第73話『金羽の幻鳥、疾走の村路』
村の入り口に着いた俺たち――ヨシオ、リリィ、エリュ、ウケールの4人は、依頼主であるゲルマン村長の案内で、畑の前に立っていた。
「そいつは夜明け前に現れるんじゃ。地面からすぅっと湧くように姿を現して……ふわっと消える。まるで幽霊のようなニワトリじゃよ」
「そんなバケモンが卵産むのかよ……」
俺は思わずつぶやく。リリィがくすりと笑い、横でウケールが鼻息を荒くした。
「ふっ……俺の幻獣感知スキルの出番ということだな……!」
「いやウケール、それ外した回数の方が多くなかったか?」
「うるせぇ!今回は本気なんだよ!!」
「毎回言ってるじゃん」
そう呆れる俺の横で、エリュが低く囁いた。
「静かに。……来る」
その時だった。
空気が、震えた。
……ぱたっ……ぱたたっ……
地面を蹴るような、軽快な音。
気配のない足音に、俺たちの視線が一斉に畑の奥へ――
「いた!」
光の粒子を纏いながら、金色に輝くニワトリが風のように畑を駆け抜けていった!
「リリィ、展開頼む!」
「うんっ、〈結界陣・囲いの羽根〉!」
リリィが唱えた瞬間、四方に魔法の羽根が浮かび上がり、ニワトリの逃走経路を制限する!
だが――
「……かっこいい……!」
感動している暇もなく、ニワトリが宙に飛んだ!?
「跳躍力が異常だ!空間転移か!?」
「いや、違う。速度の魔法……〈魔動加速〉を自力で使ってる!」
エリュが分析し、俺は魔導書を開いた。
「くっそ、マジでただのニワトリじゃねぇぞ!」
「だから俺のターンだってばァァ!」
ウケールが地面に印を描く。
「出でよ、幻影の鳥籠〈イメージ・コープ〉!」
光の檻が出現――が、ニワトリはそれを二段ジャンプで回避!?
「ジャンプ二段ってRPGのボスじゃん……!」
「うわあああああああ!?」
ウケールの頭上に降ってきたのは、黄金の羽根。それが彼の顔に――パシィィン!!
「く……黄金のニワトリめ……ッッ!!俺の尊厳に羽根がァ!!」
「ウケール、ツッコミやってる場合じゃねえ!こっち来て連携!」
俺は魔導陣を展開した。
「くっ、あれだけ早く動かれると……!ならこれで止めるしかねえ!」
――《緋光障壁・終点への誘い(リミット・ゲート)》!
地面に広がる魔法陣が、ニワトリの足元を包み込む!
「捕らえた!リリィ、エリュ、今だ!」
「わかった!〈風鎖〉!」
「〈麻痺の矢〉!」
風の縄と雷光の矢が、動きを止めたニワトリに直撃!
――どがんっ!!
と同時に、光が弾け、金色のニワトリが仰向けに倒れた。頭の上には、星が三つ。
「や……やった……」
リリィが小さくガッツポーズをとり、俺も肩で息をしながら呟く。
「まさか……ニワトリでこんな消耗するとは……」
「はああ……こんな日常、普通の冒険者じゃ持たないわね……」
エリュも額の汗をぬぐい、ポツリ。
ウケールは――
「……あのニワトリ、絶対ギルドで賞金首に載るべきだ……」
「いや、お前が載りそうだったよ……色んな意味で」
こうして、俺たちの“金ニワトリ捕獲作戦”は幕を閉じた。
報酬は金貨と、めちゃくちゃ栄養価の高い「金卵」。
帰り道、リリィがこっそり寄ってきて、袖をつまんだ。
「ヨシオ……昨日のこと、ありがとう。うれしかった……それだけ」
「……ああ。俺も」
ああ、もう一度ドキドキしてきた。
戦いもいいけど、こういう時間が……何より、俺には必要なんだな。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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