↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフォイグナ  作者: ハル氏ら
第1章 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/18

第1話「残穢」

潮風の香りとセミの鳴き声が、本格的な夏の到来を告げている。


「暑すぎるよぉ〜。」


照りつける日差しが、まるで殺人光線のように、肌を焼いてくる。

そんなうんざりする暑さの中、白崎汐苑(しらさきしおん)は、学校へと向かっていた。


「なんで、学校に行かなきゃいけないんだ!」


世間はもう夏休みだというのに、碌でもない話を聞きに来い、だなんて言われるなんて。


「しょうがないじゃん。授業はお昼寝、赤点祭り。それじゃあ、進級は無理でしょう。」


隣にいる霧矢悠真(きりやはるま)が、偉そうに説教を垂れてきた。


「そう言うあんたも補習じゃん。」


「俺はお前と違って忙しかったんだからしょうがないだろ。」


ああ。そう言えば、武道大会に出るんだっけ。

しかもそれが影響して、師範に熱が入ったせいで、地獄の大特訓の餌食になっていたんだ。


確かに教室の中で悠真の姿は、ほとんど見なかったような気がする。


「とんでもない。生き地獄だったんだっけ……?」


「ああ。もうこの大会が終わったら、もう武道なんて辞めてやりたいって思うくらいにはな……。」


あっ、悠真の目が死んでる。

よっぽどの地獄だったと言うことなのだろう。


まあ、それでも悠真が、師範の元を離れることはないんだろうけど。

なんせ、私たちと師範とは10年来の付き合いなのだから。


「……本当に強くなったよね。悠真も。」


「あえ?何だよ急に」


「昔はあんなにヒョロヒョロだったのに笑。」


「おい!笑うなよ。」


そう言えば、師範と出会ったのって確か。


「……あいつが今の悠真を見たらなんて言うんだろうね。」


「……和泉のこと?」


「そうそう。今なら喧嘩しても、勝てそうだし。」


「どうだろうな。結局、俺はからかわれ続けてたんじゃないかな。」


……ちょうど、今日みたいな、日差しの強い日だったな。

僕たちのかえがえのない友人を失ってしまった。


忘れられることのない、あの黒い夏。


「和泉がいてくれたらって、僕、今でも思うんだ。」


「おい。そんな顔するなって、アイツの分も俺たちは楽しく生きていくって決めただろ?」


嗚呼、また出ちゃってたんだ。

未だに慣れることができないよ。


暗闇の中で、触れた生暖かい感触、あの匂い。

思い出すだけで、また吐き気が。


「おぇええ……。」


「おい!汐苑!」


ーーー


……どうして、彼女が苦しみ続けないといけないんだ。


昔のことを思い出すといつもこうなる。

どれだけ時間が経っていたとしても、彼女の中の傷が癒えることはなかった。


「大丈夫か?」


「うん。ごめん、悠真。」


「学校、休むか?」


……汐苑が、答えを出す前に、一通の連絡が入る。


休校。

学校の近くで、殺人事件が起きたらしい。


近頃多いな。


「悠真?」


まずい。

今、汐苑がこの事を知ればどんな反応をするかわからない。


「学校休みになったらしいぞ。」


最低限のことだけ教えた。


近頃、この町では、物騒な事件が多い。

殺人事件や行方不明者が続出している。


ただ、事件が起きているだけ、そうだったら、汐苑に気を遣うこともなかった。

でも、この一連の事件は普通じゃない。

10年前の悲劇と似ている。


「そうなの?なんで?」


「補習の先生が休んだらしい。まあ、どっちにしろ休んだほうが良かったんだし、良かったじゃないか。」


「そっか……。」


「コンビニでアイスでも買うか?」


汐苑の気持ちが少しでも紛れればいいのだが。


「アイス?……うん。食べる!」


いつもの調子を取り戻してくれた汐苑は、立ち上がって、再び歩き出してくれた。


……汐苑。


怖い。


幼馴染が壊れていく姿。

いつか自分もそうなってしまうんじゃないかと思ってしまうんだ。


あの時、僕たちだけが助かってしまったことを和泉が恨んでいるからなのか?

いや、あいつがそんな奴じゃないなんてこと分かっている。


それを疑うのは俺たちの友情を裏切ることだ。


前を向け。

俺がしっかりしないといけないのだから。


「……和泉?」


汐苑が、突然、あいつの名前を呼び始める。

その目はただ一点を見据えていて、遠くを見つめるような温かい眼差しをしていた。


その目の先を見ると、小さな影が路地裏へと消えていくのが見えた。


「和泉!待って!」


突然立ち上がった汐苑は、影を追い始める。


「待て!一体どう言うことなんだ?」


そして、俺もまた汐苑の後を追い、その裏へと誘い込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。