣』は、2体のホーンラビットを殴り飛ばして、やっつけてしまった。
『ピ、ピギ……ッ』
残った1体は逃げようとする。
あ、待て。
僕は慌てて追いかけようとして、でもその前に、木の枝の上からアイネが『ホーンナイフ』を投げつけた。
ドシュッ
太い後ろ足に突き刺さる。
ホーンラビットの動きは鈍くなり、僕はあっさり追いついて、その頭を殴った。
「…………」
木の上を振り返ったら、アイネは得意げな顔をしていた。
僕は苦笑しちゃったよ。
それから、またホーンラビットを解体する。
その日は5体分の『ホーンラビットの角』と『ホーンラビットの毛皮』を手に入れて、みんなで笑いながら村へと帰ったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
魔物狩りを始めてから、1ヶ月が経った。
3日に1回のペースで、僕らは『ホーンラビットの素材』を集めて売っていた。
おかげで7人分の『ホーンナイフ』が手に入って、僕も1本、腰ベルトに装備することになった。
(予備武器、だね)
あと『木の盾』も買った。
それはアイネが持っていて、いざという時には自分も戦うんだって言ってた。
「私、冒険者になるんだから」
だって。
ちょっと心配だけど、アイネは頑固だから、あとは僕がしっかり守ろうって思ってる。
ちなみにアイネ本人は『金属の盾』が欲しかったみたいなんだけど、金額の高さと重さで諦めたみたいで、凄く悔しそうな顔をしていたよ。
…………。
森では、あのレッドウルフに出会うこともあった。
(やっ)
枝の上から奇襲をしかける。
けど、直前で気づかれて、攻撃はかわされちゃった。
相変わらず、レッドウルフは動きが素早いんだ。
だけど、弱点も見つけた。
『グルアアッ!』
ボバァアアン
正面にいる僕へと、レッドウルフは、その大きな口を開けて真っ赤な炎を浴びせてくる。
僕は、
メキメキッ
肘の辺りから『白い円形盾』を生やして、その炎を防いだ。
防ぎながら、前に走る。
すると、炎を突っ切った先には、必ず無防備な状態で動きを止めたレッドウルフがいるんだ。
これが弱点。
「えいっ」
バキィン
その頭を『白い小剣』で殴り、砕く。
最初に出会った時は、動きが速くて焦ったけれど、2回目からは、だんだんと落ち着いて戦えるようになった。
おかげで『レッドウルフの牙』と『レッドウルフの毛皮』が手に入った。
毛皮は、凄く暖かいんだ。
アイネが言うには、炎を吐く魔物だから『火属性の毛皮』なんだって。
冬でも、きっとポカポカだ。
これを、僕ら7人と院長先生のも含めて8人分、冬までに集めるのが当面の目標なんだ。
…………。
そうして僕らは、森でたくさんの『魔物の素材』を集めた。
素材は、いつも村の行商人に売っていた。
だから、今回もそうしようと思ったんだけど……実は、ちょっと困ったことが起きちゃったんだ。




