第91話『ギルドにて、灰の決意と青の風』
ギルドの扉を開いた瞬間、木の匂いと熱気が俺たちを包み込んだ。
人々のざわめき。剣を手入れする音。酒場の笑い声──。
だが俺の心は、まだどこか遠くにあった。
「……やっぱり、帰ってきたんだな」
俺の隣で、リリィがぽつりと呟いた。
「ルシェとリオナも、この空気を感じてたんだろうな」
「うん。……忘れないよ」
そんな俺たちを見て、受付の女性が驚いたように立ち上がった。
「ヨシオ、リリィ……!」
「ただいま。少し、時間がかかったな」
すると、その背後から小さな影が跳ねるように飛び出してきた。
「ヨシオ!!やっと戻ったかっ!」
現れたのは──エリュだった。
青いマントを翻し、くしゃっとした笑顔を浮かべている。
「……エリュ」
「よかった!無事で……でも、ルシェとリオナのことは……」
言葉に詰まるエリュ。俺は小さく頷く。
「ああ……。」
「……うん」
エリュは泣きそうな目をこらえて、拳を握った。
「じゃあさ、次は……わたしが支える番だよね?
わたしも強くなるよ。絶対に。」
その瞳に宿る決意に、俺は胸を打たれた。
「……頼むぜ、エリュ」
「まっかせといてよ。」
◆
「それで、今回の依頼は?」
ウケールがテーブルに資料をバンと広げた。
どうやら、魔獣の巣窟となった鉱山を掃討するクエストらしい。
「……高ランクだが、避けられねぇな。動かねぇと、次の災いが来る」
「みんなで行こうよ。……ルシェたちの分まで」
リリィが静かにそう言った。
エリュも無言で頷く。
俺はゆっくりと手を上げた。
「──受ける。今度は、誰一人失わせねぇ」
その言葉に、皆がうなずいた。
そして、ギルドホールに響く一つの鐘の音。
新たな旅路の始まりだった。
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