第二話 デートの支度
#第二話 デートの支度
私はまだ小娘だから専属の侍女なんていなくて、もちろんルヴァン家には一人で来ているのだけれど、さすがに外に出掛ける時にはソフィア・ルヴァン前子爵夫人の侍女アンナが色々お世話をしてくれる。
商談に出掛ける時は必要最小限のお手伝いだったけれど、なんだか今日はやけに気合が入っている気がするのは私の勘違いだろうか?
客室には鏡がないのでソフィア様のお部屋に連れて行かれ、ドレスを何着か見繕ってくれる。
「まあまあ、クロエちゃんはどれを着ても可愛いわ。でも私のドレスじゃちょっと見た目が古いわ。今度新しいのを作りましょう」
怖い!ソフィア様は私を娘と勘違いしてらっしゃる。まだ娘ではありません。
「クロエ様はお綺麗ですからこのままでもドレスに負けなくて素敵です!」
アンナも嬉しい事を言ってくれる。
「お化粧はどうしましょうかしら」
ソフィア様は頬に手を当てて少し思案されるような仕草をされる。
「お任せください!いつかこのような事があると思いメイクの仕方だけは日々アップデートを重ねて参りました!」
アンナの目はやる気に満ち溢れメラメラと燃えている。
私はただ椅子に座って鏡を見ているだけだった。
まずアンナは私の髪をほどき、櫛で丁寧に伸ばすと香りの付いたオイルでまとめ始めた。
前髪は少しふわっとさせておでこを見せ、伸びた髪はあえて頭の上でくるくるとまとめて小さくお団子にする。
そのお団子にリボンの形の髪飾りを付けて頭は完成。
耳のふさげとおくれげは小娘でも少し色気を出すように残された。
腕と首元、ドレスで隠れない背中の部分には日焼けをしないようにとクリームが塗られる。
ドレスで隠れるはずなのに思ったよりも内側まで塗られてくすぐったい。
「ドレスは肌にくっついているわけではないのでどうしても隙間が出来るのです。念入りに奥まで塗らないといざという時に白い柔肌が汚れて見えてしまいます」
なるほど、さすがアンナ。心得てらっしゃる。いざという時ってどんな時!?
爪が磨かれ最後にクリームが塗られる。
何も装飾品を付けていないのに爪が綺麗に光るのは何となく嬉しい。
私は何度も指を曲げてみたり、伸ばしてみたりした。
メイクは「折角若いんだから」というソフィア様のお言葉により自然に見えるように薄くしてもらった。
比較する対象はないけれど、アンナのテクニックは素晴らしい。
「最近は前髪を上げる方も多く眉もきちんとカットするようです。次の機会には眉も整えましょう」
アンナは当たり前のように言うけれど、次って何!?
季節に合った青の濃淡でボリュームを増やしたドレスに、ウエストに大き目のリボン、それに肩からショールを掛けていただく。
椅子から立ち上がり鏡に全身を映して見え方を確認すると、ソフィア様は尊いものを見るような目で私の全身を上から下まで眺められる。
そして何度か皺が気になるのか手を伸ばして皺を直していただき、ついでに姿勢も直される。
「クロエちゃん本当に可愛いわ」
ソフィア様の口からしみじみと零れ出た。
「このリボン、大きすぎませんか?何となく幼い感じでもう少し大人な感じにしたい気がします」
私は一応意見を口にしてみた。決して文句ではない。
「いいえ、まずは男の庇護欲を誘うのです。改めてルーク様の胸を射られるでしょう」
あれ?なんかルーク様を落とすとかそんな話でしたっけ?
アンナもなんか勘違いしてるみたいで怖い。
「そうそう。そのドレスでルークにおねだりしなさい。大人っぽいドレスは悪女に見えるけれど、そのドレスなら可憐で愛おしい令嬢に見えます」
ソフィア様の悪だくみが怖い。
アンナがバッグを渡して来る。
「これをお持ちください。ドレスの青に合わせて少し映えるように白にしました。ドローストリングバッグであれば小娘感がアップします」
今日は小娘で行こう。




