プロローグ
こんな話を聞いたことはないだろうか。
『突然変異か。人に作られた新たな生命か。未知に包まれた変容生物……。』
決まった形を持たない生命体。
犬のような見た目をしていた。
魚のような姿で、空を泳いでいた。
人、大きな動物、鳥、しかもスライムみたいなブヨブヨだったなんて話もある。
噂で語られる姿は、全部バラバラだ。
でも、これだけは決まって、みんなが、同じことを話す。
それは、影の中から滲み出るように現れる。
黒い塊のような姿から徐々に歪んでいって、本当の姿を表す。
そして目に入った生き物に無差別に襲いかかる。
そんな噂。
よくある都市伝説の怪異のような話。
ただ一つ違うのは、それにつながるもう一つの噂があること。
もういないはずの人にあったという話。
行方知らずの、あるいは死んでしまった人を見かけたという噂。
最後に見た時の姿と何も変わらない。
懐かしいと感じるほどにそっくりだったと言う、それらの影は、不自然に蠢いていたんだとか。
そして……これから話すのは、誰も知らない恐ろしい脅威の話。
病……そうそれはまるで、流行病のように広がってく……。
誰もそれに気づくことはできない。
この街で起きる事件に関わる真実を知らない。
徐々に怪物へと成り変わる人たち。
ただ、渦の中に巻き込まれるように、いつの間にか飲み込まれている。
そう、これは、そんな悍ましい噂に巻き込まれた僕たちが、世界の裏にある神秘に触れてしまう物語。
この世のものとは思えない異形の怪物に出会ったことをきっかけに、崩れていく日常の一端だ。




