第69話『沈みゆく塔と、記録なき守護者(後編)』
塔の最上階。
目の前には巨大な石の扉がそびえ立っていた。どんなに風が吹き荒れても、その扉は微動だにしない。
「……ここが最深部か」
俺――ヨシオは息を整えながら呟いた。
リリィとエリュが背後に並び立ち、武器を構える。
「この奥にいるのが“記録なき守護者”ってやつね。なんか……すっごいヤな予感がするわ」 「でも、ここまで来たら、引き返すわけにはいかないわ」
エリュの目はまっすぐに前を見据えていた。 その強さに、俺も自然と頷く。
「行こう。慎重に、でも迷わずにな」
扉がひとりでに軋むように開いた。
中には、一体の騎士のような存在が立っていた。 その鎧はひび割れ、苔に覆われながらも、どこか神々しさを残している。
――その名は《無銘の守護者》。
誰に命じられるでもなく、ただ塔を守り続けてきた存在。 魔力の気配すらなく、しかしその場に立つだけで空気が重くなるような圧を放っていた。
「……来るぞ!」
俺の言葉と同時に、守護者は一歩踏み出した。
その瞬間、俺たちの背後にある扉がバタン!と閉まった。 逃げ道は消えた。
「派手な歓迎じゃねぇか……!」
俺は、先日習得したばかりの魔法――《瞬刻光槍》を詠唱した。
「閃け、時を貫く刃よ!」
青白い魔力が右腕に集中し、光の槍が形作られる。
それを、守護者めがけて――
「はああああっ!!!」
投擲!
空気を裂いて光の槍が直進する! が、守護者は剣の一振りでそれを弾いた!
「嘘だろっ!?」
その衝撃波で、俺は数メートル吹き飛ばされた。
「ヨシオッ!」
リリィが駆け寄るが、その隙を守護者が見逃すはずがない。
「……やらせるかっ!」
エリュが前に出る。彼女の得意魔法《絶空刃》が空間ごと切り裂く! 守護者の動きが一瞬鈍った。
「今よリリィ!回復魔法を!」
「う、うん!」
リリィの掌から温かな光が俺を包む。
「ふう……なんとかなった」
俺は立ち上がり、拳を握った。
「三人でなら、勝てる!」
次の攻撃に備えて、俺たちは陣形を整える。
この塔の試練――最後の戦いが、今、始まった。
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