第89話『追悼と誓い、そして再び歩き出す』
──死の余韻は、静かに、それでいて深く、俺たちの中に残っていた。
「……なんで、ルシェとリオナが……」
焚き火の小さな火が揺れるたび、ウケールの拳が震える。目を伏せたままのエリュは、ひと言も発しない。ただ、何度も握った指を開いては、宙を掴むようにしていた。
俺は、ただ黙っていた。いや、何も言えなかった。
敵の正体も、目的も、まだ見えてこない。ただ一つわかっているのは――あの時、俺たちは完膚なきまでに、打ちのめされた。
リオナの最後の言葉が、まだ耳から離れない。
> 「ヨシオ……お願い、みんなを……守って……」
ルシェのあの笑顔が、脳裏から消えない。
> 「次は絶対、勝とう!私達ならいけるでしょ?」
そう、彼らは未来を信じていた。それを、俺たちが受け継がなきゃいけない。
エリュが立ち上がった。ゆっくりと、だが強い足取りで俺の前へ来る。
「……私は、あの二人の仇を取るまで、絶対に立ち止まらない。ヨシオ、あんたはどうする?」
問われている。試されている。今の俺の覚悟を。
「……やるさ。逃げも隠れもしない。必ず、この手で終わらせる」
俺の中に、静かな炎が灯るのを感じた。
ウケールが顔を上げ、ニッと口角を上げて言った。
「しっかし……こんな状況でも“クソ強い新魔法”ひとつくらい閃いてくれりゃあなぁ」
「真顔で言うなよ、それ」
「いやいや、マジで。俺、“ギャグ補正”だけじゃ限界あるぞ。まじで。爆裂超新星ウケールビームとか使いてぇ」
「なんだよそれ」
……こんな時でも、ウケールはウケールだった。
その馬鹿馬鹿しさに、ほんの一瞬だけ、俺の頬が緩んだ。
──俺たちは、進む。
悲しみと怒りを抱きしめながらも、前を向いて。
「ルシェ、リオナ……絶対、無駄にはしないからな」
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