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ライフォイグナ  作者: ハル氏ら
第1章 

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第2話「奇異」

謎の影を追う汐苑と共に、路地裏に入った悠真は、目の前に見えたそれの姿に驚愕する。


幼い頃、共に過ごした記憶が蘇る様な気分だ。

あの頃と何ら変わりない姿で、和泉が、走っていたのだから。


「そんなはずはない、あれは……誰なんだ。」


「そんなの和泉に決まってるじゃん。悠真も覚えているでしょう。」


覚えているとも……あの髪型も、格好も、あの頃の和泉のままだ。

だからこそ許せないのだ。


こいつは、和泉のことを汚している。

汐苑を玩んでいる(もてあそんでいる)。


誰であろうと絶対に許せない。

……その時、頭の片隅に思い浮かんだことがあった。


なんだ?この状況、あの変な話に似てるぞ。


人の心に付け入る怪物の噂。


そんな馬鹿げた話があるか?

そう思っていたが……まさかこんな形で会うことになるなんてな。


堪えきれない怒りのまま、どうしようかと思考を巡らせている内に、和泉は立ち止まった。


「よかった、追いついた……。ねえ、和泉。どうして逃げるの?」


その言葉に反応した和泉は振り返る。


「マジかよ……。」


後ろ姿だけじゃない。

顔やその仕草までも、全てが完璧に和泉だった。


「……久しぶりだね。二人とも。」


「ッ!?……和泉みたいじゃないか」


……しゃべんなよ。


「みたいじゃない。僕は、本物だよ。よく見てよ、悠真」


「汐苑の優しいとこ、変わらないね。少し心配になるくらいだ。」


屈託のない笑顔を見せながら、和泉は続ける。


「でも、悠真は流石だな。臆病なところが変わらない。ちゃんと、考えている証拠だ。僕が偽物だって思ってるんだろ?この姿じゃ、怪しまれて当然か。」


……コイツ、何を言っているんだ。


俺たちのことが分かってる風に話しかけてくる。

あの時のことを覚えてるみたいに。


そんな……本当に?


「悠真。僕はあの日、確かに死んでいたよ。」


「ああ、俺はこの目で見た。それが紛れもない事実のはずだ。」


「じゃあ、生き返ったの?」


汐苑が和泉に問う。


「……それも違うと思う。因みに、あれから何年経ったんだい?」


「10年だ。」


「だったらおかしいと思わないか?この姿は、あの頃のままなんだ。」


和泉は自分でも、その状況がわかっていない様子で答えを探しているみたいだった。


「……生まれ変わった。うん、それが近いと思うんだ。」


「だろうさ。一度失ったものが還ってくることはないからな。」


「生まれ変わり。じゃあ、あなたは和泉じゃないってこと?」


汐苑の瞳が揺れている。


「……僕は、紛れもなく和泉だ。」


嫌な予感がした。

和泉の影がなぜか大きくなったように感じる。


「あの頃、一緒に遊んだ記憶もあるし、二人がどんな奴だったかも知っている。」


瞳の中から光が消えたのが見えた。

震えている。

全身を大きく震わせている。


「そして死んだ時のことも。死んだ、あの感覚も覚えて……。」


突然、頭を抱えて屈み込んだ。

よく耳を澄ますと、ぶつぶつ何かを言っているようだ。


「そうだ、アイツが……俺を……。だから……今は……みんなを……」


怯えている。

初めて見たかもしれない。

あいつのこんな姿は。


この和泉は、きっと……。


そんな風に考えていた時、汐苑が和泉に歩み寄っていた。


「大丈夫?和泉。」


混乱している和泉を落ち着かせようと汐苑が、手を差し伸べたその時。


「ダメだ、僕に近寄るなぁ!」


黒いものが周囲の光を吸い込みながら横切った。。


「「「ハッ?えっ」」」


その場にいる全員が息を呑んだ。


頬が熱い。

てかなんか垂れてる。


「悠真、頬が切れてるよ。」


「血……痛ッ!?」


それに気づいてから痛みが来た。


「えっ、あっ、悠真、ごめん。僕……は」


和泉は少なくとも正気に戻ったようだ。


「気にすんなよ、それよりお前がそんなになるなんて……!」


キィィィンという金切音とともに、一筋の光が和泉と俺たちの間を裂く。


「やっと……見つけた。」


声が響く中で、光が収まっていった。

その中から現れたのは、白銀の髪の青年だった。


「大人しくしてろよ。」


青年は和泉に向かって右手をかざした。

その右手に光が宿り始めたかと思うと、彼の頭の先から足の先、全身から稲妻のような光が走りだす。

やがて、その雷光は右手の光に収束されていく。


「安らかに眠れ。」


この人は、和泉を……。


それに気づいた瞬間。


「待て、待ってくれ。まだあいつを失うわけにはいかないんだ。」


その青年に、全力で突進した。


「おい、邪魔を!?」


俺が、青年に激突した直後、その右手から光が放たれた。

レールガンのような、その光の筋は、和泉を通り過ぎ、背後にあった建物を溶かした。


「どうして、和泉を殺そうとするの?」


汐苑も、一緒になって男を止める。


「おい、頼むから離れてくれないか?」


「和泉、逃げろ!」


俺は、喉が張り裂ける勢いで叫んだ。

あいつが偽物だったとして、危険な怪物だったとしても、二度も目の前で失うのは耐えられなかった。


だからだろう。

逃げていくあいつの背中を見てホッとしている。


そうして和泉は、また俺たちの前から消えた。

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