第三反復 失った記憶 仮説5 逃亡 仮説4 See You in the Morning 仮説6 Louise Cézanneの失踪 仮説4
【《拳老》】
終わりはいつも訪れるんだよ。
「まだあんたは分かってない。」
「何をだ?」
あたしは敵と睨み合う。
あたしは知らない。こいつがどのような努力をしてきたかなんて。
ただ、絶対にあたしの方が修羅場を経験してきている。こんな世界の住人に負けるはずはない。
「あたしの使命について。」
口に出たのはそんな言葉だった。
「なら、私が知らないのは当然だな。」
彼女は言った。
【Emma】
敵が持っているレイピアの切れ味は破壊的だ。
届いていなくても、斬撃が衝撃波として私の身をきり裂く。
何回か斬られてなんとなくわかってきた。
ただ、痛みは消えない。
スナイパーも絶えず襲ってくる。
弾に《አስማት ኃይል》がこめられているというよりはただ単純に傷が深いだけだろう。
「悪あがきはやめたほうがいいと思うよ〜。よ~く考えるのはいいことだとは思うけどね〜。痛いでしょ〜。」
「ちっ☆」
私は舌打ちをした。傷は深いけどまだ動けるはずだ。血は流れ出ている。まるで命が流れ出しているような感覚がして意識がもうろうとする。
ならさ。もうよくね?
彼は剣を振った。
ただそれだけで周りの木が切り取られ、不幸な通行人が真っ二つになる。
私は剣の振りの高さを確かめて姿勢を低くした。
その直後、頭上スレスレに斬撃波が跳んでいった。
アホ毛が数本刈り取られた。
分かってきた。
私は銃を構えた。狙うはレイピアを持つ腕。
もちろんレイピアで跳ね返されたがそれが目的ではない。
私は両手に銃を構えて、前に駆け出す。
彼が剣を振った。
ジャンプで飛び越える。
2振り。
上向きの斬撃波は、私が回転することで髪の毛数十本の犠牲で済む。
そして、三振り。
私が着地したあとの斬撃波なので、これは着地のときに姿勢を低くすることで避ける。
私は前に向かって地面を蹴った。
相手はレイピアを振った。これは……
私は銃を構えた。斬撃波が襲いかかる。
私は銃を放ち、斬撃波に当てる。
銃弾は真っ二つになり、斬撃波により減速したが勢いはまだ衰えていない。
「クソ。」
彼は剣を振り、2つの銃弾の破片を即座に落とした。
だが、それが私のチャンスだ。
私は彼の剣に自分の腕を突き刺した。
鋭い痛みが私を襲う。
「は?」
彼が驚いたような顔をしている。
この隙を使う。
自由なほうの手に持った銃をレイピアの付け根を狙う。
銃声のあと、破砕音がしてレイピアが折れた。
その後すぐにもう一発。さっき当たらなかったレイピアを持つ手にヒット。彼が苦痛に顔を歪める。
ただ、銃弾はここまでだ。ただ、私には策があった。
「ダンスに興味ある?」
私は彼の肩に手を乗せた。
彼は少しおびえた顔を見せた。
私は彼に肩を乗せたまま回転する。
やろうとしていること?言葉通りダンスだよ☆
私は回転し続ける。
そして、アイツがパターンや速度に気づき始めたであろう時に、反対向きに回る!
銃声が遠くでした。
私は地面を蹴って横に避ける。
目の前で赤い花が咲き、彼は倒れた。
ビンゴ!
私はそう思ったあと、思ったより手の出血がひどく、気持ち悪くなり、倒れた。
【Elijah】
俺は逃げた。ただそれだけ。
俺は戦闘が得意じゃない。というよりも苦手だ。
そもそも俺は元々コンピューター担当で、戦闘の担当ではない。だから、ほかの奴に戦闘は任せておけばいい。
俺がやるべきことは…
俺は近くにあったカフェに入店し、エスプレッソを1つ注文した。
その後、大きめの机に座り、リュックサックから《商売道具》を取り出す。
まず、ポータブルWiFiを稼働させたあと、リュックサックからラップトップとディスプレイを取り出し、机に設置する。
キーボードも忘れずに。
キーボードを叩いてパスワードを入力したあと、CIAの特殊サイトを開く。
ラップトップについている針に指の先を刺し、血液を染み込ませる。
『認証しました。』とログが出たあと、サイトが開かれる。
暗号化したあと、俺はそのサイトから《人工衛星ハッキング》を開き、KH-11と検索する。
やはり、いまWien上空だ。使える。
キーボードでコードを入力していく。
エンター。
ディスプレイにリアルタイムの衛星画像が映る。
そして、ラップトップからあの電話に繋げば…
「こちら。Elijahだ。Duane聞こえてるか?」
応答なし。
クソッ。
今Duaneはどこだ?
彼らにはGPSを持たせている。だから、それをこの衛星画像に投影すると……Schloss Belvedereか。
正確にはHaupttor Zum Oberen Belvedereで誰かと対峙している。
おそらく敵だ。
Schloss Belvedereは遠すぎる…どうにか電話に応答してくれ…
『こちら。Elias Payerbachです。Elijah?』
繋がった!
よし。
「Elijahだ!Duaneに伝えてくれ。Barrett M82を使えと。」
『あのですね。もう使ってます。結構初期に使い始めました。』
「あ…そうか。えっとじゃあ…頑張れよ。」
『? 分かり…ました。』
Eliasとの電話は切れた。
「ふう。」
そういえばエスプレッソが冷めている。
【Elias】
激しい銃と斧の応酬。
Duaneはなかなかの人物だ。
銃だけで身長の半分くらいあるハルバードをいなしている。
そして、私はそれをただ外から見ているだけ。
圧倒されていた。
銃を撃ったらDuaneに当たってしまう可能性も否定できない。
目の前に広がるのは人外同士の戦いだ。
手を出したらDuaneの邪魔になってしまうため迂闊に手を出せない。
やばい状況だ。
そのとき、視界にSchloss Belvedereが見えた。
そういえば…
あれを使えるんじゃないか?
私は一縷の望みをかけて、Schloss Belvedereへ駆け出した。
【Duane】
このままじゃ押し負ける。
「なんだ?ここまでなのか?お前は?」
目の前の大男が俺を囃し立てる。
「う…る…さい!」
なんとか押し返したが、体中が痛い。しかも、ハルバードはすぐ襲ってくる。
ジリ貧だ。
「……お前はあと3手で詰む。」
敵の宣告は真に受けないほうがいい。士気が下がる。
「お前もな!」
俺は銃を撃った。弾は6発しかない。
銃の名前はBarrett M82。本当はスナイパーライフルなのだが、手に持って撃つことも可能だ。
接近戦ならば。
銃声が響く。
普通ならば戦車を紙のように貫通するはずの銃弾がハルバードに遮られ、落とされる。
「だから何度やっても無駄だと言ったのに。」
たぶん敵は《ዳግም መነሳት》だ。というか100%。
「クソが!」
銃弾は節約しなければならない。
だから、拳銃を主に使っていくしかない。
左手でLaugo Arms Alienを撃つ。遮られる。その繰り返しだ。
そしてハルバードが振り下ろされる。その場所の床がひび割れる。破片が飛び散る。
回避しなければ死んでいた。
「逃げ足だけは速いな。」
銃を撃つ。今度はM82。
もちろん今度も外れる。
俺は後ろに追い詰められていく。後ろはGroße Bassinだから問題ないが、動きが遅くなるのは問題大有りだ。
そこに大声が聞こえた。Elias?
「Duane!後ろに跳んでください!」
その後、飛びのけると、連続した重音がして、そこにいた大男の頭に穴があいて彼は倒れた。
「|Hitler's《クソ野郎の》 Buzzsaw」
【Elijah】
「おい!Emma!聞こえるか?Emma!」
Emmaが応答しない。
Schweizergartenにいるようだがよく分からない。
倒れている人物が2つ見える。色からしてEmmaと誰かだ。
Emma…生きててくれ…
【《Hitzeflimmern》】
「なんだ。思ったよりもやわだったじゃあないか。これでこの国を占領しようと企んでいたのか?やれやれ、私にはその勇気にあきれるよ。まったく。」
目の前には真っ二つになったスナイパーが落ちていた。Belvedere 21の屋上に彼は立っていた。
彼の名前は《Hitzeflimmern》。BVTのDirektorだ。
「Terrorangrep i Norgeよりは簡単だったな。CIAを呼ぶだけでこと足りた。さあ…お姫様を迎えに行くか。まったく。あのお嬢様気質のガキはまだ性格が幼いから困るんだよな。やれやれ。」
彼は倒れているEmmaの方を向いた。
「アイツの父親に貸しができたな。まったく。」
【Arby】
肉と骨が砕ける音が夜の砂漠地帯に響いた。
どうしてこうなったのか。
僕にはどうしてもわからなかった。
甲高い咆哮。歯と歯の間から滴り落ちる鮮血。
異形。
「そんなことさせねえよ!Aby!」
叔父が目の前で地面を蹴ってAbyを抱きしめながら突き飛ばした。
その時、Abyがいた方向にドラゴンが倒れた。
「よし!我ながら位置完璧!」
ショットガンを両手持ちしている褐色肌の少女が言った。
「でもそろそろ来るはずだよ。本命が!」
彼女はショットガンを片手で回してリロードした。
彼女がドラゴンを撃ち、倒したのか?
ならドラゴンと彼女は敵同士?
なら彼女は敵なのか味方なのか…
「何しに来たんだ?」
彼女はそれを聞いて言った。
「えーっとね…さっきマジで痛かったんだよ。顔、腫れてるかも。で、そういう愚痴を言うのもここに来た理由のひとつなんだけどねぇ。もう一つはさ。」
彼女は言った。
「手伝おうか?なんか敵がいるっぽいじゃん。私なら君のいい道具になれる気がするけどなぁ。どかな?」
よく分からない。意図が明確ではない。何のために?何のために彼女はここに現れたのか。
「・・・。」
誰も口を開かない。
「で?私は味方になっていいのかな?」
これは……コイントスだ。
「お願いします。」
僕はそう言った。五分五分の可能性にかけて。
「りょーかい!」
銃声がした。
茂みに《眼》が隠れていたようだ。
銃弾を受けて《眼》は倒れた。
「私は《دماوند》。いや、本名を言ったほうがいいかな?」
彼女はまたショットガンを回していった。
「私はآناهیتا。よろしく。これで信じられる?」
ああ。たぶん大丈夫だ。勘がそう言っている。
銃声が夜の砂漠地帯に響いた。
【Leyen】
「あなたは一体誰ですか?」
私は彼女に尋ねた。
私は彼女がMerkelではないと思い始めていた。
彼女は犬が嫌いだ。
昔、彼女が犬に襲われてい大変な目にあったことをきっかけに彼女が犬嫌いになったのだと聞いたことがある。だから……犬のマグカップがあることなんてあり得るのか?
ほかの閣僚のものの可能性は?
いや、ない。個々の部屋にキッチンはある。そんなことはあり得ない。
なら彼女はMerkelではない。
彼女は微笑んだ。
「何だ。バレちゃったのか。」
彼女から信じられない言葉が飛び出した。
「そうよ。私は首相なんかじゃない。」
彼女は机に腰掛けて言った。
あり得ない。この数カ月の彼女は別人だったのか?
彼女の正体はわからない。だが、彼女ではないことがわかる。
「私は、『Unidentified』。United Nations Office for Mediation and Control Informationの諜報員だよん。」
「は?」
言葉を失った。
「あぁぁぁーー。もうこれも邪魔かな。暑いんだよね。これ。」
彼女はマスクを取った。
そこにいたのは、ストロベリーブロンドをした20代くらいの女性だ。
「体型の変え方知りたい?体型はね。まあ…企業秘密って感じかな。ははっ。」
彼女は緊迫感のない言葉を並べる。
「で?反応は?いかがですかい?怖い?それとも私すごい?」
「・・・。」
「ありゃりゃ。無視されちゃった。」
この緊張感のない感じは少し嫌いだ。
「で?何か聞きたいことはある?もうすぐ制限時間が来るよ。あいつらがここに攻めてくるかもね。そうなら一巻の終わりだぁ~。」
「・・・本当のMerkelさんはどこですか?」
「わぁ。ガチおこさんですか?キャキャキャッ♡さぁてね。どぉこにいるのやぁら。」
「ブチッ。」
「ごめんごめん反応が可愛くてつい。オトナゲなくてごめん!本物のMerkel首相は完全に安全なシェルターに軟禁してますから安心してねい!」
信じられない。このバチクソギャルは何なのよ。人の命を軽んじているようなものが言葉の端々から分かる気がする。
「じゃあ。私は…」
「早くしたほうがいい。崩れるかもよ。」
「は?」
「早く一番の質問をしたほうがいい。」
分かってるのか。当然だな。
「いったい何の目的なんですか?」
彼女は言った。
「どうだと思う?」
彼女は少し笑いながら言った。
その時、外で爆発音がした。
「そろそろ終わりみたいね。」
は?
「バレちゃったことだし、私は行くわね。楽しかったよお〜。まーたね〜。」
「はい?どこ行くんですか?」
彼女は出口から出ていった。
私は追いかけたが、彼女はいなくなっていた。
私はそのまま外に出た。
外は暗く、硝煙の匂いがした。
遠くで銃声がした気がする。
私は、落ちていた拳銃を手に取った。
怖い。とてつもなく怖い。後ろから銃を撃たれるのではないかという恐怖。夫や子どもたちが撃たれたのではないかという恐怖。そして、それを私だけが知らないのではないかという恐怖。
銃を前に向けた。
構える。撃ち方は知っている。だが、私に撃つ度胸はあるのか?
知らない。そんなことどうでもいい。
銃が重い。
身体が重い。
だるい。
でも動かなければ死ぬ。
身震いをした。
一歩づつ私は足を動かしていく。
Rose Ladsonだったときと同じだ。
【Judith】
敵は強すぎる。
はっきり言ってしまうとそんな感想になる。
それほど相手は強いのだ。
私がこう評した人物はこれまで3人しかいない。
相手の武器は拳と足蹴り。
最初の頃は全て受け止めようとしたが、その30秒後にやめた。
攻撃の一つ一つが重すぎる。
敵の腕が少しかすっただけで血が噴き出る。
痛みは消えない。
「クソが。」
敵は笑っている。笑って…笑って……
銃を撃つ。何も起こらない。
目の前の敵はズンズンと進んでくる。
なあ。何がお前の原動力なんだ?
私はどうしたい?目の前のやつを……
殺す。
銃の弾は足りている。
あとは……
『賢明な判断を。』
あいつの声が思い出される。
私は決めたんだ。
私は足を動かす。
もう進むのを止めないと決めたのだから。
「誰だか知らんが、ここで死んでもらう。」
「アンタにできるの?」
私は笑った。
「私が?いや、違うな。後ろのお母さんだ。」
銃声が響いた。
《拳老》の胸に大きな穴が空いていて、赤い液体が垂れていた。
「は?ごふっ。」
目の前の敵は血を吐き、倒れた。
言った。
「アタシは…何も…出来なかったのかな。いつも……」
彼女は息絶えた。
私は少し大きな声で言った。
「そこの労働・社会大臣!最後の一人か?早く避難しろ!」
彼女は叫び返した。
「MerkelはMerkelじゃなかった!」
は?
【Ambre】
準備に数時間かかったのは仕方ない。
だけどそれは意味がある。
「おい!そこの女性。許可は取っていますか。」
巨大な洗濯機の前で誰かに呼び止められた。門兵か。
私は銃を向けた。
銃声。
私は門の中に入っていく。
鉛臭い。
アーチは観光ならよく見てみたかったけど今はそんなじゃない。帰りに見よう。
私は入り口から侵入した。
銃は構えたまま。
人を見かけたら銃を撃つ。
どうせ全員敵だから。
私はDGSEの諜報員だ。組織の方針?というか私のいた班の方針?としては、敵のアジトにいる人物は敵だと思うこと。捕虜の命?それは私たち全員の命に比べたらどっちのほうが大きい?1×1と1×n(nは1以上の数)の違いだ。まあ、最低限捕虜のリストとか作って対処はしてるけどね。
こういうとき、自分と彼らを照らし合わせてしまう。具体的には妹と。彼らにも家族がいるんだろう。彼らにも帰るべき家があって、大切に思っている人がいる。そんなことを考えると、自分と彼らは一緒だ。人間なんだと思い始める。思考が広がる。
これじゃだめだ。
撃つ。とにかく撃つ。考えることはこれからの結果に悪影響を及ぼすからなし。
階段を登って行く。
私は…これでいいのか?
そんな疑念は拭い捨てる。
私はこれでいい。これで妹は救われる。
細い廊下を通っていたとき、いつの間にかシールドを持った重装備の人たちに囲まれていた。
やっと来たか。特殊部隊。意外と遅かったじゃない。
「もう逃げ場はないぞ。投降しろ。」
特殊部隊の一人が言った。
答えは…
「分かりました。」
私は持っていた銃をゆっくりと地面におろし………
左手でホルスターから銃を取り出し、目の前にいた一人の特殊部隊員に突進する。
そして彼の鼻に向かって銃を3発。ヒット。たぶんこれで脳にも銃弾が届いているはず。よしよし。
そこからシールドを奪い取り、銃撃を避ける。
シールド越しに鈍い銃弾が当たる音や、力がかかるが気にしない。
私はベルトに付けていた手榴弾のピンを抜いた。
「リングマジック!受け取れ!」
手榴弾はシールドを越えて特殊部隊員たちの目の前に落ちた。
私はシールドを捨て、進行方向に急いで走った。
爆発音がした。
危機一髪で部屋に入ってセーフ。
危なかった。
「ふう。」
ここで少し水分補給タイム。
喉がカラッカラで倒れてしまいそうだった。
水のペットボトルが蛍光灯に反射してすこしきれいに見えた。
水分補給タイム終了。
部屋を出ると、特殊部隊員の一部が倒れていた。
私はそれを気にせず先を急ぐ。
前途多難な毎日は好きじゃない。
【Tesifa】
「私はもう勇者なんかじゃない。」
目の前の敵はそう言った。
「そっか。」
《炎の勇者》について、名前は聞いたことがあった。
確か《炎の勇者》は《絶滅》の魔王の《四分子》の一人、《懐郷》を単身で討伐したはずだ。
そう考えると、結構敵は恐ろしい…かも。
「行くよ。構えちゃって。」
爆発音のあと、目の前の敵が一気に飛び出す。
なるほど。爆発で推進力をつけたのか。
私は重力操作で後ろに跳び、攻撃をぎりぎりで防いだ。
「構えるのミスったけどどうにかなるもんだね。」
「よく言うね。」
敵は手を構えた。
右手と左手を前に出し、重ねる。真ん中に楕円ができた。
「እሳት ሁሉንም ነገር ይፈጥራል.」
炎が飛び出す。
「なるほど。《炎の勇者》って言うだけあるね。」
Wienの街が炎に包まれる。
そして……炎の中からTesifaが現れる。
「あんま大したことないね。それ…《業火魔術》でしょ?私《非道》だよ?製作者にそれ撃ってどうすんのよ。」
《炎の勇者》は驚いたような顔を見せなかった。
「そうかそうか。ごめんよ。私また間違っちゃったね。」
《炎の勇者》の得意な《አስማት》は何だったっけ?思い出せない。噂で聞いたような気がする。Ato…Ato?
「これはどうかな。ራእዩ በእሳት ነበልባል ተሸፍኗል። ሲኦል ነው።」
彼女が指を鳴らしたあと、周りの建物が爆発した。
一気に視界が炎に包まれる。
「……」
私は“斬って”それを受け止める。
炎が目の前で2つに分断された。
「《爆裂魔法》か。意外とやるじゃん。」
「お気に召したようで何より。じゃあもっとあげようかい?」
「やめといてほしいな。」
「ごめんね。そのお願いは聞けないや。ራእዩ በእሳት ነበልባል ተሸፍኗል። ሲኦል ነው።」
また爆発が起こる。
「バカの一つ覚えかな?何度もやってると覚えちゃうゾ☆もう覚えちゃってるけど。」
「そっかー。じゃあ変えるかな。የጌታ ብርሃን አሁንም ግብዝ ነው።」
彼女が空気に指パッチンしたあと、光が二人を包み込む。
「遅い。」
光がTesifaの目の前で2つに分かれる。
「ハッ。素晴らしいね。どういう原理してるんだろう。」
そのとき、携帯が鳴った。
Emmaの声だ。
「Tesifa!宮殿の頭を切ってちょ!☆」
宮殿?ああ。あそこに頭が見えた。あれかな?
そして、私は親指と薬指と小指を折り曲げた右手を宮殿の頭に向かって横に払った。
大きな音がしたからたぶん当たってるだろう。
「へえ。結構強いんだね。キミ。」
また指が鳴らされる。
「《非道》を名乗ってるほどはあるでしょ?」
爆発はTesifaを飲み込まない。
「へー。自覚あるんだ。」
《炎の勇者》がまた地面を爆発させて距離を詰めてくる。
「もしかして私のこと非道だと思ってる?」
《炎の勇者》の拳を躱して言った。いつから目の前の《አስማተኛ》は《拳士》にジョブチェンジしたんだろう。
「どうしてそう思わないと思うんだい?逆に。」
第二波の光のビッグバン。
「え………。ひどい……。」
私は顔を歪めながら、目の前の光を2つに分ける。
「えっと……なんかごめんよ。」
《炎の勇者》は心底申し訳なさそうに言った。
「そうだな………何かお詫びになるようなこと……私の身の上話でも聞かせてあげようか?」
彼女はなんかこちらの利益にならなそうなことを言った。この拳……絶対強化魔法使ってるな。
「結構です。」
お断りしながら私は後ろへ跳ぶ。
「そっか……ここまでかな。」
彼女が不穏なことを言った。
「ሰዎች እግዚአብሔርን የሚገድል ነገር ፈጥረዋል። ያ ነገር ውሎ አድሮ ሰዎችንም ይገድላል።」
爆発が起きた。
「私はね。好きな人がいたんだ。もう死んだけど。」
【《等しい昼と夜》】
何が起こっているの?これが《مجری جهاد》の力なのかな?《眼》がどんどん倒されていってる。
くそ。Two dragons of Walesはどうした?まさか倒されたの?
そう考えると厳しい。
私が行くしかない?
ありえない。
でも事実なら。
仕方ない。
行く!
私は山を下る決意をした。
数分ほど行くとメインストリートに辿り着いた。
やはり…ドラゴンは全滅。
こんなことだろうと思った。
分かってる。
敵は私には強すぎるって。
「親玉のご登場かな。」
見つかった?!
褐色肌の青いヒジャブ(?)の少女が近づいてくる。
ショットガン持ち?
銃声。
間一髪で避けた。セーフ。
「なかなかやるね。」
彼女は言った。
彼女はショットガンを回してリロードした。
「まずはこれを終わらせようかな。」
私は勝ち目があるように思えない。
【《دماوند》آناهیتا】
ただ毎日が過ぎていくことに嫌気が差していた。
私の仕事は最終兵器。
まあ、ニートよりはマシか。
日々何も起こらずに過ぎていく日々。7角の星の模様。モスク。病院。飲食店。私はこのまちに属せていない。
語ることは騙ること。
人を騙し続けるのか?それとも私は私自身を騙しているのか?
うまく表せない。
彼、خامنهایはそんな私を見てこういった。
「恵まれてるんだね。آناهیتاは。」
恵まれてる?私が?
「この国にはまだ貧困で1日の食事もまともに食べれない人も多くいる。それと君を比べてみたらいいさ。」
そうなのか…
「そうなんだよ。」
私は誰のために戦っているんだろう。
「君が戦っているのはもちろん人のためさ。虐げられている人々のため。そのために人は努力しなければならない。僕はそう考えるね。」
そうなの…か?
「そうさ。君はまだ目的がない。だけど、強引にでも目的を決めてしまえばいいんだ。そうすれば君はやるべきことが見つかる。」
私はその時理解できなかった。
ただ、今ならわかる。
「手伝おうか?なんか敵がいるっぽいじゃん。私なら君のいい道具になれる気がするけどなぁ。どかな?」
彼は私のことを分かってくれた。私の震えを分かってくれた。彼は私の心の内を分かってくれた。私の恐怖を分かってくれたんだ。
だから……私は……
彼を守る。
ふと、山の方を見ると降りてきている一人の女性がいた。下が切られたアリエルのTシャツに下半身だけマーメイドドレス。
「親玉のご登場かな。」
私は銃をリロードして撃った。
かわされた。伊達に親玉やってるだけある。
「なかなかやるね。」
私は言ったあと、ショットガンを回してリロードした。
「まずはこれを終わらせようかな。」
私は彼を守るために頑張るんだ。
自分のためでは決してないと信じる。
銃を撃った。
彼女の前に《眼》が現れ、その銃弾を防いだ。
銃弾が蒸発する。
「もう一回!」
ショットガンを回した。
目の前の《眼》にぶっ放した。
《眼》は倒れた。しかし、多すぎる。
「どうしよっかな。これ。」
そう言うと彼女は唱え始める。
「えーと…خدا بزرگ است. به من قدرتی عطا کن، قدرت اژدها.《部分竜化、羽》」
私のチャドルの開いた背中から黒い翼が生えた。
目の見え方が変化する。
「竜使いでもさ、こっちそれ以上にコミュニケーションできるのよ。」
角は…出さなくていいか。
「私を敵にしたのを反省したほうがいいかもよ。」
《竜人》それが私の種族名だ。
私は生まれつきこうだった。だからこの意味についてよく考えたこともなければ、《竜人》ではない人々はどのように生きてるのかなんてことも考えたことがない。
羽は出し入れ可能だし、角も出せる。なんなら部分竜化もできるし、全体竜化でほぼドラゴンになることもできる。
そんな中途半端な人種。
角出そうか…でも変わるの外見だけなんだよな。
やめておこう。
「《竜人》?!………。」
目の前の女の顔が驚いたような顔になったがすぐもとに戻った。クールぶってるのか。
まあ。それを崩すのもいいんだけどさ。
「何してるんだ?آناهیتا…」
後ろからArbyがやってきた。私の庇護者♡
「Anahitaでいいよん。」
「ああ。じゃあAnahita、それが……僕たちを殺そうとしていた…『敵』なの?」
私は確証がある、いや、確信している。
「なんか禍々しい笛持ってんじゃん。気が付かない?」
そう。目の前のマーメイドくんは笛を持っている。
《አስማት ኃይል》がこもった。
「それはつまり…《魔具》ってこと?」
やっぱりこの子…勘がいい。
「なんか変な捉え方をされたような気がしたけど僕のほうが年上な気がする…」
「ちなみに私は14歳だよー。」
「やっぱ年下だ。」
緊迫感のない会話に『敵』が戸惑っているのがわかる。そうだよね。変だよね。命の刈り取り合いの間にこんな話…聞かされると困っちゃうよね。
だけどさ、私はそれを求めてるんだぜ。
「《ブレス》はちょっと乙女には恥ずかしいから《声》だけ出させてもらうよ。」
《声》とは、ドラゴンの特有の会話方法で、使い方によっては…
「寝返らせる!」
私は言葉を発す。人とは違う言葉を。
「އަޅުގަނޑަށް މިއަށްވުރެ ރަނގަޅު ހައްލެއް ހުށަހެޅިދާނެ. ޕްލީޒް ބިލީވް މީ... އަހަރެން ގަބޫލުކުރާނަންތަ؟」
咆哮がした。
オーケー。応えてくれたってことは大丈夫だってことだ。
「これで戦況は逆転だね?親玉さん?」
《眼》が味方についた。
「ひっ。」
やっと目の前のマーメイドが顔を変えてくれた。
「おしまいだね。」
敵は動揺し始めた。
「後ろ見たほうがいいよ。」
【《等しい昼と夜》】
私はいつも誰かに尽くしてきた。困っている人を見かけたら誰かを助けた。
だけど、ある日それが苦痛になった。
どんだけ助けても誰も助けてくれなかった。
私はひとりぼっちになった。
誰か…助けて欲しかった。
通り過ぎる人々は目をそらすばかりで私を救ってくれようとはしなかった。
誰かが…誰かが欲しかった。
そんなとき、一人の男が声をかけてくれた。
「何ドルだい?」
私は誰かを求めてた。
誰かを。
私は…私を助けようとした人を…
「殺してやる。」
いつもそうだ。助ける人なんて利益を求めるんだ。私もそうだった。助けることで誰かに求めていたんだ。助けてくれることを!
「間違ってる!」
誰かが言った。それは昔の声かそれとも今の声か…
間違ってる?それはどうして?
「君は犠牲にされてるんだ。社会に。」
なぜそんなことがわかるの?
「僕の近くの人もそうだったからさ。」
だからなに?
「助ける。たとえ殺されようとも。」
やってみろ。
「僕は君の世界を否定しない。」
右頬に痛みがあった。
いつの間にか後ろに来ていたターゲットに殴られていた。
私は…受け身を取らず、背中から地面に落ちた。
大きく頭を打った…意識が朦朧としてくる。
そんな中、思い出したのは《彼》の優しい笑顔だった。《彼》の…
暗転。
【Arby】
「僕はまだ人を殺せそうにない。」
僕にはまだその勇気がない。だから、Anhitaが敵を殺す前に殴った。
「そっか。それでこそ庇護者って感じがするね。」
彼女は笑った。
「で?その子はどうするの?」
「警察にでも突き出すかな。」
「必要なら私が処理しとくけど。」
「殺す…んだろ。その口調だと。」
「何?救いたいの?」
「そう。」
救いたい。だって相手は人間だから。
「さっすが、庇護者だね。」
「さっきから言ってるけど庇護者って何?」
「Arby Glenwoodのこと。」
「僕じゃん。」
「君じゃん。」
「……。」
「まあいっか。さて、分かったよ。私は引き下がるとしようかな。」
「それならよかった。」
「といいつつ…」
「嘘だろ。」
「ウソ。」
「嘘かよ。」
「大丈夫?Arby?」
Amyたちがやってきたみたいだ。
「えっとさ。私は行くけど…大丈夫なんだね?」
Anahitaが言った。
「ああ。」
「よかった。じゃあ行くね。また…今度会えたら…喜んでね。」
そう言ったあと、彼女はCalicoの出口に向かって歩いていった。
僕がまばたきをしたらもういなくなっていた。
【Tesifa】
体が焼ける匂いがする。痛い熱い痛い熱い痛い熱い
「なんてことが起こるとでも思った?」
私は炎のなかに立っていた。実際には炎を分けた真ん中に立っていた。
「なるほど。炎でも切るわけか。面白いね。つまりあれかな?物質を切る?それとも分子を切るのかな?」
《炎の勇者》はさも予想していたように言った。
「違うね。私の《አስማት》…いや、《断絶魔法》は“原子と原子を切る”んだ。つまり、何でも切れるってことさ。」
彼女は驚いた顔をして、
「でも、万能なわけじゃないんだろう?」
彼女が聞いた。彼女がまた建物を爆発させる。
「君が思ってるよりは万能だと思うよ。だって電子と原子核を切り離すこともできるんだからね。」
私は炎を切り裂きながら応える。
「わお。すごいね。それは。」
彼女はすこししかめっ面で言った。
「思ってること言っちゃっていいかな。私が何で《炎の勇者》って言われてるか知ってる?」
彼女が突然聞いた。彼女は炎の剣を生み出して、斬りかかってくる。いつから目の前の敵は《剣士》にジョブチェンジしたのだろう。
「え?爆発させるからじゃないの?」
私はその斬撃をきれいに受け流してから言った。
「だったら《懐郷》を倒せた意味がわからないじゃないか?《懐郷》は爆発耐性があるのは周知の事実だ。」
彼女は炎の剣をぶん投げてきた。
「つまり?」
私は炎の剣を真っ二つにした。
「君はもう私の手のなかにある。」
爆発が起きた。
「?」
私は簡単に炎を斬り裂いた。
周りも爆発が起きているみたいだが…
「爆発の攻撃は私だけにしか起こっていない?他は全部…」
私は少し驚いた。
「そう。他は全部見た目だけ。」
爆発の中心だから煙が視界を遮っている。
「見えづらい…」
ふと、喉が痛くなった。
「ゲホッゲホッ」
咳き込む。
「血?」
まさか……
「《核爆魔法》…」
彼女の少しおどけたような声が聞こえた。
「だーいせーかーい。」
《核爆魔法》…Puを生み出し、それを爆発させる《አስማት》。
頭に手をやる。
髪が…数本抜けた。
「そういうことか。」
私は言った。
「死にゆく間際な君に聞いてもらおうかな。私の身の上話♡」
「気持ち悪い。」
「私ね。好きな人がいたんだ。」
彼女は私を無視して話し始めた。
「続けんのかよ。」
私は立っていられなくなってそこにあったレンガに座った。
「私はある小さな村の出身でね。የድሮተራራ山脈の麓にある村だよ。」
「ጥቁርመኸር村?《画定の勇者》の伝説で有名な?」
「そう!知ってるじゃないか。で、私はそこで幸せに暮らしてた。幼馴染の男の子がいてね。とっっっても仲良くて、いつかは結婚しようと思ってた。思ってた……のに…」
「《懐郷》。」
「そう。私は…」
【《炎の勇者》】
私は彼と一緒に八百屋さんに行っていたんだ。八百屋さんは優しくてね、いっつも黒ピーマンを2つおまけしてくれた。私はピーマンの熟したやつが甘くて好きで、ただそれは日持ちしないからレアだったけど……まあそれは置いといて。
その時、八百屋のおっちゃんにお使いを頼まれたんだ。
「なあ。〇〇、農家の✕✕から今日の分の赤ナスもらってきてくんねえか?」
✕✕さんは村の少し外に住んでいて、ちょっと怖いお姉さんだったけど私は好きだった。
幼馴染の彼はすこし病気がちだったからいつも元気で走るのが早い私が頼まれたんだろう。
私は「じゃあ行ってくるね!」って言って飛び出して行ったよ。
彼は「行ってらっしゃい。気をつけてね。」と行って見送ってくれた。これが私が彼を見た最後になった。
私は1 ሰዓት走ってやっと✕✕さんの農場に着いた。
前はもっと短い時間で行けたのに…衰えたかな。
✕✕さんは私を見ると声をかけてきた。
「ああ。〇〇か。お使いか?」
この人が笑うとめっちゃ綺麗なのは私しか知らない。
「うん!そうだよ!」
この人は元々冒険者で、左手を失ったことで地元に帰ってきて農業を始めたことを噂で知った。
「そりゃ。よかった。赤ナスを《冷却魔法》で冷やすのも《አስማት ኃይል》的に大変だからな。ほい。赤ナス。」
この人はいつも《インベントリポーチインベントリポーチ》で野菜をいっぱい渡してきてくれるから楽なんだよな。
「ありがとう!」
「気をつけて帰れよ。」
彼女はいつもそっけない。
私は山を下り、帰ることにした。
その時、村の方から爆発音がした。
火が上がっている。
私は走った。走って走って走った。
途中で唾液が血のような味がしてきて、頭が痛くなった。お腹が突き刺してきた。
でも走った。
村に戻ると、クレーターができていた。
彼は…逃げたのかな。逃げれたかな。
私はクレーターの中心で佇む人物を見た。
彼はシルクハットを被った優男だった。
そして彼は…幼馴染の上に立っていた。
吐きそうになった。幼馴染は動かなかった。
「あれ。まだいらっしゃったのですか。あらかた駆除したはずなのですが…失敬。」
彼はこちらを向いてシルクハットを取ってお辞儀をした。
「私は《絶滅》の魔王の《四分子》の一角。《懐郷》と申します。」
なんで?なんで?なんでこんな時に《勇者》は来てくれないの?なんで幼馴染は動かないの?
私の頭に思い浮かんだのは『死』という文字だった。
「そんなに怯えなくてもいいですよ。また皆さんとは会えるのですから。大丈夫。世界はあなたの味方です。」
そう言って彼は近づいてきた。
《勇者》は来ない。こんな時に来てくれない。
《勇者》伝説なんてウソっぱちなのかも。
それとも私がメルヘンなだけ?
なら…
「私が《勇者》になればいい。」
その時、村にきのこ雲が発生した。
【《非道》の魔王】
「そっ…か…」
私は肺の痛みをこらえて声を出した。
「そう…思い出しただけで悲しくなってきたな。」
視界の煙は消えない。
「それでも…私はあんたの世界を否定する。」
そう言えたのは私が彼女を許せなかったから…だと思う。
「今のお前に何ができる?」
彼女は嘲笑した。
「私がこんなことで死ぬと思っているのか?この《魔王》が?」
誰も分からない。だけど私は…
「は?」
彼女は目を見開いた。
「言っただろ?私の《አስማት》は…」
「キルダケジャナイ?」
「そう。」
きのこ雲が霧散する。
「お前は寝てろ。」
私は彼女を蹴り飛ばした。
彼女は建物に頭をぶつけて動かなくなった。
「これで終わり?」
【Ambre】
私はやっとここについた。
何時間経ったか分からない。だけど、この時のために…私は……
私は扉を開けた。
「やあ。こんにちは。コーヒーと紅茶どちらがいいかな?」
そこにあったのは虚飾の空間だった。
戦時中とは思えないほど豪華で高価そうな家具に、あの小皿に入った茶葉や豆も上等だろう。
「なんだい?黙っちゃって。席に着いてくれて構わないよ。」
目の前の彼はそう言った。
信じられなかった。私は侵入者で敵のはずだ。なぜこんなにも“客”のように振る舞うのだろう。
「ああ。名乗り忘れていたね。僕はAndreas Clemmen。《Hoffnung für die Zukunft》という組織の総統をしているよ。」
私は気づくと彼に近づき、銃を突きつけていた。
「なんで殺した…」
彼は真面目な顔になって言った。
「僕らが殺されないようにするためだよ。」
私は意味がとっさにわからなかった。
「奴らは僕らの居場所を奪ったんだ。仕事も…お金も…幸せも…《France》の人とは状況が違うけどね。」
彼は続ける。
「《Magyarország》や、《Polska》からの低賃金労働者が増えた。الحرب الأهلية السوريةの影響で《سوريا》からの移民も増えた……僕はある工場で働いてたんだ。だけどね、ある日、僕や仲間たちは解雇された。理由は単純、低賃金労働者のほうがコストパフォーマンスが良いから。それで、僕は始めてホームレス生活ってものを味わった。あんな苦痛を…ほかの人に味わってほしくない。だから僕は《組織》を作った。ここは僕らの国だ。誰にも邪魔されてはいけない。」
「なんで……なんでそんなこと…排斥された移民たちのことを考えたことはあった?彼らはもしかしたら国に戻れずに苦しんでいるのかもしれないのに。考えたらその苦しみは分かるものじゃないの?」
「考えたさ……何度も何度もね。罪の意識に苛まれることもあった。だけどね……《Deutschland》が作られた経緯を知っているかい?………僕らはこの国を守る義務がある。ここは僕らの国だ。」
「………。」
「ねえ。君はどこ出身だい?」
「Strasbourg」
「Strasbourgか……」
「私が聞きたかったのは……なんで私の…私の家族を巻き込む必要があったのかって…ことだよ…」
「え?僕はStrasbourgには一切関与してないよ。」
「は?」
私はわからなかった。
「Strasbourgで火事があったのは知ってる。攻撃を受けたのも知ってる。だけどね。あれは…Nazisがやりそうなことだよ。焦土作戦だね。確かあそこにいた将軍は…Louis Leclercじゃなかったかな?」
「嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。」
信じられなかった。信じてしまったらここで殺してしまった人々はどうなるんだ?
彼は言った。
「僕を殺すんだ。殺したら君の復讐は…完遂とはいかないけど足がかりにはなる。手伝ってあげるよ。僕ができることならね。」
私は……何をすればいいのかわからなかった。
私は引き金を引いていた。
銃声。
窓ガラスが割れる音。
落ちていく。彼は落ちていった。
私は虚飾の部屋で一人になった。
【《دكتور نور》】
誰も知らない《پاکستان》のとある街で。
「まったく。君は少し周りを見たほうがいい。」
Operation Neptune Spearは終わった。
「ああ。すまない。」
Blackhawk2機は木っ端微塵に破壊されていた。
「こんな警戒を厳重にしていると気付かれるのは当然だな。」
彼は髭を撫でた。
「ああ。本当にそうだな。まあ、責任は私にもあるが…」
「そんな気に病まなくていいさ。壊滅させたんだから。やっぱウチのNo.2は素晴らしいね。一人で《U.S.》の特殊部隊を全滅させるんだから。」
「……本業は医者なのだがね。」
彼は笑った。
「で?そこの軍用犬はどうする?飼うか?かわいいし。」
「はぁ…まったく。君にはいつも驚かされるよ。」
私は背中の《建材の触手》6本を建材に戻しながら言った。
「次はどうするんだ?اسامه?何か当てはあるのか?」
彼は私がそう聞くと笑って言った。
「いい質問だ。君に頼る。」
………はあ。
「だって君は」
その言葉の先は分かっている。
君は《مجری جهاد》なのだからね。
第三反復は2011年を舞台にしているため、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。




