定義 0から1に
【2011年2月12日のTesifaの《授業》より引用】
私がいた世界にはね。私が使うような《አስማት》の他に《ችሎታ》ってものがある。
《አስማት》と《ችሎታ》の違いとしては…うーん……《አስማት》は覚えれば覚えただけいろいろなことができて、《ችሎታ》は一芸特化って感じかなー。
【《死灰領域》笠間 滝壷】
「笠間さん。出番です。」
俺の名前だ。呼び出されたのか。
俺はゆっくりとベンチから腰を上げる。
筋肉痛はとうに完治していた。
今は頭が痛いが、これは長い間下を向いていたからだろう。
俺たちは昔からそうだ。変わらない。1-Bだったころからずっと。
俺は3年前、《クラス転移》。そういったものを経験した。そこから2年間戦闘の連続で、1年前やっと帰還した。クラスの人数は3分の2になっていた。
だから言える。あれ以上の地獄は存在しない。
帰還したあと、俺たちは《日本》のある機関に配属されることになった。
秘密機関らしいが、よく聞かされていないためよく知らない。機関の名前は《オルディナリーデイ》。
「《1年B組》、戦闘準備です。」
「了解。次の命令を待つ。」
俺たちは生きるためには戦うしかないのか?
分からない。俺は…昔のことを忘れてしまったんだろう。
「よっ。元気?」
金髪の高校生女子が飛び出してきた。
宮内庁舎にこんなJKがいるのは異質だろう。
「元気ない感じだねー。」
彼女は来栖 美海弐
彼女は女優だ。芸名は丸山エミリ
まあ。ただのクソガキ。
「なんだよ。」
「いーやー?何か《日本》の戦後史上最大級のテロらしいからさ。気をつけなよー。」
「余計なお世話だ。」
どうせ俺はどうにかしぶとく生き残るんだ。きっと。
「そか。頑張りやー。」
「わーってる。」
俺らはいつもこんな感じだ。
少し歩くと、正面玄関だ。
そこに一人の男が現れる。
「笠間さん。乗ってください。」
彼の後ろには黒い車があった。
乗り込むと、彼が口を開いた。
「入っている情報では、彼らは《U.K.》のテロ組織である《The beginning of a new world》であり、《አስማት》を使えると考えられます。現在彼らは……北沢・代沢付近を中心とした半球型の《እንቅፋት》…彼らは《Aviary》と呼んでいるものを作りました。これについてですが……東京23区の最大内接円となっています。」
なるほどな。敵は東京を鳥かごに閉じ込めたらしい。
「で?東京から出られないということか?」
彼は即座に答えた。
「いえ。そういうことではありません。犯行声明を見てもらったほうが早いでしょう。」
そう言って彼はスマートフォンからYoutubeを開いて俺に手渡した。
スタートボタンがクリックされる。
うつし出されたのは、ビルの上で自撮りしているような動画…その人物は不思議な格好をしていた。コスプレか?と一瞬思った。
ゴスロリファッションに首元にある大きなリボン。そして、ミルクティーベージュのツインテールの髪に、黒く光るカチューシャ。
彼女は言った。
『私は…名前を出すのは無理だからこう名乗っとくわね。私は《飢餓》の魔王。まあ、最近は栄養失調も改善してきてはいるのだけれど。まあ、それは置いといて、本題を話すわ。東京を《Aviary》で囲んだわ。だけど、出入りはここから1年間の間は自由とする。だって私たちの狙いは人命ではないもの。私たちの狙いを説明します。《天啓の勇者》のパーティメンバーの一人である《水晶姫》を差し出すこと。それが条件です。分かったかしら?まずは本日の正午に国会議事堂を襲撃します。ではよろしくお願いするわね。』
………
「…12分後じゃねえか!」
「やばいでしょう?」
やばいだろ。これは絶対やばいやつだ。
東京が占領?
ありえない。
「着きましたよ!」
どうやら国会議事堂前に着いたようだ。
すぐさま車の外に出ると、目の前にテントが張られていた。
「お。元気そーじゃん。」
テントから出てきた男がこちらに手を振った。
こいつは1-Bの元クラスメイトで俺の親友の大郷戸 朔輪。確かこいつの《ችሎታ》は……《少し前のお話》。
こいつの《ችሎታ》は簡単に言えば未来予知だ。
偶発的に外部から何か衝撃があった場合、未来を見ることができる。自発的に自分から予知を行えないため便利ではないという点もある。ただ、この《ችሎታ》は頻繁に起動するためそれはあまり関係ないかもしれない。
「で?やばくね?テロだろ。1-B全員集合なんてどれだけ敵強いんだよ。」
そういえば全員集合してるな。
1-Bは全部で25人。
16人はあっちで帰らぬ人になった。
あれほどの修羅場はもう起こらない。起こってほしくない。
「あ。久しぶりね。」
黒髪ロングの清楚系委員長キャラが話しかけてきた。
誰だっけ。
「あ。南吉原じゃん。久しぶり。」
そう。南吉原 若菜は1-Bで学級委員長をしていた。
《王》に召喚されたあとも率先してリーダーシップをとり、《白麗》の魔王を1-B全員で討伐したときもみんなをまとめることを頑張ってくれたおかげで現在27歳独身。あと三年で三十路。
まあそれは俺らもなんだけど。
そんな彼女の《ችሎታ》は《確定切離》とか言う訳の分からない名称のブツ。
まあ…彼女は剣道道場の跡取りとかで《ችሎታ》なくても強いから…ちなみにゴブリン百匹を5分で殲滅させた記憶がある。《ችሎታ》無しで。そんな彼女の《ችሎታ》は……何だっけ?
難しすぎて覚えてない。トホホ
「で?あなたはどうするの?」
「裏方に徹するよ。」
「あら。そう。了解っ!」
彼女はそう言うと敬礼した。
「はあ。気が乗らねえ。」
大郷戸がボソリと言った。
「ねえ…アイス食べたい。」
片庭…彼女は結構天然ちゃんです。はい。右手にちゃっかりスプーン持ってるのも…なんかすごい。
「Haagen-Dazsがいいな。」
それは高すぎる。
「だーめ。」
「ケチ。」
「………給料もらってるだろ?」
「全部課金。」
「………課金勢にやる金はない!!」
「にゃあ。」
「猫の真似しても無駄だぞ。俺は犬派だ。」
「え?私じゃない。」
「じゃあ誰が?」
その時、片庭が黒い何かに包み込まれた。靄?
「は?」
そして靄が消えた時片庭はいなくなっていた。
「ごちそうさまでした。」
誰かが食べ終わりの文句を告げた。
南吉原が言った。
「敵襲だ!配置につけ!」
まさか……ウソだろ?片庭!
俺は逃げるしかない。
俺の《ችሎታ》である《死灰領域》は簡単に言えばデバフだ。
領域内(使用者から半径15m)の中にいる敵に対し、敵の体を構成している(はずの)炭素を少しずつ気づかれないように二酸化炭素に変えていく。
そして気づいたら筋肉がなくなっているということも稀にある…かも。
俺は外にあるテントの中に入った。
ここで《ችሎታ》を解放させる。
そんな時にテントがガサガサした。
野生動物かと思い、見てみると…
「こんにちは。今日はいい天気かもしれないわね。あなたにとってどうかは知らないけど。」
ミルクティーベージュのツインテールの髪をした女性がいた。
「私は《飢餓》の魔王。別にほかの名前で呼んでも全然いいんだからね!」
俺は黒い靄に囲まれて何もわからなくなった。
9月21日午後3時41分(東京時間)
【《確定切離》南吉原 若菜】
1-Bはほぼ全滅した。
まさか《魔王》が3体も出てくるなんて誰も予想していなかった。
そして私は生き残った。虫の息だけれど。右腕を失った。
痛みは息をするごとにやってくる。
でもそれに飲まれてはいけない。私は逃げなければ。逃げて人々に伝えなければ。逃げろ。と。
私は腰を上げる。
血はまだ出たままだ。
その時、後ろから声がした。
「0は1に1は繰り上げて0に0は繰り上げられたものを足して1に。そこからは00001。」
しまった。
とてつもない風が南吉原 若菜を襲い、彼女は倒れた。
1-Bは全滅した。
「まだまだ。だったなぁ。」
背が低い男性が言った。
「そんなことは言うものではない。」
背の高い男性が言った。
「まあ。計画通りだったわね。よかったわ。」
背の普通な女性が言った。
第三反復は2011年を舞台にしているため、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。




