第六話 レオンとのデート
#第六話 レオンとのデート
ルーク様を咄嗟に目隠しして(私の)危機を脱した後は何事もなくルヴァン邸に戻って来た。
二人して木のカップでお茶を飲みながらルーク様が新しいペンの試し書きされるのを見ていた。
何となく何を書いているのか見せてもらえないので、きっと恥ずかしい言葉が連ねられているに違いない。
夜寝る前に手紙をいただいたけれど、今開けて寂しい気持ちになると他の二人に悪い気がして開ける気にならなかった。
翌朝、顔を洗いに洗面所に向かうとレオン様がいらっしゃる。
「やあクロ、おはよう」
「おはようございますレオン様。今日はお仕事お休みですか?」
「ああ、そうなんだ。久しぶりの休みだからクロについて来てもらいたい所がある」
レオン様も欲しいものがおありのようで私をどこかに連れて行こうとされる。
なんだかデートプランとしては無しだけど、三人共私に自分の事を見せたいのだと思うと少し嬉しい。
「もちろんご一緒します。楽しみです」
朝食を食べ終わると、昨日と同じようにソフィア様の部屋でアンナにあれこれと身支度をされる。
今日はレオン様に合わせて髪もドレスもバッグも薄いピンク色で統一され、お化粧は昨日から少し雰囲気を変えて鋭い印象になった。
アンナ曰く「小悪魔的な感じです」との事。
「美女と野獣よね?レオンを手玉に取っておあげなさい」
ソフィア様は扇子で口元を隠し悪だくみした目をしながらおっしゃる。
今日は悪女よ!
部屋を出るとレオン様が片膝をついて片手を胸に当てて頭を下げていらした。
「クロエ姫、お迎えに上がりました」
レオン様は慣れた感じでそんな風におっしゃる。
「まあレオン、お待たせしましたわ。では行きましょう」
「はっ」
立ち上がって私の手を下から添えるように持たれて何だかくすぐったい気持ちだ。
「それにしてもクロエ姫は今日は一段とお美しい。ドレスも髪も私の色に合わせていただき光栄です」
何だか見透かされたようで耳まで赤くなるのが分かる。
んもう、どうしてレオン様はこんなにストレートなのかしら。
「これはお母様が私のためにご用意くださったのです。きっと貴方も私の飾りの一部とみなしているという事でしょうね」
私は強気にそう返した。
「なるほど、今日の化粧は普段よりも強い女をイメージしているんですね。道理で大人の色香が漂っていると思いました」
生粋の悪女でない私には手玉に取るのは無理だ。
「レオン、からかうのはおやめなさい。これ以上クロエちゃんを困らせると今日のお出かけは中止にしますよ」
助かった。ソフィア様は全てお見通しで助け舟を出していただいた。
「はーい、ではクロ、行こうか」
レオン様は普段通りの口調に戻って私の手を握って歩き出される。
あれ、もしかして街だけじゃなくて馬車にまで手を繋いでいく感じなのかな?
表に出ていない人格は意思の疎通こそ出来ないけれど、見たものや聞いた事はきちんと伝わっているのだそう。だからルーク様とのやり取りを見ているレオン様は少し余裕があるような感じだ。
昨日ルーク様と街で手を繋いだ事を分かっているから、わざわざソフィア様とアンナの目の前で手を繋いで外堀を埋める気なのだ。
と言って悪女でない私は手を振り払う事は出来ない。
何となく、ストレートにぐいぐい来られるレオン様の事も嫌な気がしない。
いや、正直に言うと好きな方だ。
当たり前に馬車に乗るのをエスコートして下さる。
ルーク様がステップの横に立って昇るのを手伝っていただけるのに対して、レオン様は先に登って上から引っ張り上げる形を取られる。
これだと、最後は抱き上げられる形になっているのはわざとだろうか。
馬車の扉が閉まると密室に二人きりになった。
ああ、女神様。私をお助けください。




