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ライフォイグナ  作者: ハル氏ら
第1章 

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第10話 「夜は明ける」

フォーグナーに巻き込まれないよう、汐苑を大きな木の下にある小屋の中に寝かせる。


「セルジオ、前みたいに、一発でフォーグナーを倒せないのか?」


「……ふっ。あのレベルの魔術は、すぐに行使できないんだ。だから君に時間を稼いでもらってたんじゃないか。」


それを聞いてため息が出た。


やっぱり胡散臭い奴だ。

それでも、奴らを確実に倒すには、セルジオの力が不可欠だ。


「分かった。俺が、時間を稼ぐ。その間に、セルジオは準備をしてくれ。」


「うっ、うん。ありがとう。……なんか、変わった?君。」


正直、昨日までずっと躊躇っていた。

咄嗟に出たとはいえ、本当に、拳を振るうべきなのかを。


でも思い出したんだ。

かつて師範が、俺たちを守るために、その拳をふるったことを。


今こそ、まさにその時なんじゃないか?


汐苑を守る。

和泉との約束を守る。

そしてフォーグナーに惑わされている彼らの、意思を守るために。


だから……俺が、この拳を汚すことを許してください、師範。


「何で分かってくれないんだ?俺たちは、この高揚を知って欲しいだけなんだぜ。」


「そうか……それが誰かを殺していい理由だと思っているのか?」


自分のやっていることを悪だと思っていないのか?

やっぱり気味が悪い。


「だから、俺はお前たちと同じにはならない。」


次の瞬間、俺は、一気に距離を詰める。


「その手に持っているものは、捨ててもらうぞ。」


その男が持つ、包丁を叩き落す。


ゴッ!


鈍い感触がする。


前に感じた時と同じで、まるで岩でも殴ったみたいな感触がした。


「痛ってぇな、クソガキィャァアア!?」


男が、怒りに任せ、拳を振るう。

その拳を掴みながら、思いっきり引き寄せた。


こんなもの!!!


その勢いを利用して、男の腹に膝を入れる。


「痛いか?でも、これはお前がこれまで人に振るってきた力なんだよ。」


モロに俺の膝が突き刺さった男は、泡を吹いて倒れる。

その苦悶の表情が見えた時、ほんの一瞬、動揺してしまった。


でも師範なら……一度、決めたことは曲げない。


だから俺はやり遂げる。


「悠真くん。どうやら、前に戦った奴らより、呑まれきってないみたいだ。これなら簡単に無力化できる。」


「そうか、じゃあ前みたいに殺さなくていいんだな?」


「うん。この程度の力なら抑え込むことができる。」


そうか……それなら安心だ。

これで躊躇いなく戦い抜ける。


拳を握り直し、余計な力を抜いた。

一撃に全てを込める。


「何をするんだぁ?お前はこの感覚を知りたくないのかぁ?」


今度は別のフォーグナーたちが襲い来る。

あの時の警官よりも弱いとは言え、複数相手は流石に厳しい。


そう思っていると、赤い光が頬を掠めた。

その光が当たったフォーグナーが怯む。


「君は一体ずつ集中してくれればいい。その間に、他の奴らは押さえておくよ。」


「ありがとうございます。」


その時、セルジオの表情が心なしか明るくなったような気がした。


そのまま、セルジオの援護を受けながら、俺は一体、また一体とフォーグナーを倒していく。

だんだん痛みの増していく拳。

昨日までの腫れが、治りきってないんだと思う。


ただ悪い気はしない。


人を殴れば、自分の拳も痛む。

誰かを傷つけるとは、こういうことなんだ。


そう実感できるから。


俺は、奴らとは違う。


そして……ようやく残りが一体になる。


「どうしてぇ?俺は、お前のために言っているんだぞぉ?なのにこんな扱い、あんまりじゃないかぁ……。」


その瞬間、フォーグナーの体が変化した。


「おっと。これは君が、相手にするには、分が悪いんじゃない?」


その両腕が、黒い植物のツルのようなものに覆われる。

同時に、さっきまで薄かった黒い霧が明らかに濃くなったのが分かった。


「どうする?変わってあげようか?」


「はい。危なくなったらお願いします。」


ほんの一瞬気をそらした……その時!


ズボォ!


突然、地面がめり上がったかと思えば、大きなツルが伸びてきた。

そのツルが腕に、巻き付いてくる。


「うお!チッ、なんだ、このツルは!?」


「少し頭を冷やせば、きっと分かってくれるよな?」


よく見ると、フォーグナーの両腕のツルが、伸びて地面に潜っていた。

どうやら、それがここまで伸びてきたらしい。


「足止めのつもりか?」


「そうだ。これで、お前はもう何もできないだろう。」


そうか……普通なら、そう思うだろうな。

……でも俺は、この程度の拘束なんて。


「師範の修行に比べたら、ぬるいんだよぉおお!」


体に大量のタイヤを括りつけられた状態で、山の中を、登ったことはあるか?


「うおぉぉおおお!!!」


全体重を、前に進む推進力に変える。

所詮は、土の中を伸びてきているだけだ。

土が掘り返されて、どんどんツルが地表に出てくる。


「どんな力してるんだ、お前はよぉおお!」


両手にかかる力が弱くなった。

そう思った直後、目の前に見える地面が、崩れ始めた。


崩れた地面の中から、新たなツルが出てくる。

それが鞭のように、俺の体に打ち付けられる。


バチィン!


皮膚が引き裂かれるような衝撃に、息が乱れた。


クソ、痛ぇえ。


「なあ、諦めてくれよ。抵抗は無駄だろう?痛いのは嫌なはずだ。」


「ああ?なんだよ。お前も分かってるじゃないか?」


だったら、なおさら許しておけないな。


「今すぐ、一発入れてやるよ。」


怯むな進み続けろ。


そう言い聞かせて、無理やり進んだ。

次々に襲い掛かってくる、鞭のようなツルの一撃を耐えながら。


ただ一撃。

この一撃で、あいつに教えてやらないといけない。


この痛みを……。


「なんなんだ。なんで、そんな顔でいられる。なんで動けるんだ?」


自分でも分からない。

自分の思いだけで、動いたのは初めてだったから。


「案外届くもんだったな。」


そして……ようやく目の前に立つことができた。


「本当に気持ちの悪い奴だな。」


今度こそ……。


何枚にも重なった、板を割るよりも、重く、早い一撃で。


その一瞬に、全神経を注ぐ。


バギィ。


鈍い音とともに、フォーグナーの体に大きな穴が開いた。


「本当に人間じゃなくなってるんだな……。」


「……そうさ。だから深く考えすぎないほうがいいんだ。憐みは彼らのためにはならない。」


直後、目を焼かれるほどの光が、辺りを包んだ。

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