第三反復 See You in the Morning 仮説4
「始めるよ。《裁判》を」
銃声が響いた。
《眼》が音を立てて倒れた。
そこで銃を撃った彼女は言った。
「あんたは逃げていいよ。」
「いい景色があるんだ。お前らに見せたいとびきりのやつがな。」
叔父がまた何か言っている。
僕たちはモーテルに戻ってきたばっかりだと言うのに。坑道に潜ったあと、僕らは汽車に乗って、山登りをしてから帰ってきた。
「何?」
「いいとこだ!」
「ほんとにそうなんすよ。一度くらいはCharlieを信じてあげたらどうっすか?こんなんだけどたまにいいこと思いつくんすよ。」
Abyも叔父を庇うらしい。
「いいんじゃない?行こうよ。」
Amyが言うんなら…
「うん。行きたい。」
部屋にかかっている時計を見た。午後6時ちょっとすぎ、まだ夕食には早すぎる。ちょっと外に出てもいいかもしれない。
「Sidneyはどう思う?」
そうだ。Sidneyに聞いてなかった。
「いいと思うよ。行こう!」
これで全員賛成かな?
叔父が言った。
「山登りするから用意しとけよー。」
また山登り?!
「また山登り?!」
Amyが声に出した…Amyとは気が合う…気がする。
8月22日午後6時06分(Calico時間)
ペンギンに似た鳴き声がした。
しかしここは砂漠のど真ん中だ。
ペンギンがいるはずがない。であれば何だ?
論理的に考える…父の教えだ。
どんなときも論理的に考えろ。そうすれば時間がゆっくりになってより考えられる。
まずはどのようなことが考えられる?
1:近くの動物園かなんかから逃げ出した。
これは違う。一番近くのペンギンのいる水族館はLos AngelesのAquarium of the Pacificだ。
あまりにも遠すぎる。
2:飼われていた個体が脱走した。
これは…ありそう。ただ、砂漠地帯だから難しいのではないだろうか。
3:ペンギンなんかではなく全く違う物。
そうだった場合…
3だと仮定するべきだろう。
……逃げるか。
俺は観光客だ。Lincoln Cityから3泊で観光に来ている。
まずは店を出よう。
フライドピクルスは…食べちゃえ。
俺はフライドピクルスにかぶりついた。
また声がした。近づいてきてる。店主は救えるか…自分優先だ。
会計を済ませ、店を出る。
「やっぱ嫌な予感がするな。」
空は暗くなってきていた。大都市が遠いから星がきれいに見える。
ふいに後ろに何か通った気がした。
振り向いたが何もいない。
一旦深呼吸をして落ち着こう。
何も起きない。きっと何も起きない。
Alex Jesupはステルスモードで歩いていく。
8月22日午後6時06分(Calico時間)
「私が…迷っている?そんなこと…」
そこにあったのは暗闇だった。いや、完全な暗闇ではない。
「みんな、よく頑張ったな。到着だ!」
Calicoサインのある山の中腹(?)に到着した。
もう太陽は沈みきっている。
「ここが…この町で一番好きな景色何だ。」
叔父が言った。
「真っ暗闇だけど。」
僕は目が慣れてないからあまり周りが見えない。
「でも、大自然はとても近くにある…だろ。」
叔父は
「ほんと。すごいね。」
Sidneyが言った。
ようやく目が慣れてきた。
目の前に広がるのは一面の荒野と山、そして遠くに見えるのは大都市のきらびやかなネオン…
世界全体を見たような気持ちにさせられる。
近くには西部劇風の建物たち、そして大自然……
「すごい。」
僕が言うと叔父は笑って僕の頭をわしゃわしゃした。
「いいだろ。西海岸も。」
「何で西海岸の話?!」
「なんとなく…?」
「へえ」
「まあ、なんとなくだ!」
「ふーん」
「いいだろ?」
「……めっちゃいい。」
「だろー」
僕らは気づいていなかった。後ろから何かが迫っていることに。
8月22日午後6時32分(Calico時間)
動き出した。《مجری جهاد》が。
意図は不明。真偽も不明。
正体も不明。それどころかどんな組織なのかも不明
私で勝てるかももちろん不明。
でも、私は目的を果たすしかない。
相手の目的はもちろんArby Glenwoodだろう。それが分かっている時点で十分だろう。
あと必要なのは…なんだ?ああ、そうだ。勇気?
???
まあ、いっか。
「さ・て・と、そろそろ幕開けかな?《equinox》?」
「かもね。」
「で?大丈夫そうなの?準備できた?心決まった?死んだら元も子もないぞ☆」
「わかってる。大丈夫。」
「わかってるんならよろしい!」
「で?本当に。いるの?《مجری جهاد》が。」
「うんうん。マジだよ。」
「私。死ぬ?」
「頑張れ!応援してるよ!」
「……。」
《equinox》は嫌な予感がものすごくした。
8月22日午後6時34分(Calico時間)
僕らは絶景を見たあと、山を下っている最中だった…
「なにこれ…何かの燃えかす?」
Amyが何かに気づいた。
「まあ、あるかもな。そういうの。ここ砂漠地帯だからな。」
叔父によるとそれはありがちらしい。
「へえ。」
「ああ。そうだよ。」
高いソの音がした。
その瞬間何を思ったかAmyが叫んだ。
「逃げて!」
目の前に赤い四足歩行の怪物が現れた。
Y Ddraig Goch。
Walesの2頭の竜の一角。
それは小さく口を開けて…
銃声が響いた。
ショットガンだろう。重い音だ。
Y Ddraig Gochに弾丸が命中し、それがひるんだすきに横から階段を駆け下りる。
Y Ddraig Gochには命中しているが、致命傷とはなっていないようだ。
全員が駆け下りている最中に後ろからまた追ってきている。
そこにまた銃声がした。
今度はそれの角をかすった。
だが、それはまだ追ってきている。
「どうすればいいっすか!?」
「いいから逃げろ!」
速い。そして…
「飛んだ?!」
突然辺りが暗くなった。それは…影だったのだ。
「やばい!」
目の前に顎が現れる。先回りされた。
「逃げろ!」
誰かが叫んだ。知らない女性の声。
また銃声がした。
目眩がした。体が階段を転がっていっている気がする。頭がキーンとした音で満たされている。銃が近くで轟いたためだろう。
Y Ddraig Gochは倒れていた。頭を打ち抜かれている。そのうえに人が立っていた。
目の前にいたのは15、6歳かと思われる褐色の肌の少女。スリットスカート構造をした青いチャドルを着ていて、見た目にそぐわないほど大きなショットガンを2つ持ちしている。M1887か。
「立って!」
その人は手を差し伸べてきた。
僕はその手を取った。
「大丈夫?」
何訛りか分からない、しかしどことなく不自然な英語。
「脈はあるし瞳も動いてる。」
耳が聞こえづらい。
「他の…みんなは?」
「うわっ喋った。生きてるね。良かった。」
そう言って彼女は僕を起こし、座らせた。
「あんたは…なんでもない。今言おうとしてたことは忘れて。」
「?」
そう言って彼女は僕に銃を向けた。
「私はあんたを殺さなきゃならない。」
「は?」
一瞬思考が止まった。
「分かってるでしょ?私の意思じゃない。上の指示だよ。私はただの公務員だから生きていくためには…指示に従うしかない。」
彼女の手は震えている。銃の照準が定まっていない。
落ち着け。パニクるな。何か絶対対処する方法がある。よし、考えた。一か八か。
「もしかして…面と向かって人を殺したことがないんじゃないか?」
言ってしまったッッッ
「は?」
怖い…でも、言うしかない。
「……手が震えてますよ。それは…まだ迷ってるから…なんじゃないですか?」
「私が…迷っている?そんなこと…」
僕はゆっくりと立ち上がる。そしてそっと手をショットガンに近づける。
「僕はまだ死にたくない。だから…救ってほしいんだ。」
「……」
僕はショットガンに触れた。
「だから…信じてほしい…」
僕はそっとショットガンを掴んだ。
一瞬だけ、心が繋がったような感じがした。
彼女は抵抗せずショットガンを手放した。
ずっしりとした重さが手にのしかかる。
「ありがとう。」
次の行動は……?
彼女は言った。
「で?次はどうする?」
僕は…
ショットガンで彼女を力任せにぶん殴る。
彼女の頬にショットガンが激突し、彼女は空中で二回転して、坂を転がり落ちていった。
「はあ。疲れた。」
まだ終わっていない。みんなを探さなければ。
僕はY Ddraig Gochの死体を飛び越え、階段を駆け下りていく。辺りはより暗くなっていく。
8月22日午後6時40分(Calico時間)
第三反復は2011年を舞台にしているため、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。




