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ライフォイグナ  作者: ハル氏ら
第1章 

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第6話 「選択」

セルジオは、怪物を殺した。

悠真の本気の拳を、軽口を叩きながら受け流していた化け物をだ。


それも一瞬のうちに。


「それで、実際に会った感想は?戦ってみてどう思った?」


「はぁっ?感想?」


セルジオは気持ちの悪い笑みを浮かべながらうなずく。


「……死ぬと思った。確かにあんたの言った通り人間じゃないんだな。フォーグナーってのは……。」


「うん。良かったね。僕がいたおかげで死ななくて済んだんだから。」


ため息をつきながらも、悠真は礼を言った。


人ではない。

見た目は確かに、そうだった。

でもなんだか。


「君も何か思ったことがあるみたいだね。」


「……なんというか。思っていた怪物と全然違って。」


「汐苑もそう思ったのか?」


悠真も似たような違和感を感じたらしい。


正気を失っていた。

違う。あの感じは。


「精神はあの警官のまま、何かに心の底から虜にされているみたいで……。」


「ふ~ん。フォーグナーを、獣みたいなものと思っていたわけだ。」


「初めはな。でもそんな簡単な言葉で言い表せるもんじゃなさそうだ。」


悠真が頭を抱える。


……なんとなく気持ちが分かる気がする。


ただ人の姿をした怪物を止めるだけだと思っていたのに、本当に人を殺すことになるなんて。


「考えが甘いよ……君たちは。」


そう言いながら、さっきまで、警官がいたはずの場所に目をやったセルジオは、両手を合わせる。


「……とは言え、詳しく話さなかった僕にも責任はあるか。」


セルジオは、僕たちを見つめた。


「もっとよく考えるといいよ。これからかかわる世界がどんなもので、どんな不可解が待っているかってことをね。それでも、友達を助けたいっていうなら、あの路地に来なよ……。」


そう言い残し、セルジオは消えていった。


「……悠真、大丈夫?」


屈みこんで動かない悠真の元へ、僕は近づく。

返事がない。


「悠真?どうしたの。」


揺すってみても全く動く気配がない。


「ちょっと、ねぇ、悠真!」


「おう、悪い悪い……動けそうにねぇわ。」


そういう悠真の体はボロボロで、攻撃を受けたであろう手は赤く腫れてしまっていた。


「ホントにとんでもない。怪物だった。師範より強いんじゃ……。」


突然、悠真の顔が血の気が引いたような表情になった。 


「なあ、今何時だ。」


「えっと、今は……。」


スマホを取り出し確認する。


これはまずい。


スマホを見せながら、悠真に絶望の報告をすることになってしまう。


「5時48分……ここからじゃどう足掻いても道場につく頃には遅刻だね。」


苦笑いをしながら、見つめ合う。


「しょうがないな。こうなりゃ、急がす普通に歩いてくかな。」


悠真はおもむろに手を差し出してくる。


「分かった。僕も一緒に道場に行って、納得してもらえるように話すよ。」


肩を組み、悠真を支える。

道場に向かう途中で、僕は思った。


悠真、本当はかなり気にしてるんだろうな。

本当はどうしようもなくビビりで、あの事件が起きた時も一番怖がっていたはずなんだけどな。


あの頃と、別人みたいに変わったな。


……もしかして、僕のせい?


ずっと分かってはいた。

あの和泉の死から、立ち直らないといけないことくらい。


いや本当は、気持ちの整理はついていた。


初めは本当に取り乱していた。

そのたびに悠真が助けてくれて……。


悠真がいてくれたおかげで、今日まで生きることができた。


だから怖かったんだ。

悠真まで僕の前からいなくなったら……。


だから悠真の気持ちを利用してしまった。


僕は最低な人間だ。

悠真の隣にいてもいいような人間じゃない。


それでも……。


「悠真は……まだセルジオの手伝いを続けるの?」


「ああ。当たり前だろ!」


やっぱり……。


そういう悠真の顔は引き攣っていた。


まだ、あなたはそこにいたんだね……。


僕はふさわしくない。


それでも今だけは……。

今度は悠真を助けるために。


もう少しだけ隣にいてもいいよね。

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