7-1 拾った硬貨は偽物
「あれ、お金が落ちてる……」
姉さんにお使いを頼まれた帰り道、ルルカが道端に落ちていた硬貨を拾い上げた。
「……ちょっと見せて」
ふと気になって、ルルカの手から硬貨を取る。
「ノワエ様、盗んじゃだめだよ」
「わかってるわよ」
触った瞬間、嫌な予感が確信に変わった。
精巧に作られているが――これは偽装硬貨だ。
「あ! あのお兄さん、何か探してるね」
細い通りから出てきた男は、下を向いて何かを探している。まだこちらには気づいていないようだ。
私は地面に硬貨を置き、その場を離れる。
魔界では落とし物を直接渡すのはご法度だ。
盗んだと勘違いされて喧嘩になったり、傷がついていると因縁をつけられたり、お礼だの何だのと適当なことを言って、追跡魔法のかかった品を押し付けられたりする。
とにかく、関わるだけ損をするのが魔界の落とし物事情なのだ。
そのため、探している魔族を見かけたら元の場所に戻し、その場をさっさと離れるのが鉄則だ。
そもそも拾わない方がいいのだが……お金が道端に落ちていたら、そりゃ拾ってしまう。
男は私が置いた硬貨を安堵した表情で拾い上げ、通りに背を向けて素早くポケットに押し込んだ。
さらに周囲を見渡し、一連の動作を誰にも見られていないことを確認してから、足早に細い通りへ戻っていった。
明らかに不自然な動きだ。偽装硬貨の製造に一枚噛んでいると見ていいだろう。
「持ち主のもとに戻ったみたいで何よりだねー」
「そうね」
男の魔力は覚えたので、無理に追いかける必要はない。
「ノワエ様、せっかくだからなんか食べて行こうよ」
「いいわね。おすすめの場所はあるの?」
「もちろん調査済みだよ。こっちこっち」
初めて来る町なのに、いつの間に調べたのやら。
男のことはいったん忘れて、私はルルカに誘われるがまま、喧騒の中へ戻った。




