第88話『失われし灯火、再び結ばれる誓い』
ルシェとリオナの亡骸を前に、俺たちは数刻、動けずにいた。
空間は静まり返っていた。あの《神格の断罪者》も、姿を消していた。けれど、緊張は消えない。
リリィは無言でリオナの手を握りしめ、ウケールは目を伏せたまま拳を強く握っていた。
「くそ……! 俺たち、何のためにここに来たんだよ……!」
俺の怒りは、自分に向いていた。あのとき、あと一歩でも早く気づいていれば――。
そのときだった。
「ヨシオ……」
懐かしい声が、虚無の空間に響いた。
振り返ると、淡い緑のローブを翻し、一人の女性が立っていた。
長い銀髪に、落ち着いた瞳。儚げな雰囲気を纏いながらも、内には強い意志を感じさせる。
「エリュ……!」
俺の声に、彼女はうなずいた。
「遅れて、ごめんなさい。……でも、感じたの。あなたたちが、この空間に踏み入ったときに……リオナとルシェの命の気配が、儚く消えていくのを」
彼女はそっと、ルシェたちの亡骸に膝をつき、静かに祈りを捧げる。
リリィも、黙ってその横に並ぶ。やがて、ウケールも。
「……また、誰かを失うなんて……もういやなんだ」
俺が言うと、エリュは優しく微笑んだ。
「だから、私は来たの。二度と、誰も死なせないって誓うために。ここで終わらせないために」
彼女の周囲に、淡い緑光が灯る。
それは、かつて仲間と共に見た“精霊の祝福”だった。
「ルシェとリオナの想いは、消えていないわ。彼らの魂は、まだあなたたちと共にある……だから、歩きましょう。未来へ」
ウケールが鼻をすすった。
「……あの野郎、“断罪者”とかなんとか、勝手に暴れやがって。こっちはまだ、やることあんだよ。死んでらんねぇんだよな……」
「うん、そうだね」
リリィがゆっくり立ち上がる。
俺も、一歩前へ出た。
「……行こう。次は、負けねぇ。絶対にだ。俺たちの絆が、あんな化け物に壊されてたまるかよ」
仲間たちが、それぞれうなずく。
そして――
新たにエリュを加えた俺たちは、深淵の最奥へと歩を進めた。
その先に何が待つとしても。
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