第62話『魔導遺跡の胎動と、再び目覚める力』
遺跡までは馬車で半日。俺たちは森を抜け、小高い丘の上にある“魔導遺跡バルス=グラード”に辿り着いた。
「うわ……これ、完全に“なんか封印されてる感”あるな」
俺がそう呟くと、リリィが「“感”じゃなくて、実際に封印されてるの」と突っ込んできた。遺跡の正面は半分崩れていたけど、空気はピリピリしていて、明らかに普通じゃない。
「この魔素の濃さ……過去に封印されてた“災厄”が目を覚まし始めてる証拠ね」
エリュが遺跡の前で、魔法陣を展開しながら呟いた。
「ちょっ……まって、これ、俺らで対応していいやつ!?」
ウケールが珍しくビビっていた。……まあ、それも無理はない。目の前の封印石は微妙にヒビ割れて、そこから紫の魔素が漏れている。
「ヨシオ、やるなら今よ。例の“魔導適性”、使ってみて」
リリィが俺の肩に手を置いた。そう……前回の戦いのあと、俺の身体に“魔法を吸収し、変換する”能力が発現していた。
「よし……やってみる!」
俺は封印石の前に立ち、掌を広げた。
――“力を宿せ、螺旋の導き手!!”
俺の中に渦巻く魔素が、ぐわっと手に集中していく。掌から放たれた青白い光が、封印石を包み込む。
「いっけぇぇぇぇぇえええ!!」
封印石のヒビから魔素が暴れだす……が、その時。
「《静封の紋章――ティル=ファレン》!」
エリュの詠唱とともに、魔素を抑える第二の封印陣が展開された。まるで俺の魔法と合わさるように、二重の魔法が発動する。
「すご……このままなら!」
――その瞬間だった。
「ぎゃあああああああああああ!?!?な、なにか出たああああ!!」
ウケールの絶叫と共に、封印の中から“手”が伸びてきた。
いや、“手”っていうか、“ぬるっとした触手のような、でもめっちゃ硬そうな”何か。
「魔獣!? いや、これ……!」
「封印体の守護者よ! 触れるな、ヨシオ!」
エリュの声が飛ぶ。
だが、俺はとっさに飛び込んでしまった。仲間を守らなきゃ――その一心で。
「《蒼影の盾――ミラージュ・シェル》!」
リリィが俺の前に回り込んで、魔法の盾を展開してくれた。
「大丈夫! 今のヨシオならいけるって、信じてるから!」
「リリィ……」
その言葉に、何かが弾けた。
体の中で、魔素が再構築される感覚。
……そうか、これが“俺だけの魔法”。
「見せてやるよ……俺の力!」
――“《天穿槍・ソラリス=バースト》!!”
右手に蒼白の魔力が集束し、それが光の槍へと変わる。ぶっ放した瞬間、封印石の裂け目に一直線に吸い込まれた!
「がああああああああああああああああ!!」
謎の守護者が悲鳴のような咆哮をあげ、魔素の暴走がピタリと止まった。崩れかけていた封印石が再び静かに沈黙する。
――やった。
「……ヨシオ、やるじゃない」
エリュが口元を緩めた。
「ったく、お前ほんと無茶するなぁ~! もう少しで俺の出番が! ……いや出番ないけど!!」
ウケールがわめきつつも笑ってた。
リリィは、そっと俺の手を握ってきた。
「……ヨシオ、かっこよかった」
頬がちょっとだけ紅くなってる……。
いやいや、何ドキドキしてんだ俺。
封印の奥に、まだ何かがある気がする。でも今日はここまで。
「帰ろう、ギルドに」
仲間と共に遺跡を後にし、俺たちはまた一歩前へ進んだ。
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