第64話『時の檻と、砂に埋もれた記憶』
ギルドを出たあと、俺たちはしばらくの間、中央広場のベンチでまったりしていた。
「まったく……クエストってのは終わった直後にまた来るのがお決まりなのかよ……」
俺がため息をつくと、ウケールが豪快に笑いながら肩をバンバン叩いてくる。
「おう、ヨシオ! 冒険者の宿命ってやつだな! ついでに昼メシ食ってから行こうぜ、“砂漠の遺跡”ってやつに!」
「砂漠かぁ……また暑くて体力奪われるやつ……」
リリィがげんなりと呟く。どうやら、今度のクエストは砂漠地帯にある古代の遺跡で、“転写の断章”と呼ばれる古文書を探索するという内容らしい。
そこへ――
「……また、ややこしいところに行こうとしてるのね。ヨシオってば、トラブル体質すぎない?」
懐かしい、聞き慣れた声が耳元をかすめた。
「――エリュ!」
振り返ると、そこには腰までの長い銀髪を揺らす、冷静沈着な魔術士・エリュが立っていた。見覚えのある黒衣をまとい、瞳は相変わらず鋭い。だけどその奥には、どこか懐かしさのようなものが宿っていた。
「おいおい、久しぶりってやつじゃねーか。どこ行ってたんだよ?」
ウケールが手を挙げると、エリュはふっと微笑む。
「……王都で調査任務よ。だけど、あなたたちの“バルス=グラード”攻略の噂、すぐ耳に入ったわ。派手にやったわね、ヨシオ」
「派手にやったのは俺じゃなくて、リリィとかウケールの方……」
「謙遜? あら、らしくない」
「いや、わりと本気で言ってるんだけど……」
そんな軽口を交わしつつ、俺たちはエリュから今回の“遺跡”についての重要な情報を受け取った。
「……今回の『転写の断章』。本当にヤバいのよ。それは“時間”そのものを操作する理論式が記されている。だから王都の魔法管理局も極秘に調査していた。……だけど、どうやら情報が漏れて、複数の勢力が動いてるわ」
「勢力って……まさか“黒鱗教団”とかも?」
リリィが緊張した面持ちで言うと、エリュは小さく頷いた。
「そう。“時間を戻す”という発想が連中にとって、どれだけ都合がいいか、想像に難くないでしょ?」
「なるほど……それが“時の檻”ってわけか」
俺は立ち上がり、両手を軽く広げる。なんか、また面倒くさい流れになってきたけど――
「いいぜ。やってやろうじゃん、その檻とやら、ぶっ壊してやる」
「ふふ……その無謀さは相変わらずね。だけど、だからこそ“共に戦える”って思える」
エリュが口元に笑みを浮かべる。クールな魔術士の表情に、少しだけ懐かしい柔らかさが宿っていた。
「で、ヨシオ。私も今回のクエストに同行するわ。王都から正式に派遣された魔導管理局の立場としてね」
「うわ、肩書き強い。俺たちよりずっとまともじゃん……」
「見た目だけよ」
小さな笑いが起きる中、俺たちは再び集った――今度は、エリュを加えた最強(?)のメンバーで。
そして翌朝。
俺たちは東の“月影の砂漠”へ向けて、馬車に乗り込んだ。
――次なる冒険は、時を巡る古代の罠と、過去に葬られた真実を暴く旅になる。
けれどそれでも、俺たちは進む。
だって、仲間がいれば、どんな時間だって越えられるって――信じてるから。
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