第52話『湯けむりパニック!ギルドでのんびり大騒ぎ』
──ギルド本部・休憩室──
「は〜〜、やっぱり何も起きない日がいちばん幸せだな」
湯上がりの俺は、ギルドのソファに寝転がりながら大の字になっていた。昨日の温泉バトルの疲れもあって、今日は完全なる休日。何の依頼も、敵の奇襲もない。
エリュが紅茶を運んできてくれる。
「はい、ヨシオ。カモミールティー。疲れた体にいいらしいわよ」
「お〜〜、気が利く〜〜。最高だなエリュ〜〜」
「へへ、私も入れてあげたよ!」
リリィが元気にジャンプしながら自作の『フルーツドリンク』らしきものを手渡してきたが──
「……なんかすげぇ色してない?」
「大丈夫!大丈夫だよ!」
ウケールが鼻で笑う。
「俺は絶対飲まん。昨日の『湯けむりスープ』で一日寝込んだばかりだ」
「おい、あれは料理じゃなくて事故だろ!?鍋の蓋開けたら爆発したんだぞ!?」
そんな感じで、ギルドの一角ではゆる〜い時間が流れていた。
──昼下がり──
「そういえば、久しぶりに依頼掲示板見に行こうかな〜って思ってるんだけど……」
俺がぽつりと言うと、リリィが即座に首を横に振った。
「だめ!今日は完全休養ってウケールが言ってたよ!」
「俺そんなこと言ったか……いや、言ったわ。でもな、ヨシオが働きたがってるなら仕方ないよな!」
「えぇぇ!?」
エリュはにこやかに微笑んでいたが、その手に持った紅茶カップがカタカタ震えている。
「ま、まさか……また、クマの討伐依頼に行く気なんじゃ……」
「いやいや、温泉地の試練で十分すぎたでしょ!?今日はゆっくり休もうぜ……」
──と、そのとき──
「わっはっは!ギルド一の美声担当、ウケール様がカラオケ大会を開催してやるぞぉぉぉっ!!」
「うわ、出たぁ!唐突な企画野郎!」
「カラオケルームなんてギルドにあったっけ?」
「……地下にあるよ。非常時にしか使わない『精神リフレッシュ室』が」
エリュの一言に全員が固まった。
「……行くしかねぇな」
──ギルド地下、精神リフレッシュ室──
「つきぬけろおおおおおおおっ!!愛と勇気のメロディィィィーーー!!」
ウケールが全力でマイクを握りしめ絶叫する。その横では、エリュが静かにバラードを歌い、リリィは踊っていた。俺?もちろん、誰かが歌うたびにタンバリンを全力で振っていた。
「なんだこの……楽園みたいな日常……」
「日常回って、こんな感じだったんだな……」
心の底から休まるとはこのことだった。たまには、こういう日があってもいい。
──その夜、皆で一緒にギルドの大広間で寝袋を並べ、宴のように笑いあった──
「ヨシオ、今日の歌、すごかったよ……」
リリィが隣で眠たそうに囁いてくる。
「そうか?ノリと勢いだったけどな……」
「……また、こういう日……いっぱいあるといいな」
「……ああ、俺もそう思うよ」
焚き火の灯りのような静かな幸福に包まれながら、俺たちは眠りについた──
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