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The Chaos Effect  作者: Michael Lange
第三反復 2011年
38/43

第三反復 See You in the Morning 仮説5 

私はこの危機から逃げるには走るしかない。

だから、走る。それだけだけどとても疲れるのは目に見えている。自分の『記憶』が取り戻せるかは分からない。私はBaileyみたいになるのかな?と考えてみる。なら私のpurposeはなんだ?

そういえばArbyは大丈夫なのだろうか。彼は私たちの最後尾にいたから逃げ遅れたのではないだろうか。そしてCarlosとAbyも見失った。ここにいるのは私と

「ここからどうする?わたし…何もできないけど。」

Sidだけ。

「私も考え中。」

「みんなを助けに行く?」

「だめだよ。私たちにできることは限られてる。」

私は合理的な性格というのを前面に押し出す人だ。助けに行くというのはメリットよりもリスクのほうが大きい。やめたほうがいい。

「まずは町を出て警察を呼ぼう。私は実は免許ないけど車の運転ができる。」

「正気?!」

「仕方ないじゃん!それしか方法がないんだから!」

「まあ…そっか…」

Sidneyは考え込み始めた。

車でどこまでいけばいいのか。近くのポリスボックスは一体どこなんだ…

「ねえ。Amy。」

Sidneyが口を開いた。

「どうしたの?」

「今スマホで調べたんだけど、近くの警察署はBarstowにあるっぽい。」

「そこはここからどれくらい?」

「えーっと…」

SidneyがGoogle Mapを操作している。

「分かった。徒歩で4時間、車で19分。」

「どういう差?分かんないけどまずは車を探さないとね。」

「そうだね。」

「……」

「で?どうする?」

「……」

「?」

「どうしよっか。」

「もしかして…分かんないの?あのAmy Quitmanが?」

私は頷いた。

「まずは…車探そっか。」

「同意します。」

8月22日午後6時42分(Calico時間)


私は失敗が嫌いだ。

去年に続き今回も失敗したら私は社会的に終わりだし、メンタル的にも終わりだ。

「クソ。」

私はメインストリートの東の山の中腹を歩いていた。

敵は下の町にいるからここは見晴らしが良くて便利だ。しかも、笛の音も下で容易に聞こえる。

「まずい。」

私はポケットに入れていたエナジードリンクを飲み干した。

身体に染み込んでいく。

「ふぅ。」

そろそろ移動したほうがいいかもしれない。

トドメを刺さなければ。

もう彼らはこの町から出られない。廃坑とともに幽霊になる。

ようこそ。ドラゴンと銀鉱山の町、Calico Ghost Townへ。ドラゴンは観光名所じゃないけどこれからそうなるはずだ。

8月22日午後6時44分(Calico時間)


「あの日のこと覚えてるっすか?」

「ああ。覚えてる。Tucsonで初めて会ったときのことだろ。忘れるはずない。」

「よかった。それ聞いて安心っすよ。じゃあ。」

Abyは立ち上がった。

「行くっすね。さよなら。Charlie。」

「行くってどこへだよ。おい!Aby」

俺は目を開けた。夢か。

手を動かすと隣に感触があった。

「Aby…しっかりしろ!起きろ!」

Abyは目を少し動かしてから目を開いた。

「Charlie…っすね。いたたぁ。」

Abyが顔を歪めた。

「どうした?」

「枝が…刺さってるっす。あ!抜けた。」

どうやら深くは刺さっていなかったようだ。

「よかった。」

「ほんとっすよ。はあ」

俺達はあのドラゴンっぽいやつから逃げたあと、少し走って汽車の線路の橋の下に隠れて休んでいた(というよりも転げ落ちて気絶していた)。

「まずはどうしようか。この町から出る前に、Arbyたちを助けないと…あいついっつも無理するからな…」

「そうなんすか?」

「ああ。いっっっつもだよ。」

Abyは知らないだろうが、Arbyはいつも無理して怪我して帰ってくる。前にStockbridgeに行ったときもそうだった。猫を助けて擦り傷まみれで帰ってきたり…

「あいつは…あいつはそう思ってないかもしれないけど…あいつは俺に似てるんだ。だから…助けたい……いいか?」

Abyはすぐ、微笑んで言った。

「それ提案してくれなかったら怒ってたっす。」

「よし!計画を立てよう。」

「そっすね!なんか昔みたいっす!」

そうだなと思う。昔もこんな感じで2人で秘密に計画立てて万引きしたり…ヤク吸ったり…そのことは聞かないでくれ。

「まずは…」

「まずはさっきのところに戻るっすよ。こっそりね。」

「あ…ああ…うん。そうしよう。」

Abyは俺よりも頭がいいし、機転が利く。実は俺よりもArbyににているような気がするような…血が繋がってないのに?!

「で?まずは三人を見つけましょう。たしか二人女子はArbyくんとは別に行動してるんじゃなかったんすかね。」

「ああ。そうだったな。」

「だったらまずは二人を探すべきだと思うっす。二人なら、たぶん街を出ようとするし、きっとArbyくんも同じことをするっすよ。手数?を増やしたほうがいいと思うっす。」

「ああ。同意だ。」

やっぱりできるなー。この人。

「おっけーっす。じゃああとは…」

「ドラゴン…か。」

ドラゴンは厄介な気がするな。

「ドラゴンは…そうっすね…どうしましょっか。」

「その時になったら考える…とか。」

「あーー。うん…そうっすね。そうしましょ。」

「じゃあ。早く向かおう。」

「作戦開始っす!」

Abyは手をあげた。

「そんなに易しくない気がするがな。」

俺はそう言いながら彼女と手を合わせ、ハイタッチした。

軽い接触音がした。

8月22日午後6時47分(Calico時間)


頭がまだガンガンする。

私が半竜人じゃなかったらどうなってたか。

2本のショットガンのうち1本失った。

私は残りのショットガンを片手で回して弾を装填する。

そのまま銃を撃った。

そこにいた《(ዓይን)》が倒れる音がした。

私はさっきの《彼》の言葉を頭のなかで復唱していた。

「もしかして…面と向かって人を殺したことがないんじゃないか?」

「……手が震えてますよ。それは…まだ迷ってるから…なんじゃないですか?」

なぜだろう。ただの私を騙そうとした言葉のはずなのに、まだ私の心のなかに残っていて、何度も私は自問自答している。

果たしてそうなのか?私は迷っているのか?

私は今まで上の指示に従ってきただけだった。そして、私が今までしてきたことは、暗殺のような一対一で殺すことではなく、いわば、虐殺だった。

だから、こうやって目と目を合わせて、相手の話を聞いたことはなかった。

もしかしたら今まで殺してきた人々も彼と同じだったのか?だったら私はなんなんだ?人間ってのは本来こういう生き物なのか?分からない分からない分からない。なら、私は……彼を殺すべきなのか?

その時、私の視界にあの少年がみえた。茶髪で少し大人っぽい人物。

「見つけた。」

私は銃を彼に向けた。

彼はこちらを向いて何かを叫んだが…

肉と骨が砕ける音が夜の砂漠地帯に響いた。

8月22日午後6時57分(Calico時間)


だから、私は彼女に尋ねたんだ。

「Nantucketに彼氏がいるのってさ。嘘だよね。」

彼女は驚いたような顔をしてから言った。

「あ~あ。なんでバレちゃったかな〜。」

彼女はこちらから目をそらし、回れ右して歩きながら言った。

「そうだよ。嘘だよ。」

彼女は彼女のきれいなポニーテールを見せながら言った。

「私に彼氏なんかいない。」

私は唖然とした。一体何のために…

それで気づいたんだ。彼女がそんなことをした意味を…

「好きな人がいる…の?」

彼女は少し止まって、考えるような素振りをしてから言った。

「うん。そうだよ。」

私は少し戸惑った。

彼氏はいない…なら、彼女の好きな人は分かっていたから。

「そっか。」

私は平静を装うことにした。

「そうだよ。」

彼女と私はまた歩き始める。

しかし、彼女の歩幅が大きくて、遠ざかっていくような気がした。

そして、メインストリートに到着した。

「なんか久しぶりな気がするな。」

私は言った。

彼女は何も言わなかった。

私は、彼女の意図について考えていた。

彼女は私に何をしてほしいのだろう。

わからない。彼女がまったくわからなくなってきた。

彼女が口を開いた。

「あれって…CarlosとAbyじゃない?」

私も二人を目にとらえたが…

「まずい!Aby!後ろ!」

Abyの後ろには白い竜が口を開けていて…

肉と骨が砕ける音が夜の砂漠地帯に響いた。

8月22日午後6時57分(Calico時間)


黒い影。

まさかこうなるなんて思っていなかったというパターンなセリフ。

目の前には白い竜がいた。

「嘘だろ。」

咆哮があがる。

「やばいっ……すね。」

「やばい…な。」

汽車の線路の橋の下から出て、メインストリートに行き、Calicoの入り口で皆を待とうとしていた矢先…これだ。

建物の陰から現れたのに気付かず、1回目の咆哮でやっと気付いた。

間の距離は約15m。

遠いようで近い。

俺達はじりじりとゆっくり下がっていく。

相手は微動だにしないが、こちらを向いていて、視線が合っている。

視線は離さない。離したらなんとなく危険な気がしたからだ。

「どうする?Aby……」

俺が囁いたら彼女はうつむいた。何も答えない。

そして…彼女は微笑んだ。

「私が行くっす。」

「行くってどこへだよ。」

彼女は前に一歩踏み出した。

「何して……あ」

俺は気づいた。彼女はおとりになって時間を稼ごうとしているのだ。

「だめだ!やめろ!Aby!よせ!」

俺はドラゴンの前だということを忘れて叫んだ。

そして、ドラゴンが咆哮をあげた。

彼女は振り返って俺にこう告げた。

「あの日のこと覚えてるっすか?」

気絶したときと同じ言葉。

俺の口は夢と同じ言葉を口走っていた。

「ああ…覚えて………Tucsonで初めて会ったときのことだろ……忘れるはずない。」

俺はいつしか涙が出ていた。

「だから……やめろ……」

彼女は笑いながら言った。昔…コーン畑に2人で潜り込んだときと同じ笑い方…

「よかった。それ聞いて安心っすよ。じゃあ。」

彼女は昔と同じ…だけど昔とは決定的に違う声で陽気に言った。

「またね。」

ドラゴンは口を開けた。

肉と骨が砕ける音が夜の砂漠地帯に響いた。

8月22日午後6時57分(Calico時間)


これは私と彼の昔話っす。

たしか…私が28歳だから…わあ。もう17年も経ってたんすね。

私は実は《México(メキシコ)》出身っす。

今思い出せる中で一番古い記憶は、父と母と兄と私で小さな家の食卓を囲んだ記憶で、幸せだったという実感があるっす。

でも、その幸せは長くは続かなかった記憶がある。

たしか理由は貧困だったっす。

で、私たちは《U.S.(アメリカ合衆国)》に逃げようとした。

新天地を求めて。

で、私はこのとき10歳で、まだよく物事をつかめていなかった記憶がある。

そのときの、最悪だった記憶は、銃の連射音から始まる。

Operation(あんまり話したくない) Safeguard(あの計画)

それは、《México(メキシコ)》と《U.S.(アメリカ合衆国)》の間の国境警備隊が、Nogalesに大量に動員された作戦名。

そして、それは私の家族にも襲いかかった。

私が思い出せるのはあのぬめぬめとした赤い液体。

そして、男の怒号。

「侵略者どもは死ね!」

銃声はまだ聞こえている。

父は倒れて動かなくなった。

私と兄と母は、そこを走って逃げる。

銃声のあと、兄の胸に穴があいた。

「Abi…g…」

倒れる音がした。

母が嘆いた。しかし、私たちは走り続ける。

私の左手にはまだ液体がこびりついている。

母は私の右手を離さない。

銃声はまだ響いている。

私たちは息が切れるまで走り続けた。

いつの間にか私たちは国境を越えていた。

ある建物の裏で、母が言った。

「お父さんとDaveは死んだのよ。でも、これから、また生きてかなきゃならないの…お願い…あなただけは……いなくならないで……お願い……」

その時、家族が倒れたことと『死』とが結びついた。

そこからの生活は大変で、2ヶ月後、やっと《仲介人》を通じて住むための家を見つけた。

ここで私たちはまた生き続けるのだ。

そのはずだった。

ある日、私が帰ったときに…全部終わった。

私は逃げた。まだあの臭いが鼻に染み付いている。

いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。

いつも私が帰ると母がぼろぼろな意味を知っていた。そんな日に限って男が家に来ていたのも。

私はどうすればいいんだ?

母が死んだ。

私のために生活費を稼ぎ、家を借りるために。

私は走った。

目から液体がこぼれてきた。

私は一人ぼっちになった。

息が切れてきた。

でもまだ走る。

きな臭い味がした。

脚がもう動かない。

足がもつれて私は倒れた。

痛い痛い痛い。

私は路地裏でそこから数十分間ぼーっと座っていた。

家族で近くの森へ行った時のことを思い出した。

父と母と兄の笑顔を思い出した。

笑顔がだんだん思い出せなくなっていく。

全て終わったんだ。

その時、目の前に一人の同い年くらいの男の子が見えた。

その男の子は、私に気づくと近づいてきた。

「なあ…どうしたんだ?」

男の子は言った。

「泣くエネルギー使うくらいなら笑えよ。」

男の子の後ろから眼鏡をかけためちゃくちゃ美人の、7年生くらいの女子が追いかけてきた。

「はぁ。ねえ。Carlos。早いよ。追いついた。あれ?誰?この子。」

彼女は息絶え絶えにやってきた。

「なんか泣いてたから。気になって。」

「そっか…家来る?」

彼女は笑った。

どうしてか分からないけれど私は頷いた。

それからは、彼らの家に住むことになった。

彼らは4人家族で、姉はTaylor、男の子はCarlosといった。

どこから私が誰なのか、私の住んでいた場所などが分かったのか、翌週には母の葬式が行われた。

Carlosと名乗った男の子は、その日はずっと手をつないでいてくれた。

そこからいろんな事があった。

学校というものに行かせてもらえるようになったし、様々な服も買ってもらったし、食べ物もいっぱい食べた。

だけど、私は“本当の”家族のことを考えない日はない。

彼らの太陽のような明るい笑顔も…写真はないけれど、どんな顔だったかずっと忘れない。

そんな感じっす。

私はCarlosに救われた。だから………

今日はその優しさに応える番だ。


世界がスローモーションに見える。

そんなに嫌そうな顔しないでほしいっす。

大丈夫だから。大丈夫。

私はもういいんすよ。

だから泣かないでくださいよ。こっちまで悲しくなるじゃないっすか。

私の目から涙がこぼれてきた。

笑ってくださいよ!

それが私の望みなんすよー!


泣くエネルギー使うくらいなら笑えっすよ。

肉と骨が砕ける音が夜の砂漠地帯に響いた。

8月22日午後6時57分(Calico時間)

第三反復は2011年を舞台にしているため、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。

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