第81話『氷壁の入り口、息をひそめて』
夜が明けて、野営地に朝日が差し込む。
淡いオレンジの光が雪原を照らし、まるで銀の世界に金のベールがかけられたようだった。
「……寒っ!!」
ウケールの叫びで、俺は目を覚ました。
「お前……毛布、どこやったんだよ」
「気づいたら羊に食われてた! 夢の中で!」
「……それ、夢じゃなくて鹿だぞ。あれ、お前の荷物持って行ったし」
「えっ!!?」
焚き火の前では、エリュが渋い顔で荷物を整理していた。
「ウケール。あんた本当に、寝る前に“魔法で鹿避け”設置したの?」
「いや~それが……忘れてた! てへっ☆」
「てへ☆じゃねぇ!!」
「まぁまぁ、朝から騒がしいのも、元気な証拠だな」
俺が苦笑しながらテントから出ると、目の前にいたのはルシェだった。
氷のように澄んだ髪が、朝の光を浴びてやわらかく輝いている。
その表情は昨日よりも、ずっとやわらかかった。
「……おはよう、かおる。昨日、ありがとう」
「こちらこそ。ちゃんと眠れたか?」
「……うん。……ちょっとだけ、怖くなくなった気がする」
小さな声だったけど、その言葉は確かに聞こえた。
朝食を取り、準備を整えた俺たちは、ついに“氷壁の洞窟”の入口にたどり着いた。
そこは巨大な氷の裂け目の奥、白い息を吐きながら足を踏み入れる俺たちの視界には、神秘的な光が差し込んでいた。
「うわー……ここ、想像以上に……キレイ……」
リリィが思わず呟いた。
氷壁の内側はまるで鏡のように光を反射し、まるで宝石のような輝きを放っている。
「すご……ここって、ほんとに遺跡なのか?」
「うん。『セラの記憶庫』と呼ばれてる場所。昔の大魔術師の研究拠点だったらしい。気をつけて進んでね」
エリュの説明を聞きながら、俺たちは慎重に進んでいく。
――その時だった。
「……っ!? また……風が……っ」
ルシェの背後から、ふわりと淡い青の光が立ち昇る。
「ルシェ、大丈夫か!」
「うん……っ、平気。だけど……何かが、目覚めようとしてる。精霊の、記憶の……奥のほうで」
俺たちは互いに視線を交わす。
これはただの探索じゃない。
この洞窟には、“何か”がある。
だが、不思議と怖くなかった。
仲間たちがいる。
――ウケールが妙に騒がしく、エリュが渋い顔をし、リリィがそっと手を握ってくれる。
そして今、ルシェが隣に立ってる。
「よし……行こうか。準備はできてる」
「当然だ!俺、こんな寒いとこでのんびりなんて、もうゴメンだぜ!」
「少しは役立ってね、ウケール」
「やるときゃやるって!あっ、見て見て!氷の壁に俺の顔が反射して――」
「やめて、戻ってくるとき怖くなるからやめて」
ふざけあいながらも、俺たちは一歩、また一歩と洞窟の奥へ。
その先に何が待っていようとも、もう俺は逃げない。
仲間たちとともに、この道を進むと決めたからだ。
――そして、氷の彼方で“声”がした。
《来タカ――記憶ノ中ノ勇者ヨ――》
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
あと、感想も書いてくれるととても嬉しいです!




