第十一話 ルークさま
#第十一話 ルークさま
「少し席を外させてください」
レイナード様も商人も私の突飛な言葉に返事も出来ず固まっているのをいい事にエイル様を連れて室外へ出た。
「エイル様、よく頑張りました。あとはルーク様にお任せください」
おでこにちゅっとした。
「クロエ、助かった。あの商人、どれだけ暴利を貪れば気が済むか」
「お願いします」
ルーク様はドアを勢いよく開けると大股で中に入って行った。
「ルーク!お前!」
「レイナード様、話はあとで。この商人の説明を裏で聞いていましたがひどいものです」
「一体何を証拠におっしゃるのですか?」
商人はもう開き直っている。
「ここと、ここ。ここも」
「生産量の数値と、租税公課が全くの出鱈目だ。大方見破られそうになったら計算間違いで通すつもりだったに違いない。この書類は預かってこれ以上の偽りがあれば伯爵を騙す意図ありとして罰する事も出来るがどうだ?」
「そそそ、そんな。これはきっと清書前の書類を間違って持って来たものでございます。日を改めさせていただきます」
商人は書類をまとめて鞄に突っ込むと逃げるように去って行った。
「ルーク、どうしてお前がいるんだ?」
レイナード様はごくごく自然に疑問を口にされる。
「麗しの姫の口づけで召喚する事が出来るようになったのです」
「では毎日ルークでいられるというわけか」
「そういうわけにはいきません。呪いは解けていないし、今日はエイル様の日です」
私はレイナード様とルーク様の会話に割って入った。
「レイナード様、そういう事です」
ルークさまは片膝を付かれる。
「ルークさま、とても恰好よかったです!」
私はおでこに解呪した。
片膝を付いたレオンさまが現れる。
「レイナード様、そういう事です」
レオンさまも同じセリフを口にされる。
私はもう一度おでこに解呪して、エイルさまに戻した。
「エイルさまもルークさまもレオンさまも大好きです。さあ帰りましょう」
「あ、えーと。そうだな。本日の商談は商人より提案却下されたため白紙となった。よって任務完了とする」
レイナード様は商談の体裁を整えられて終了とし、解放された。
馬車に乗ってルヴァン邸に帰る時にはとてもすがすがしい気持ちでいっぱいだった。
「ちーちゃん僕恰好よかった?」
「はい、エイルさまはまるで小さな騎士のようでした」
「ルークは?」
「ルークさまもとても頼りになる大きな騎士でした」
「レオンは?」
「レオンさまは今回は関係ありませんでしたが、三人共いるだけで安心できます」
エイルさまは私に抱き着いて嬉しそうに顔を埋めると左右に振って押し付けるような感じがして・・・なんか怪しい。
「エイルさま、誰が抱き着けとおっしゃいました?」
「ルーク」
でしょうね。
「ではレオンさまはなんておっしゃいました?」
「顔を埋めて、と」
でしょうね。
「エイルさまはお二人がおっしゃった事に疑問を持たなかったんですか?」
「お前ならちーちゃんも許してくれるからって」
でしょうね。
「三人とも前言撤回です。令嬢にそんな事なさるなんて立派な紳士ではありません。しかも子供をダシにするなんて卑劣な事。もう手も繋がないし解呪もなしです」
私はぷんすか怒って馬車が邸に着くまで窓の外を見たまま口を聞かなかった。
その晩ベッドの中で久しぶりの感覚にきょろきょろと辺りを見回す。
見た事はないけれど、ここは三人の部屋で天蓋付きのベッドがあり、私は何故かベッドの上に座っている。
ルヴァン家に来てから時々悪夢を見るのよね。
ちゃんと夢って分かってるからいいものの悪夢だから困ってる。
何故なら、起きてる間は一人ずつ相手をするのに、夢の中では三人同時に相手をしないといけないから!




